ビソロッティとモラッシ。

 

お二方とも

既に亡くなられてしまいましたが

クレモナヴァイオリン界を二分する

大勢力です。

 

そして小さいながらも

第三極に有ったのが

石井高氏でした。

 

ちなみに

ビソロッティ、モラッシの両氏とは

石井高氏は友人であり

盟友でも有りました。

 

もっとも両氏共に

石井高氏を

自分の一番の弟子だと

言いふらしていたそうですが・・・。

 

それが冗談か

本気の発言かは兎も角

当の御本人は

明確に

「それは断じて違う」

と否定されていました。

 

石井高氏によれば

ビソロッティとモラッシは

ヴァイオリンの考え方が

根本から違うそうです。


ビソロッティ

コンクールに一切参加しない。

昔からの伝統的な製法を堅持。

内型のみを使用。

クレモナ市がバックアップ。

クレモナヴァイオリン制作芸術協会。

モラッシ

数え切れないほどの金メダルを受賞。

フランスやドイツの製法をも取り入れ

制作の手段は問題にしない。

外型を主に使用する。

商工会議所、制作学校がバックアップ。

イタリアヴァイオリン制作協会。

 

この二大勢力に挟まれ

第三極として活動した

石井高氏。

御自身も著書に

こう書かれています。

 

ずっと昔から、どちらともくみせず、

一人でやってきたのは、ぼくだけのはずである。

どちらの庇護もなかったということで、

その分、ヴァイオリンも売れなかったと

いうことでもある。

 

でもそれが

石井高氏の立ち位置だったのでしょう。

どちらにも組みしないという

考え方。

日本人らしい考え方かも知れません。

それだと双方と

対等に付き合えますから。

 

石井高氏は

クレモナのヴァイオリン制作者でしたので

主戦場は海外でした。

フランス、イタリア、ドイツ、そしてアメリカ。

日本からの注文はとても少なかったそうです。

 

新作ヴァイオリンは

オールドに勝てないのか?

 

この疑問は現在の制作者なら

誰でも持っているのでは無いでしょうか。

 

ブラインドテストでは

ストラドの音色よりも

現代のヴァイオリンの音色が好まれる

という結果が

一部に有ります。

(wikiのストラディバリウスを参照)

 

この結果を

認められない人が

実は多い。

でもこれは

明らかに音色の好みの問題だと

私は思っています。

 

現代のヴァイオリン制作者の間では

ストラドを超えるヴァイオリンは

既に作られていると考えています。

 

石井高氏も

ガリンベルティは

ストラディバリウスを超えていると

考えていました。

 

それ程までに

ガリンベルディのヴァイオリンの

完成度は高い。

ストラドを美しく改良している。

 

こういう結論だった様です。

だからストラドでは無く

ガリンベルディのヴァイオリンを

超える事を目指していた。

 

目標はオールドでは

無くなっていたんです。

 

これが一部ですが

現代のヴァイオリン作家の

思考です。

でも多分

日本人には受け入れられない

考え方。

 

オールド至上主義の人達には

受け入れられない考え方。

 

でも有るブラインドテストでは

新作が上、の音色の評価も有る。

 

この差は一体

どこから出て来ているのでしょうか。

 

その点について

少し触れて行きたいと思います。