スーパーロボット考 | 吹雪のつぶやき

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MMORPGなどの仮想世界で暮らす「吹雪」が、思わず口にしてしまった「つぶやき」を綴った日記帳です。

序章

我国でスーパーロボットと呼ばれる超機動兵器の概念が生まれて56年もの歳月が流れるが、この概念は、何故我国だけに発生したのか?欧米諸国、亜細亜諸国においても、我国に匹敵する程の質、量を兼ね備えたスーパーロボット群を構想せしめた国など一つも無い。本稿では、我国のスーパーロボット群の中で革新的な機体に焦点を当てつつ、我国のスーパーロボットの今後の発展について熟考してみようと思う。



第一章 : 遠隔操縦型

我国のスーパーロボットを語る上で、その原点はどこかと問われれば、この機体に置いて他に無いと筆者は回答する。その名は「鉄人28号」。昭和31年(1956年)に誕生したこの機体は、先に登場していたロボット「鉄腕アトム」とは一線を画す構造を持っていた。それは、アトムが身長135cmと小型ロボットであるのに対し、鉄人28号は身長18mという巨大ロボットであった。鉄人28号が登場したことにより、我国のスーパーロボットの歴史が幕を開けたと言えよう。


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(実物大の鉄人28号)


また、アトムが自前の人工頭脳で自立行動が可能であったのに対し、鉄人28号はリモコンによる遠隔操縦を可能とした。科学的には、鉄人28号よりアトムの方が遥かに進んだ機体と言えるが、スーパーロボットとは、単純に巨大な機体であれば良いというのではなく、操縦者が操縦するものという絶対的な定義を確立したことに意義がある。操縦者が操縦しないスーパーロボットなど、神か怪獣の類と同類である。非力な人間がスーパーロボットを操縦することにより、神のごとき力を手に入れると言う点にこそ、これほどまでにスーパーロボット群を構想せしめた原動力であると言える。



第二章 : 直接操縦型

鉄人28号から始まった我国のスーパーロボット開発は、ある機体の登場により、その後一層の拡大と発展を約束された。例えるなら、巨人軍の川上哲治が鉄人28号であるならば、その機体は長嶋茂雄である。その機体は、スーパーロボットの代名詞、ミスタースーパーロボットと言っても過言では無い。その機体の名は「マジンガーZ」である。


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鉄人28号が、「スーパーロボットとは、操縦者が操縦する」ということを定義付けたのに対し、マジンガーZは、「操縦者が機体に直接搭乗して操縦する」と言う新たな定義を導入した。以後、スーパーロボットは、原則として操縦者が機体に直接搭乗して操縦する方式となった。これは、一つの革命(エポックメイキング)であったと言えよう。


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(操縦席がむき出しになっており、操縦者への耐ショック防御に不安が残る機体ではある)


また、数々の秘匿兵器を搭載し、秘匿兵器使用時に、操縦者が何故か大声でその秘匿兵器の名称を叫びながら使用する行為が、この機体から常態化したことは、隠れた謎である。


第三章 : 合体変形型

鉄人28号→マジンガーZと来ると、次に登場するのは、本来であれば「機動戦士ガンダム」であるが、その前に、スーパーロボットの新たな定義を行った機体がある。その機体の名称は、「ゲッターロボ」である。このゲッターロボが行ったスーパーロボットの新たな定義とは、合体変形である。


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この機体は、スパーロボットに合体変形と言う新たな定義を導入したが、その変形と言うよりは、さなぎが蝶に変体するが如く、極端な変形をする為、21世紀にならんとする今日にあっても、この機体の完全変形を実現した玩具が存在しないこと(注1)が、如何に無茶な変形であるかを如実に物語っていると言えよう。


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(子供ながらに、無茶するなーと感心した合体・変形)


その後、ゲッターロボGまではこの無茶な合体変形を行っていたものの、以後は玩具でも実現可能な合体変形を行うスーパーロボットばかりになったことから、影で玩具メーカからの圧力がありオトナの事情でそうなったものと推察する。


但し、この機体が定義した合体変形は、この後もあらゆるスーパーロボットで採用されていることを考えると、この機体が果たした功績は一考の価値があるものと思われる。


(注1)

ゲーッターロボの完全合体変形を目指した商品も発売されてはいるが、完全再現できたとは言い難い。
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第四章 : 量産兵器型

これまで検証した機体が、我国のスーパーロボットの黎明期を支えた機体とすれば、この機体は正にスーパーロボットの発展期を支えた名機と呼べることだろう。その機体の名称は、「機動戦士ガンダム」である。


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(実物大ガンダム)


この機体の凄さを一言で語ることはできないが、あえて語るのであれば、昭和54年(1979年)に誕生したこの機体は、それから33年もの月日が経つが、未だに派生機体が製作(ガンダムAGE、ガンダムUC等)され、発売された関連商品は無数にあり、その代表格であるガンプラは、総出荷数3億7500万個を誇っている。この一事だけでも、この機体が他のスーパーロボットと比較して郡を抜いた存在であることを証明していると言えよう。

この機体は、鉄人28号と同じく全長18mであり、マジンガーZと同様に直接機体に搭乗して操縦し(ホバーパイルダー=コアファイターでもある)、ゲッターロボと同様に合体変形するといった、これまでエポックメイキングな機体が定義した事項を全て兼ね備えているのである。(筆者は、この機体に合体変形機能は不要と考えていたが、あの有名なラストシーンのことを思うと、その考えは間違いであったことに気づいた。)


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(ラストシューティング後に転がっているガンダム。最後は搭乗者の脱出に一役買った)


そして、この機体はスーパーロボットの新たな定義を追加した。それは「スーパーロボットは量産兵器である」と言う定義である。この定義は、「スーパーロボットは、正義も悪も無く戦場の使い捨ての兵器である」と言う、これまでのスーパーロボットとは一線を画した考えの基に成り立っている。それまで、勧善懲悪(注2)の基に考えられていたスーパーロボットに対し、戦いに正義も悪も無い!勝つか負けるかだと言うある種のリアリティーを持ち込み、既成のスーパーロボットと言うものを破壊し、宇宙世紀のガンダムと言う形で再結晶させて見せたのである。


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ドイツ軍が使用した量産型モビルスーツ MS-06 ザク(うそw)


この機体登場後には、従来のスーパーロボットタイプはその数が減少し、主人公が登場する機体は、量産兵器の中の上位機種とい位置づけになった。このスーパーロボットの新たな定義を打ち破るには、実に16年もの歳月を要することになろうとは、一体誰が思い至ったことであろう。そう、あの、汎用人型決戦兵器である。


(注2)

スーパーロボットで、初めて勧善懲悪の呪縛を解き放ったのは「機動戦士ガンダム」であるが、ガンダムの前に放送された「無敵超人ザンボット3」において、「勧善懲悪」に対し疑問を投げかける構成になっている。このザンボット3があったことで、正義も悪も無いガンダムが生まれたのであろう。


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第五章 : 汎用人型決戦兵器

ガンダム以降、スーパーロボット=兵器とした位置づけにになり、いわゆる悪と戦う唯一無二のスーパーロボットと呼ばれるものは減少していった。もう、スーパーロボットとして新たな定義を打ち出すような革命的な機体は登場しないのであろうと思われていた。しかし、喜ばしいことにその悲観論は打ち砕かれた。そう、あの汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンの登場によってである。


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この機体は、ガンダム以前のスーパーロボットの定義、概念を全てぶち壊し、搭乗者がその機体が一体何なのか判らずに操縦していると言う摩訶不思議な機体であった。最終的には、神の似姿のコピーを拘束具という装甲板で多い被せた電動人造人間と言うことになっている。こんなスーパーロボット(人造人間であるため、ロボットと言っていいかも疑問)は、後にも先にもこの機体のみである。ロボットと言うよりは、ウルトラマンと言った方が近いと思われる。


しかし、エヴァンゲリオンがスーパーロボットに与えた衝撃は凄まじかった。しかし、その後のスーパーロボットに影響を与えたかと問われると、類似エヴァンゲリオンが現れてこないことから、孤高の存在、比較対象物が無い存在と言える。


エヴァンゲリオンと使徒との戦いを見るにつけ、これはスーパーロボットではなく、ウルトラマンと怪獣の戦いでは無いかと錯覚することがしばしば起こる。エヴァが使徒の肉体を貪り食らい、S2機関(永久機関)を体内に取り込むシーンなどは、およそスーパーロボットとは思えない姿である。


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第六章 : スーパーロボットの今後

これまでのスーパーロボットの定義を打ち壊し、新たな定義を確立することは非常に困難と思われる。何故なら、ガンダムに至るまでに、スーパーロボットの定義はほぼ完成を見ているからである。それを打ち壊したエヴァンゲリオンであるが、その後、エヴァンゲリオンがスーパーロボットのスタンダードになったとは言えず、スーパーロボットの定義としては、ガンダムから変化が無いと言えよう。


筆者としては、是非、この悲観論を打ち砕くスーパーロボットの誕生を待ち望む次第である。筆者が思う今後のスーパーロボットとは、一度原点回帰し、その後その常識を打破することで道が開けるものと愚考する。そうすれば、我国のスーパーロボットは、まだまだ発展してくものと思われる。



付録

仕事の気分転換のつもりで書き始めたら、悪乗りして長文になりましたw 最後まで読んで下さった方に感謝致します。内容的には、遊びで書いておりますのでご容赦下さい。また、掲載した画像につきましては、無断で掲載しております。不都合があれば削除致しますので、コメント欄等へご一報下さい。