そして、今の地球。語られ始めた心の内。
ざっと記す。
その頃、マザーは、地球を迂回していた。
乱れた呼吸。それは、汚された空気。
壊されていく膜。多大なる資源の汚染。
営利目的に利用された自然は、息絶え絶えに訴えた。
「 マザー、もう限界です。私たち地球はお終いです。
どうぞ、このまま終わらせて下さい。お願いします 」
消えゆく吐息。
未知なる生物は、異質の胞子を吐き出した。
それは、希望。期待。そして、眼差し。
新しい世界の扉を塞いだ地球人は、
大きく生まれ変わらなければならない。
そのための応急処置。
生きている人。生きている自然。
そして、なにより生きている地球。
その架け橋になる。それが、レインボーチルドレン。
女の子は、その代表。
秘書なる黒猫のカミを遣わして呼び寄せた。
マザー。宇宙の母体。地球の女神。
神々の世界では、菊理姫(くくりひめ)と呼ばれている。
その母性なる女神。
素知らぬ振りをして、女の子を見守っていた。
「 思った通りだわ。この子には才能がある。
あの燃え盛る太陽のフレアさえ収まれば
この胞子は消滅する。
但し、人間が改心をするのなら。それが一番の心配 」
マザーは、大きく息を吐き出した。
宇宙にたどり着いた女の子。
まさに、レインボーチルドレン。
ここから先は、宇宙の論理。開花宣言。
小さな空気口。突入するひとりと一匹。
女の子は気を失った。カミは、目を閉じて一瞬を待った。
「 早く閉じて 」 祈るカミ。
そして次の瞬間、ひとりと一匹は星空のなかにいた。
静寂。なんの音さえも聴こえない。
「 さやか。着いたよ。宇宙だよ。目を開けてごらん 」
つぶっていた目が開く。そして、そこにいたのは …。
「 おぎゃー 」 生まれたばかりの赤ちゃん。
そう、さやか。はち切れんばかりの大きな声で泣く。
「 おー、よしよし。良い子だね。やっと産まれたんだね。
しっかりお泣き。泣かないと、大きくなれないよ。
地球人なんだから。
これからもっと辛いことがあるんだよ。
今の内に、しっかりお泣き 」
気がつくと、マザーが側にいた。
レインボーの傘。揺りかごに変わる。
赤ん坊に戻った女の子は、すやすやと眠っている。
時々笑って、また眠って、良い夢を見ているよう。
「 あばばばば 」
何かに気がついたのか、突然目を覚まし、
大きく目を見開いた。
「 さやか。太陽のフレアだよ 」 マザーの声。
「 マザー、鍵を貸して。今すぐ開けないと。
みんなが助からない。早く、鍵を貸して 」
その声と同時に、さやかは女の子に戻った。
「 さぁ、行っておいで。太陽のフレアに 」
送り出すマザー。
燃え盛る炎。本来なら、焼け死んでしまうはずが
レインボーの雨が多量の水を出し続けた。
「 鍵はどこ。どこに挿したらいいの 」 必死に探す。
「 さやか。よく見てごらん。
ほんのり明るい部分があるだろう。
その鍵穴に挿すんだよ。ゆっくりとね。
傘の先だよ。鍵は。わかるかい。
ちょうど、鍵の形になってきた。よく見て挿すんだよ。
さぁ 」
マザーは、ゆっくり頷いた。
どうして、こんな事態になったの。
そんな嘆きさえ、しっかりと答えがでる。
ほんの一瞬。たじろぎもせず、女の子は鍵を挿し込んだ。
その瞬間、太陽は温度を上げた。
ばん、ばん。弾ける炎。
留まるところか、さらに燃え盛る。
「 よく見て。これが胞子の正体。人間の怒りよ。
誰もこれに気づかない。
伝えなさい。この真実を。あなたが見たことを 」
噴き出す炎。聴こえるのは、罵詈雑言。
「 あいつが悪いんだ。あいつのせいだ。
おまえなんか、いなくなってしまえ 」
終わらない言葉 … … 。
「 さぁ、離れなさい。そろそろ太陽が爆発をします 」
バーン。遠くで、大きな音がした。
気がつくと、一人と一匹。静かな宇宙にいた。
マザーは、知らぬ間に姿を消していた。
遠く聴こえる子供たちの声。
あれは、菊理姫の母船。マザーシップ。
どうやら女神様は、本来の仕事に戻ったらしい。
宇宙の母星(ははぼし)として。
そして、さよならの時。
レインボーチルドレンは、地球に向って降りてくる。
「 おーい、さやか。船が出るよ。早くおいで 」
たくさんの子供たちが手を振る。
これが、世の中を照らすレインボーチルドレン。
地球を正すスターシードたち。
もう、壊れた地球は要らない。
争いも病気も、そして戦争も。
地球は、地球人だけのものではない。
宇宙の星そのもの。
きれいに輝いて、みんなが助け合って、
生きていく世の中でなければならない。
大きな宇宙の片隅。母船は、地球の産道に到着した。
「 さぁ、みんな、着きましたよ。
あなた方の星に。これが、惑星 チキュウ。
修行の星です。ここで、多くのことを学んでらっしゃい。
そして、私に教えて。愛という言葉の意味を 」
「 ハーイ。マザー。ワタシタチ、イッテキマス 」
そして、虹の出現。
子供たちは、七色の滑り台に乗って、ひとりひとり
降りていった。喜び勇んで。
ラスト。渾身のメッセージ。
人生、辛いこともある。
楽しいことなんて、ないかも知れない。
だけど、人を幸せにしたい。本当に、そう思う。
だけどね。毎日、その繰り返し。
答えなんてないものね。生きている限り。
もちろん、去り際だってわからないかもしれない。
でも、こんなに絶妙な世の中。
ウィルスひとつに負ける地球人じゃない。
きちんと理解して、ちゃんと開放すれば、
答えは自ずと見えてくる。
見たくないものに蓋をしない。
いい訳めいて、物事を終わらせない。
あなたは誠実な人だから、時々迷うかもしれない。
それでも良い。それが、人間だから。
修行の星を選んで降りてきた勇気ある存在だから。
幸せは、そこにあるもの。探すものじゃない。
知っているでしょう。あなたなら。
それが、マザーからのメッセージ。
人間は、いつだって迷っている。
それが、人間だから。
それさえ解っていれば、大丈夫。
そう、マザーが約束したから。
これは、地球人へのメッセージ。
そう思った。
書かせていただいたことに感謝を込めて。
< 本当に、ありがとうございました >
かしこ。