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新作オリジナルストーリー<虹>(1)

 

 

そして、今の地球。語られ始めた心の内。

ざっと記す。

 

 その頃、マザーは、地球を迂回していた。

 乱れた呼吸。それは、汚された空気。

 壊されていく膜。多大なる資源の汚染。

 営利目的に利用された自然は、息絶え絶えに訴えた。

 「 マザー、もう限界です。私たち地球はお終いです。

  どうぞ、このまま終わらせて下さい。お願いします 」

 消えゆく吐息。

 未知なる生物は、異質の胞子を吐き出した。

 それは、希望。期待。そして、眼差し。 

 新しい世界の扉を塞いだ地球人は、

 大きく生まれ変わらなければならない。

 そのための応急処置。

 

  生きている人。生きている自然。

 そして、なにより生きている地球。

 その架け橋になる。それが、レインボーチルドレン。

 女の子は、その代表。

 秘書なる黒猫のカミを遣わして呼び寄せた。

  マザー。宇宙の母体。地球の女神。

 神々の世界では、菊理姫(くくりひめ)と呼ばれている。

 その母性なる女神。

 素知らぬ振りをして、女の子を見守っていた。

 「 思った通りだわ。この子には才能がある。

  あの燃え盛る太陽のフレアさえ収まれば

  この胞子は消滅する。

  但し、人間が改心をするのなら。それが一番の心配 」

 マザーは、大きく息を吐き出した。

 

宇宙にたどり着いた女の子。

まさに、レインボーチルドレン。

ここから先は、宇宙の論理。開花宣言。

 

 小さな空気口。突入するひとりと一匹。

 女の子は気を失った。カミは、目を閉じて一瞬を待った。

 「 早く閉じて 」 祈るカミ。

 そして次の瞬間、ひとりと一匹は星空のなかにいた。

 静寂。なんの音さえも聴こえない。

 「 さやか。着いたよ。宇宙だよ。目を開けてごらん 」

 つぶっていた目が開く。そして、そこにいたのは …。

 

「 おぎゃー 」 生まれたばかりの赤ちゃん。

 そう、さやか。はち切れんばかりの大きな声で泣く。

 「 おー、よしよし。良い子だね。やっと産まれたんだね。

  しっかりお泣き。泣かないと、大きくなれないよ。

  地球人なんだから。

  これからもっと辛いことがあるんだよ。

  今の内に、しっかりお泣き 」

 気がつくと、マザーが側にいた。

 

 レインボーの傘。揺りかごに変わる。

 赤ん坊に戻った女の子は、すやすやと眠っている。

 時々笑って、また眠って、良い夢を見ているよう。

 「 あばばばば 」 

 何かに気がついたのか、突然目を覚まし、

 大きく目を見開いた。

 「 さやか。太陽のフレアだよ 」 マザーの声。 

 

「 マザー、鍵を貸して。今すぐ開けないと。

  みんなが助からない。早く、鍵を貸して 」

 その声と同時に、さやかは女の子に戻った。

 「 さぁ、行っておいで。太陽のフレアに 」 

 送り出すマザー。

 燃え盛る炎。本来なら、焼け死んでしまうはずが

 レインボーの雨が多量の水を出し続けた。

 「 鍵はどこ。どこに挿したらいいの 」 必死に探す。

 「 さやか。よく見てごらん。

  ほんのり明るい部分があるだろう。

  その鍵穴に挿すんだよ。ゆっくりとね。

  傘の先だよ。鍵は。わかるかい。

  ちょうど、鍵の形になってきた。よく見て挿すんだよ。

  さぁ 」

 マザーは、ゆっくり頷いた。

 

どうして、こんな事態になったの。

そんな嘆きさえ、しっかりと答えがでる。

 

 ほんの一瞬。たじろぎもせず、女の子は鍵を挿し込んだ。

 その瞬間、太陽は温度を上げた。

 ばん、ばん。弾ける炎。

 留まるところか、さらに燃え盛る。

 「 よく見て。これが胞子の正体。人間の怒りよ。

  誰もこれに気づかない。        

 伝えなさい。この真実を。あなたが見たことを 」

 噴き出す炎。聴こえるのは、罵詈雑言。

 「 あいつが悪いんだ。あいつのせいだ。

  おまえなんか、いなくなってしまえ 」

 終わらない言葉 … … 。

 「 さぁ、離れなさい。そろそろ太陽が爆発をします 」

 バーン。遠くで、大きな音がした。

 気がつくと、一人と一匹。静かな宇宙にいた。

 マザーは、知らぬ間に姿を消していた。

 遠く聴こえる子供たちの声。

 あれは、菊理姫の母船。マザーシップ。

 どうやら女神様は、本来の仕事に戻ったらしい。

 宇宙の母星(ははぼし)として。

 

そして、さよならの時。

レインボーチルドレンは、地球に向って降りてくる。

 

「 おーい、さやか。船が出るよ。早くおいで 」

 たくさんの子供たちが手を振る。

 これが、世の中を照らすレインボーチルドレン。

 地球を正すスターシードたち。

 もう、壊れた地球は要らない。

 争いも病気も、そして戦争も。

 地球は、地球人だけのものではない。

 宇宙の星そのもの。

 きれいに輝いて、みんなが助け合って、

 生きていく世の中でなければならない。

  大きな宇宙の片隅。母船は、地球の産道に到着した。

 「 さぁ、みんな、着きましたよ。

  あなた方の星に。これが、惑星 チキュウ。

  修行の星です。ここで、多くのことを学んでらっしゃい。

  そして、私に教えて。愛という言葉の意味を 」

 「 ハーイ。マザー。ワタシタチ、イッテキマス 」

 そして、虹の出現。

 子供たちは、七色の滑り台に乗って、ひとりひとり

 降りていった。喜び勇んで。

 

ラスト。渾身のメッセージ。

 

 人生、辛いこともある。

 楽しいことなんて、ないかも知れない。

 だけど、人を幸せにしたい。本当に、そう思う。

 だけどね。毎日、その繰り返し。

 答えなんてないものね。生きている限り。

 もちろん、去り際だってわからないかもしれない。

 でも、こんなに絶妙な世の中。

 ウィルスひとつに負ける地球人じゃない。

 きちんと理解して、ちゃんと開放すれば、

 答えは自ずと見えてくる。

 見たくないものに蓋をしない。

 いい訳めいて、物事を終わらせない。

 あなたは誠実な人だから、時々迷うかもしれない。

 それでも良い。それが、人間だから。

 修行の星を選んで降りてきた勇気ある存在だから。

 幸せは、そこにあるもの。探すものじゃない。

 知っているでしょう。あなたなら。

 それが、マザーからのメッセージ。  

 

人間は、いつだって迷っている。

それが、人間だから。

それさえ解っていれば、大丈夫。

そう、マザーが約束したから。

これは、地球人へのメッセージ。

そう思った。

 

書かせていただいたことに感謝を込めて。

< 本当に、ありがとうございました >

 

かしこ。

 

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