黄色い花

 

年の瀬を迎えても

源真が忍を連れて戻ることはなかった・・・

 

 

 

 

 

 

神崎は

毎日のように寺に出向き

源真が戻ったか尋ねる毎日だった。

 

 

 

 

 

 

壱嶋の表情から

心の中を

推し量れなかった・・・

 

 

 

 

 

 

時折遠くを見つめる姿に

今も忍を待っているのだろうと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

もう忍が

壱嶋の元へ戻ることはないのだろうか・・・

 

 

 

源真の説得も耳を貸さないのだろうか・・・・

 

 

~神崎・・・・~

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・神崎少佐・・・神崎!!」

 

 

 

「あっ!はい!!なんでしょうか」

 

 

 

 

 

壱嶋の声に

呆然としていた自分を知った。

 

 

 

 

壱嶋の呆れ顔に

神崎は

しまったと唇を噛んだ。

 

 

 

 

「気が付きませんで・・・申す訳ありません・・

なんでしょうか?」

 

 

 

「この報告書・・・当該方面軍全体の

基幹要員の人数・・・

武器庫管理の数値・・・

どれも間違いじゃないのか?」

 

 

「はい?え~っと・・・・」

 

 

 

 

 

眼鏡を押し上げ

慌てて書類を確認すると

単純な間違いをしていた。

 

 

 

「申し訳ありません!!ただちに訂正し

ご報告させていただきます!!」

 

 

 

 

「神崎・・・・・・お前らしくない・・・

正月は、家族とゆっくり過ごすことだな」

 

 

「あ、はい・・・・恐縮いたします!」

 

 

「私の事などに心痛めることはない」

 

 

 

「あ・・いえ・・・・・・はい・・・・」

 

 

 

「時が満ちるまで待つしかない・・・」

 

 

目を細めた壱嶋に

神崎は

慰めの言葉も出なかった・・・

 

 

 

 

源真僧侶は

忍の心に語り続けた・・・

 

 

 

 

 

しかし

頑なに心を閉ざし

素直な気持ちを隠していた。

 

そんな時

寺に参りに来た

ある人物たちが

忍を変えた・・・

 

 

 

 

「豆ちゃん・・・一馬さん・・・・」

 

 

そう思えるほど

その二人の雰囲気は

とても似ていた。

 

 

 

 

大希に良馬

 

 

 

 

忍に

年齢も近いとあって

すぐ打ち解けた。

 

 

 

 

 

 

源真は

自分の出番などないのだと悟り

忍を二人に託した・・

 

 

 

 

 

「大希くん、本当に豆ちゃんに似てるね~

良馬さんも一馬さんみたいだし・・・」

 

 

 

 

 

 

「そうっすか?俺、良く分からないけど

皆に言われる・・・特に京汰さんには・・・」

 

 

 

 

「お京さん?」

 

 

「そう・・俺、あの人苦手っす・・・・」

 

 

「どうして?」

 

 

「だって、怖い・・・っすよ・・

よく豆丸くん、世話が出来たと思って・・・」

 

 

 

 

「怖い・・・お京さんが?」

 

 

 

 

優しそうなお京に

怖さなど一度も感じなかった。

 

 

 

 

 

「そうっすよ・・・俺を見るといつも虐める・・・・

言葉づかいが悪いとかなんとか・・・

あっちの方がよっぽど悪いっすよ・・・・」

 

 

「ふーん・・・・そうなんだ・・・・

それよりこの寺になんで来たの?」

 

 

「あ、俺と良馬さんの家族が眠る墓があるんだ」

 

 

「家族?いないの?」

 

 

「うん・・・小さい時に崖崩れにあって皆死んだんだ・・・

俺たち二人だけ残ってしまって・・・」

 

 

「そうなんだ・・・大変だったね」

 

 

「忍くんの家族は?」

 

 

 

「俺は、誰もいないよ・・・気が付いたら

知らない人に育てられていたから・・

捨てられっ子だよ~」

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

淡々と語る忍に

大希は

唖然としていた。

 

 

 

「なに?」

 

 

「あ・・・いや・・・俺より大変だったのは

忍くんっす・・・」

 

 

「そうかな~良く分からないよ・・・

親っていい?」

 

 

「俺ももう忘れたけど

今は、良馬さんが家族だから

寂しいなんて思わないっす」

 

 

「家族・・・・」

 

 

「忍くんは、壱嶋さんが家族っすか?」

 

 

「えっ?・・・・いや、違うよ・・・

俺、居ないよ・・家族なんて・・・」

 

 

 

「そうっすか?・・・・壱嶋さん、怖そうだけど

忍くんを見る目は

とても優しそうだったよ」

 

 

 

 

「・・・・・・ほんと?」

 

 

 

「うん!」

 

 

忍は

嬉しかった・・・

 

 

違ったとしても

そんな風に見えたと言う事が・・・・

 

 

 

 

壱嶋との暮らしを振り返り

楽しかったとつくづく思った・・・

 

 

 

 

 

居心地の良さと

守られてる安心感・・・

 

 

 

久しぶりにあの頃を

懐かしく思った。

 

 

 

「あ、良馬さんだ!!」

 

 

大希は

すぐさま駆け出し

その側にくっつくように立っていた・・・

 

 

「・・・・・」

 

「羨ましいか?」

 

 

源真が隣に来ると

そんな言葉を掛けて来た。

 

 

「羨ましい・・・・そうだね

側に居てくれる人・・

家族だって言ってた」

 

 

「苦労してやっと出会えた二人だ・・・

更に絆を深くするのだろうに・・・」

 

 

 

「絆・・・・・・いいなぁ~

そんな人が居たら・・・」

 

 

寂しそうな横顔に

ついついかまってしまう

 

 

「誰かに会いたくなったか?」

 

 

 

「そうだね・・・豆ちゃんや一馬さん・・・会いたいかなぁ~」

 

 

 

「それから?」

 

 

「白桃茶屋のお亀さんやマツさんにも会いたいね

軍の皆にも・・・」

 

 

「壱嶋殿にか?」

 

 

 

「!!そんな事言ってないじゃないか・・

壱嶋さんには

会えないよ!」

 

 

「どうして会えない?」

 

 

「だって、俺・・・・・」

 

 

会いたいのに

会えない自分・・・

 

 

何故?・・・・

 

 

神崎に言われたから?・・・

 

 

違う・・・・

 

 

壱嶋の家の通いの人に

煙たがられたからか・・・

 

 

違う・・・・

 

 

ずっと心に引っかかるもの・・・

それは

お京の存在だった・・・

 

 

 

どんなに背伸びをしても

どんなに真似ても

お京を越えることなど出来ない。

 

 

 

忍は

惨めさを感じていた。

 

 

「壱嶋さん・・・お京さんが好きだから・・・・」

 

 

 

「ほう~お京を?私も好きだぞ」

 

 

 

「本気なんだよ~」

 

 

「私も本気だが・・・・・」

 

 

「もういいよ・・・・」

 

 

 

大希と良馬が

肩を並べ笑顔で話す姿に

寂しさを感じた・・・

 

 

 

心を埋めるのは

一人しかいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・家族か・・・・

大希くんと良馬さん・・・永遠の絆なんだね・・・」

 

 

 

良馬が用意した指輪に込められた意味・・・

 

 

 

忍は

急激に壱嶋に会いたくなった。

 

 

 

「逃げてばかりじゃ何も変わらない・・・

当たって砕けてみたらどうだ?」

 

「良馬さん・・・・・」

 

 

「悩んでいても何も進まないっす」

 

 

「大希くん・・・・」

 

 

二人は

幸せそうに微笑んだ・・・

 

 

「案外、砕けずに済むかもしれない」

 

 

「そうだよ~忍くん」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

「ほら~!!」

 

 

大希と良馬が

忍の背を押した。

 

 

 

「あっ・・・・・・」

 

 

 

 

一歩進んで

何かが変わるのかもしれない。

 

 

 

 

何もしなければ

何も変わらない・・・・

 

 

 

 

 

「源真さん・・・・俺・・・・・

壱嶋さんに会いたい・・・・」

 

 

「おお~やっとその気になったか

そうと決まればすぐ帰るぞ」

 

 

 

「俺たちも京介さん達が待つ町に帰るよ」

 

 

 

 

忍と源真

大希と良馬

それぞれの待つ場所へと歩き出した・・・

 

 

 

 

「俺・・・頑張ってみる・・・

壱嶋さんに会って、ちゃんと話したい」

 

 

「そうだな・・・長い旅だったな・・・」

 

 

「うん・・・」

 

 

「そうだ・・言い忘れていた」

 

 

 

「何?」

 

「壱嶋殿が『待ってる』と伝えてくれと・・・・」

 

 

 

「?!!!!」

 

 

「忍?どうした?」

 

 

「(◎o◎)・・・・・・・・・」

 

 

「忍?嬉しいのか?ん?目を見開いたまま

気絶してるんじゃないだろうな・・・」

 

 

「ま、ま、ま、待ってるってどういう意味!!?」

 

 

「そのままの意味だろう~」

 

 

「え?なんで待ってるって言ったの?!」

 

 

「さて~私は、ただ頼まれただけだから・・・

直接会って聞いてみればいいじゃないか・・・」

 

 

 

「なんで、すぐ教えてくれないんだよ!!

源真さんの馬鹿!!」

 

 

 

っと元気な姿も

汽車が町に近付く頃

忍は

源真の肩で荒い息と共に

高熱を出してしまった・・・

 

 

 

 

 

年明けのある日・・・

 

 

壱嶋は

一人家で休暇を過ごしていた・・・

 

 

そこまで忍が近付いてることも知らずに・・・

 

 

 

 

つづく・・・

 

こんにちは

 

ぺこ <(_ _)>

 

伏線を引いていた「大希と良馬」の話を

こんな感じに結び付けました~

さらりと指輪交換した二人・・・

家族だと言う二人の仲の良さ・・・

忍は、壱嶋を想い出し、会いたくなります。

 

さて、やっと次回、壱嶋と忍が会えるのです。

(*/∇\*)キャ

どんな二人が待ってるのでしょうか・・

 

乞うご期待

 

文字制限ヤバし・・・今日は、この辺で

 

マタネッ(*^-゜)/~Bye♪