木村朗子著『紫式部と男たち』の巻末に注釈文が載っている。今日はそれを丸写しして見ました。

　式部省

律令制における八省の一つで、朝廷の儀式、官吏の試験、大学寮などを管理した。紫式部の名の式部は父、藤原為時の官位（式部省の官僚）に由来するという説がある。

　女童

日常のこまごまとしたことをさせる成人前の従者。

　入内

　天皇の后候補として内裏（天皇の住まう場所）に入ること。摂関政治期には有力貴族たちがこぞって娘を入内させたが、后の位にのぼるためには男子を産み次代の天皇の母となる必要があった。

後宮

　皇后や后などが住まう場所。そこに住む皇后以下の女性たちのことをも意味した。ここに仕える女房たちは公的序列があり女御の下に、更衣、御里殿、尚侍、典侍がいた。

　　東宮

　　次代の天皇の位にのぼることが約束されている地位で、皇太子のこと。春宮とも書く。

　物忌

外出を控え外界との接触を断ち、ひきこもること。何を忌むかは場合による。神事、仏事に備えて人心を清浄に保つこともあれば、物の怪が現れたり悪夢を見たりなどの凶兆には怪異を避けてひきこもることもある。物忌の退屈をまぎらわすために詩歌、管弦を愉しむこともあった。

　男踏歌

　多数の人が足で地面を踏み鳴らし、列を作って行進し、歌い踊る初春の行事。男踏歌と女踏歌がそれぞれ行われた。

　清涼殿

　天皇の日常生活の場。官位が６位以上でなければ、清涼殿には上がれなっかった。

　偏つぎ遊び

　漢字の偏と旁を使って知識を競うために行った遊び。

　殿上童

　公卿の子弟で、元服前の童の姿で宮中に仕える少年。

　方違え

　出かける先の方角禁忌にある場合、その方角を避け、いったん別の方角に出向いて泊まり、翌日目的地の向かうこと。

　　乳母、乳母子

　生母の代わりに乳をあげる養育者として雇われる女房の乳母。入内した女姓たちは天皇の子供を次々と生むことが求められたため、産んだ子には乳をあげないことですぐに次の妊娠・出産体制に入った。乳母は自分の子（乳母子）と主人の子(養君)を母乳で育てたため、こうした乳兄弟は兄弟姉妹より強い絆で結ばれた。

　筝の琴

　１３弦の琴。琴の琴と呼ばれた七弦琴と区別するために筝の琴と呼び分けていた。光源氏が須磨に備えていた琴の琴。

　除目

大臣以外の官職の任命のこと。

　六衛府

　左右近衛府、左右衛門府、左右兵衛府の総称。近衛府は天皇の警護を、衛門府・兵衛府は宮門の守護を担当した。やがて左右近衛府は娯楽的な宮廷儀礼を担当する機関となり。左右衛門府は警察裁判を担当する検非違使庁っを構成した。

　大嘗会の御禊

　天皇の即位後初めて、天皇自らが新穀を神々に供え、自身も食する宮中祭祀の大嘗会のため、斎院が加茂の河原で身を清める禊の儀式。

　言忌

　不吉な言葉を使うのを避けること。

　催馬楽

　平安時代に流行した歌謡のこと。

　桜襲

　衣服を重ね着した時の、表に白、裏に赤などの桜色の色目。冬から春先にかけて着ていた。

　下襲

　束帯姿のとき、袍の下につけ、腰から下の背面に長く引いている状態の衣服。

　長精進

　長期間にわたって身を清めて不浄を避けること。

　託宣

　神が乗り移ってお告げを伝えること。

　祗候

　貴人のそば近くに仕えること。

　陰陽寮

　宮中の政務を司る中務省に属し、陰陽博士、暦博士が陰陽道に基づく占い、、暦作りを行う。

　大元帥法

　　正月８日から１４日まで宮中の役人が大元帥明王を本尊として鎮護国家の修法を行う。

　立后

　后の位につけること。后の位は皇后の他に皇太后、太皇太后の３后が定められている。

　斎院

　加茂神社に仕える人で、未婚の皇女から選ばれる。

　卜占

　占うこと。

　局

　宮中や貴人の邸宅の女たちの部屋のこと。上局は臨時に置かれた休息所、下局は常に居住する場所として与えられた部屋。堀河に邸宅がある人が堀河殿と呼ばれるなど人名を言うかわりに場所の名で人を指すことが一般的だったので、桐壺、藤壺など局の名が女君を指しもした。

　解文

下級の諸官庁から上級の官庁に提出する公文書、あるいは推薦状のこと。

　仮名序

　『古今和歌集』の序文のうち、仮名文で書かれたもの。

　庚申の日

　眠っていしまうと体内の虫が悪さをすると信じられ、徹夜をして過ごさなければならなっかった。

　函谷関

　中国にあった関所で夜間は閉鎖し、朝、鶏が鳴いたら開けることになっていた。ここでは『史記』の孟嘗君列伝にある、追ってから逃れようとしていた孟嘗君一行が鶏の鳴き声を真似することで閉じた関を通過したという話が引用されている。

　半蔀

　下から突き上げて上半分を開く、つっかえ棒で留めておく窓。

　打ち目

　光沢の具合のこと。

　時過ぎた

　盛りの年齢を過ぎていること。

　髪文字

　付け毛のこと。

　次第書

　書物の由来、行事の順序を書いた文書。