ストラディバリウスって知ってますか?

 

ヴァイオリンの最高峰と言っても

過言では無いでしょう。

その高名さ故に

贋作も数多存在する楽器です。

 

作ったのはストラディバリ。

お尻に ウス が付くか付かないかだけの

違いですので

結構紛らわしい。

楽器の方はその愛称である

ストラドで以降書いて行きます。

 

この楽器の鑑定で

世界に通用した日本人がいました。

その名を

石井高

クレモナで活躍した

マエストロの称号を持つ

日本人ヴァイオリン制作者です。

 

もう故人ですが。

故・石井高氏

 

この方の見識は

研究者としても職人としても

超一流でした。

クレモナ在住だった事が

良い方に御方(みかた)した。

ストラディバリ生誕の地で

色々なヴァイオリンの資料も有る。

 

そして何よりも重要だったのが

本人の修理・修復の技術。

その技術の高さ故に

ストラドやグァルネリを筆頭に

多くのオールドを

鑑定出来るまでに至った。

 

そんな所だと思います。

でなければヨーロッパで

日本人の鑑定なんて

信用される筈が有りませんから。

 

石井高氏が主に活動した時代は

ヴァイオリンを作っても

そう簡単に売れる時代では

有りませんでした。

 

そこで最初の師である

笠川貞通氏が

徹底して教え込んだのが

修理・修復の技術。

笠川貞通氏のプロフィール

 

これが生涯にわたって

役立つ事になります。

 

石井氏はクレモナで活躍した訳ですが

日本人です。

当然簡単には

ヴァイオリンは売れる訳も無く

役に立つのは

修理・修復の技術。

 

当時は口コミが全てですから

適正な価格と高い技術が有って

やっとこさ成り立つ時代。

それなりに知られるまでに

そこそこの時間は掛かったと

思います。

 

日本人ですから。

 

近所のヴァイオリンの修理から

始まって

徐々に腕の良さが広まって行く。

その噂を聞いて

修理の依頼が増え

古いヴァイオリンの依頼も

徐々に増えて行く。

 

一方、ストラドですが

当然当時でも

億単位に等しい値がする

楽器です。

誰もが簡単に触らせてもらえるような

楽器では有りません。

 

でもストラドでも

実はピンからキリまで有る。

贋作は

その何百倍、何千倍が存在する。

 

ストラディバリウスのシールが

貼ってあるだけで

誰もが名器で有る事を願ってしまう。

 

実に厄介な楽器でも有ります。

ストラドのシール/ウィキペディアより

 

だから伝来のしっかりした

ストラドなんて

そう簡単には

触らせても、もらえない。

 

当然修理・修復も

それなりの安心安全で

間違いの無いルートが確保されている。

例えばヒル商会とか。

それがストラドです。

ですから修理の金額も

当然安くは有りません。

 

ではそれ程でも無いストラドは?

本物みたい?なストラドは

何処へ修理を頼むのか?

其処らへんの職人に頼むには

心配が有る。

ストラドです。

雑に扱って欲しくない。

おかしな修理をされたのでは

たまった物では有りません。

 

そこに

安くてしかも遥かに腕の良い

職人の噂が聞こえて来たら・・・?

 

こういう思考になる訳です。

口コミの力です。

誰もが期待するのは

その高い修理・修復の技術と

これなら適正と感じる修理費。

そして

美しき音色が戻って来る事。

 

ストラドらしい音色。

これを依頼者の誰もが

期待する。

たといそのヴァイオリンが

贋作であっても・・・。

 

この期待に応えたのが

石井高氏でした。

で、これがまた更に

口コミで広がる。

 

そこから

名器が徐々に

集まり始める訳です。

修理・修復の為に。

名立たるオールドが。

 

ヴァイオリンは

ヨーロッパでは一般的な

弦楽器ですから

教会とかも持っていたりします。

古い教会には、必ず楽器が有る。

王侯貴族も

勿論楽器を幾つも持っています。

 

そんな所からも

修理の依頼が来たりします。

当然、

二つ名持ちのストラドの

所有者にも

その噂は届いて来る。

 

でも日本人です。

信用していいのか?

 

結果

所有者監視の中

石井氏は三回ほど

ストラドの修理をする羽目に

なったそうです。

 

師匠である笠川氏の

『修理している所は

決して人には見せてはいけない』

の忠告を破ってまで・・・。

 

それ程の技術者だったって

事です。

 

ヴァイオリンと言う楽器は

簡単に分解出来るそうで

だから中まで見る事が出来る。

 

バラバラに出来る訳です。

所謂(いわゆる)

ヴァイオリンの腑分けです。

 

削りやノミ跡がつぶさに判る。

内側がどうなっているのか

どう作られていたのか。

 

名立たる名器の修復とは

それを五感で感じる事が出来る。

石井高氏が

他のヴァイオリン制作者と一線を画し

鑑定が認められるまでになったのは

その経験が有ったからであり

周りがそれを認めたからに

他なりません。

 

勿論

その中のどれが

最も信用を勝ち得る結果を

導いたのかは

知る由も有りませんが。

 

これがマエストロの称号を持つ

石井高氏です。

 

(注)この文章は

 石井氏の著書や寄稿文を基に

 若干の推測やフィクションを織り交ぜて

 書いていますので

 そこは御注意を。