二死満塁

《面会所》

透明なすりガラスに囚人服(作業服)のげんさんと向かい合う周助。

げんさん

『最近は忙しいのぉ。おかげで淋しくないわ(笑)』

なんとも言えない表情の周助

『‥体調は？』

げんさん

『ん？何日かしたら部屋も変わるらしいが、今のところ住み心地も悪くない。』

周助

『そっか。。』

げんさん

『昨日は浩一も来たぞ？なんでもあいつも偉くなって今度ワシの担当だそうだ。』

周助

『‥そっか。』

げんさん

『浩一は‥誰とも連絡を取ってないみたいだな。』

周助

『消したいんだろ。昔の記憶も思い出も。俺達みたいなゴロツキと付き合ったって、あいつにとっちゃ、お荷物だし経歴に傷がつくだけだ。』

げんさん『‥‥。』

周助

『そんな事より‥どうなんだよ？』

げんさん

『どうって、同じ部屋のみんなともなんとかやっとるよ。』

周助『‥』

げんさん

『ドラマなんかで見るより中はきれいだぞ？朝早くから点呼とって、運動して、作業して。健康的じゃ(笑)』

周助『‥。』

げんさん

『そうじゃ。今度手紙と一緒に雑誌も送ってくれるか(笑)？部屋の若い子らが喜ぶわ。こんなじーさんじゃが、部屋では新人なもんで、まだみんなの食事係や、布団係に、検診場の掃除‥』

周助

『そんな事を聞いてんじゃねーよ。』

げんさん『‥』

周助

『めぐる、目を覚ましたぞ。』

げんさん

『聞いたよ。宗男から。久しぶりに会いたかったのぉ。』

周助

『めぐるも‥宗男も必死に生きてるよ。あんたそれでいいのかよ!?』

げんさん

『お前らには十分夢を見させてもらった。やり残した事は‥お前らを甲子園に連れて行けなかった事くらいか。』

周助

『げんさんのせいじゃねーだろ。』

げんさん

『いや。あとはわしも‥ここで最後までしっかりと生きるわぃ。』

周助

『こんなげんさん‥もぅ死んでるよ!!』

とすりガラスを叩き、かどで記録をしている警察官に『おい。』と注意され

げんさんが

『すいません。もぅいい。帰りなさい。』

と立ち上がり係の職員と部屋を出ていく。

周助

『おいっ!!』

『じゃまた来るわー(笑)』

《病院の廊下》めぐるの病室から出てくる４人。

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元５番・ファースト

通称☆にくまん☆

【チーム１のパワー打者】

(今は実家の酒屋を継ぐ、気は優しくて力持ちのスキンヘッドのデブ。)

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元７番・レフト

通称☆ナベ☆

【チーム１のラッキーボーイ。サヨナラ打はチーム１。】

(今はパチプロで持ち前の強運で、なんとか食いつないでいるパンチに色眼鏡にスカジャン男)

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元６番・キャッチャー

通称☆まーしー☆

【チーム１の頭脳。小柄ながらキャチャーとしてデータ野球を浸透させた。】

（唯一、チームで大学に進学し、某IT企業を立ち上げ、今も取締役に就く。銀縁メガネのスラッとした男）

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元２番・セカンド

通称☆はかせ☆

【チーム１の業師で、小柄ながらいつも相手に嫌がられる存在だった。】

（今はその器用さを生かして、ドラマや舞台の大道具さんをしている。）

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『みんな周ちゃんから、もぅめぐるの余命も聞いたの？』

と、にくまんが３人に聞くと、まーしーがメガネをクイッとあげながら答えた。

『ああ。』

と淋しい４人の背中。

続く。。