毎日の出来事に私たちの感情はいつも揺れ動いています。
日ごろ、悩みを抱えたり、気持ちが高ぶって心臓の拍動が活発になると、無意識のうちに心臓にある左胸あたりに手を当てることってありませんか?
以前は、こんな行動から「心」は心臓にあるという考え方が一般的でした。
しかし、江戸時代に日本に蘭学が入ってきて「脳」の存在があきらかになると、脳こそが心を司り、喜怒哀楽を司っていると考えられるようになりました。
そして、心の働きは、大脳皮質と脳幹、大脳辺縁系の3つが連携をとることで成り立っていることがわかってきました。
(1)動物的な「情動」
感情には、人間が持つ特有のもの、動物的な感情の2つがあります。
人間的な感情~ほかの人に抱く親しみ、憎しみ、羞恥心といった心の働きを指します。
動物的な感情~空腹が満たされたときの快感や十分な睡眠が取れなかったことの不快感、生命の危機にあったときの恐怖、闘争心など。これを人間的な感情と区別して「情動」といいます。
情動と関係するのは、食欲、性欲、睡眠欲など生存欲求を司る視床下部と快・不快や怒り、恐れを司る扁桃体、過去に体験した記憶の保存場所である海馬です。
これらが神経線維で結ばれてお互いに連携をとっているため、外部からの情報とこれまでの記憶が統合されて情動が生まれます。
(2)前頭連合野による情動の抑制
怒りや恐れなどの情動がおこると、心臓の拍動が激しくなって血圧が上昇します。そして酸素を取り込もうと呼吸数が多くなります。
瞳孔は拡大し、骨格筋も緊張します。これらは自律神経のうち交感神経の活動が増大したために起こる生理的変化で、さらに内分泌もストレスに耐えれるように対応します。
つまり、視床下部は扁桃体と連携して情動を生み出しますが、自律神経や内分泌に働きかけて情動を抑える機能も備えているのです。
しかし、自律神経のコントロールだけでは、情動は暴走しかねません。
そこで最終的には大脳の前頭連合野が理性的に情動を制御します。