日本の戦後世界の教養人にとって理想郷は、北朝鮮や中国、ソ連であった

日本の戦前の社会では格差や軍部の暴走など社会矛盾が氾濫していた

だからこそマルクス主義を背骨に持つ共産主義により、理想郷が実現されるという幻想が勉強家である若者たちの心を掴むのは容易かった

 当時の若者達は、現在のメディアで重要な地位を占める人々となっている

戦後60年までは、こうしたメディアの主催者達は米国を批判しそれに追随する日本政府を批判し、共産国家を礼賛していればよかった

 その端的な例が、在日朝鮮人の帰還事業であった

当時、新聞はこぞって北朝鮮を共産主義を実現した理想郷として興奮気味に報道し、機関事業は理想郷への旅と称賛していた

 朝鮮戦争直後のことである

 そう報道した人々は、現状については口をつぐんだままだ

やがてベトナム戦争で米国が南ベトナムを守りきれず撤退すると、日本の教養人たちはますます自らの信念に自信を持った

 "悪魔の飽食"、"中国の旅"など日本の軍国主義を負の遺産を紹介することが盛んになる

吉田清治の従軍慰安婦もこの頃に表された

そうした著作は局所的な戦争犯罪が軍国主義によるナチズムのような原理主義によって行われたという戦前批判に溢れていた しかもいつくつもの誇張や事実誤認も含んでいる

 ともかく、日本の左翼思想は、この頃 最も盛んであったし

この時流に乗るのが教養人の嗜みのような状態であった

 この流れが変わるのが、1990年を前にしての天安門事件、ベルリンの壁崩壊

 2002年の北朝鮮拉致被害者の帰国である

 大手新聞はこの拉致問題を黙殺していた

理由としては当時の社会党や共産党もそのようなことは事実を

恣意的に歪める事だと断定していたためだ

 善良である共産主義国家が犯罪を犯すはずがないという見方である

この事件を扱っていたのは、当時は三流と考えられていた週刊誌だけであった

 

 以後 日米欧は中国シフトへと傾斜していく

資本主義と共産主義が結びついた20年となる

資本主義は資金と知識を共産主義は合法的な奴隷階級を提供してくれた

 結果は国内の衰退と第三世界の軍事的台頭

ものは安価になったが、貧乏人も増えた

この世界に入り込む前、欧米の教養人たちは、先進国はもっと知的な職業に集約されるべきだと説いていた 日本の知識人も概ね同調

 結果は欧米の極端な格差社会

日本でも彼らの国ほどではないが、やはり格差は大きくなった

理由は単純だ

 誰もが知的な仕事 つまり医者や弁護士、エンジニア 経営者になりたいとは思わないからだ それに対して第三世界からは安価な日用品が毎日輸入されている

 米国はそれを止めることができないまま 巨額の代金を中国に払いつつけている

 

 シンガポールは有数の高所得国家になった

ただ、国の底辺では、大量の移入労働者が毎日の都市国家の維持を支えている

国民の平均所得でなく地域の平均所得を計算すればまた違った結果になるのだろう

 

 現在の高齢になった教養人たちは現状をどの様に考えているのであろうか

彼らのイデオロギーからは現在はどの様に映るのだろうか?

やはり政府を批判し米国を批判し日本の軍国主義の罪を数え上げ、憲法9条を神聖とすることが善 そして資本論の科学的知見が世界を救ってくれると 相変わらず考えているのであろか?