私はイニシャルの入ったキーホルダーをずっとつけていた。

 

革製の赤い大文字のもの。

 

私の屋号の頭文字でもある。

 

ある日、「もういいや」と思い、キーホルダーの束からはずした。

 

ずっとつけていたものだから、ためらったが。

 

捨てた。

 

手放すことにした。

 

数日後。

 

夢を見た。

 

今でも覚えている。

 

私は扉の前に立っている。

 

その足元に、捨てたはずの赤いイニシャルのキーホルダーが落ちていた。

 

私はそれを拾い上げた。

 

そこで目が覚めた。

 

「捨てないで」。

 

やっぱり、捨てちゃいけないものだ!

 

って思った。

 

私には必要なものだ。

 

まだごみ箱の中にあるはず。

 

ありますように。

 

祈るような気持ちで、ごみ箱をひっくり返して探す。

 

もうごみ収集日にもっていってしまったかなって、あきらめかけた最後の最後に、「あったー!!」。

 

見つけた。

 

大事なものだったから、そのままポイってすてるのはしのびなかったので、紙に包んで捨てていた。

 

救い出せた。

 

みつかってよかった。

 

そっと洗ってきれいにした。

 

しばらく、鍵にはつけずに、家に置いていた。

 

今日、ドアのカギに、またつけることにした。

 

復活。