あらすじなど
父・母・長女・次女・三女・長男という構成の6人家族、宮坂家の物語。

三女「こと子」(19歳・ニート)の目線で日々の暮らしや家族行事(誕生日会やクリスマス、正月など)、子供達それぞれの恋愛や学校生活についてのお話が進んでいきます。

ルールを守ることを重んじる父の風潮によって作られた実在するかのような生活感は"よそのおうち"を見ているような雰囲気が味わえます。

秋~春にかけての様子が描かれているので冬になると読みたくなる作品です。


律っちゃん
私が大好きな登場人物は長男「律」(中学3年生)。卒業間近ですので少年から青年へ十分に成長している頃合いだと思われますが、末っ子のために姉達からはまだまだ"小さな弟"として可愛がられています。長女「そよちゃん」(主婦)からは「律っちゃん」と呼ばれています。

人形造りに没頭するような子で、口数少ないのですが、きちんと自分の世界を既に持っていて、宝石ならオパールが好きだという稀有なところが気に入っています。
大概の15歳男子は真珠とダイヤモンド、ルビー・サファイア(ポケ●ンのタイトル)くらいしか知らないですもの。律っちゃん、よく知っていますね、可愛いですよ。

未婚ですし恋人もいないですが、私にもし子供ができたら同じ名前をつけたいほどに好きです。 ジェリーフィッシュやペットショップボーイズを聞いているところ、合理性を求めて宿題は学校で終わらせてくるところ、世界の国旗を覚えているところ、もう全部が大好きです。


ファッション
登場人物の雰囲気にあった服装が描かれているところもこの作品の魅力です。

主婦でおっとりしている「そよちゃん」は、マーガレット・ハウエルの紺のワンピースを着たり、ベージュのスラックスに黒いセーターを合わせたりする清潔感の中にも可愛らしさのある素敵主婦感。

次女「しま子ちゃん」(社会人)は、(一昔前の)会社員らしく「ユキ・トリヰ」のスーツ、セリーヌだかフェラガモだかの派手なスカーフ。香水はブルガリです。

主婦であることに誇りをもつ母は外では緑のコートやチャコールグレイのスーツ、家ではグレイのセーターに黒のスラックスと、外と内での区別をはっきりとさせている装い。

こと子目線のため、こと子自身の服装は言及されないのですが、部屋にプーさんの身長計りが未だに貼られているので、きっとずっと好きでいられると思えるようなお洋服を厳選して大切に着ていると思います。


すーんとするの」
他にも、おすすめポイントがあります。

例えば、食事風景。家族生活が描かれている上で欠かせないですし、こと子が食事作法である挑戦をしているということもあり、多く描かれています。こちらは宮坂家独自の風景であったりルールが強く出ていて面白いです。

ふわっとしていてお菓子作りが得意だという甘やかな雰囲気のそよちゃんが放つ「お互い半分殺しあったのよ」という刺激的な台詞も印象深いです。

江國さんの文章は小さくて細やかな生き方や嗜好をも大切に拾い上げてくださるところが私は好きです。この作品内でいえば、雨の日はどこか寂しいと感じる感性や、何年もずっと停留所の名前を勘違いしていたという気付いたときには衝撃ですが、でも小さくていつか忘れてしまいそうな思い出など……。江國さんの作品は他にも好きな作品がたくさんあるのでまた書きます。

家族というモチーフは本当に面白いと思います。個人的であり、社会的でもあり、どこにでもあるのですが閉鎖的な空間。
学校・職場・恋人・友人・政治などどのようなモチーフも家族というモチーフがもつ戯曲感は越えられないのではないのでしょうか。
これからも私は読書を通じて他人の家族を盗み見見ることがやめられないだろうな、と思います。  




それではまた来週水曜日に。 上条凛




流れ星読了後のススメ流れ星
①映画『美女と野獣』(ジャン・コクトー監督)をご覧あれ。作中に母の好きな映画として出てきます。舞台を見ているかのような雰囲気が素敵です。ラストのコクトーらしい問いかけによって、愛についてやベルという女性の人間性について考えさせられます。

②「エアコン」は「エアコンディショナー」とこれからは呼びませう。