俺は今日、今までできなかったとある夢を遂に叶えることができた。

とある夢。
それは、女装して女性専用車両に乗ることだ。

理由は敢えて書かない。
ただでさえ気持ち悪がられるのに、理由を書こうもんなら人として見てくれなくなる恐れがあるからだ。

乗ったのは大阪メトロ御堂筋線。
初めては安心の御堂筋線からにしようと決めていた。
落語家が最初に覚えるのは"東の旅"というネタだと聞いたことがある。
それと同じで、最初に女装して乗る電車は新御堂筋なのである。

出発は なんば。
時間帯は17時ごろ。
電車を待つ間、怪しまれる様子は全くなかった。
そらそうだ。
この日のためにどれだけ女装について調べてきたか。
少し遅れた受験試験だ。

電車が来た。
女性専用車両に足を踏み入れる。
小学生の時、校長先生の部屋に入った時の感覚とよく似ている。

周りは見事に女性のみ。

何人かと目が合ったが、バレなかった。
なんばということもあって、若い女性も一緒に乗ってきた。

ケータイを見る人、読者をする人、音楽を聴く人、眠る人、そして化粧をする人。
別に普通の車両でも見れる光景だが、何か特別な感じがした。

心斎橋。

やはり乗ってくるのは若者が多い。
なんやこのオバハンという視線を感じた。
でもオッサンではなく、オバハンと思われてるんだったら上出来ではないかと思った自分に笑ってしまった。

本町、そして淀屋橋。

さすがはビジネス街。
仕事終わりなのか、スーツを着た女性が多く乗ってきた。

隣の車両は同じく仕事終わりのサラリーマンたちが多く乗っていて、女性専用車両より遥かに混んでいた。

ここなら少しでもゆっくりできるという考えなのだろうか。

50代くらいの女性が妊婦さんに席を譲ったのが、素敵な光景だった。
恐らく、その女性には子供がいて、妊婦さんの気持ちがわかるのだろう。
いいものを見たなぁと思うのと同時に、一体自分は何をしているんだという気持ちが一層強くなった。

そして梅田。

気がついたら降りていた。

もう十分楽しめた。

体感時間は1時間ぐらいに感じた。

本当の目的はここでは言えないが、そこは知らない世界だった。

次は長堀鶴見緑地線。

もし長堀鶴見緑地線の女性専用車両で阿佐ヶ谷姉妹みたいな格好をしている女性を見かけたらそれはもしかしたら私かもしれませんよ。