イズヴェルジェー二エたちは、黄金三頭龍と戦っていた。
それぞれのダメージはかなりひどかった。
特にイズヴェルジェー二エは、ジメナとモードの前になっていた。
それほどに、黄金三頭龍の強さが際立っていた。
イズヴェルジェー二エはボロボロだ。
分厚い赤い外殻は傷だらけで、4本あった前足も、まともに動かせるのは左の上腕一本のみ。
左のメインの羽根が消滅し小さめの鷹の羽もかなり羽根をちらして隙間だらけだ。
3本ある尻尾も右の一本が失われていた。
ジメナに至っては高熱であぶられたせいか全身が沸騰し時々動きを止める。呻くような咆哮をあげるが反撃する力を失っていた。
モードは全身が溶岩でできていたはずながら・・・つねに燃え立ち流動する溶岩に覆われていた筈が焼けた岩石がうごめくだけの様相になっていた。
強いな・・・上には上がいるとイズヴェルジェー二エは内心思っていた。
喰われるか、弱かった俺様が食うわれるの仕方ないが、コイツラまで巻き込まれるのは嫌だなとぼんやり考えていた。
黄金三頭龍は3つの首から発する鞭のようにしなる雷撃をイズヴェルジェー二エに放った。
ちらりと後ろを見るイズヴェルジェー二エはそのまま残った腕と羽根を広げた。
まるで覚悟を決めたかのようにそれで二頭の怪物を守ろうとしたかのようにも見えた。
直撃をくらったイズヴェルジェー二エは全身から煙を立ち上げながらよろめく、その巨体を黄金三頭龍はその太い腕で肩を抑えた。
そのまま3つの頭はニヤッっと笑ったような気がした。
一斉にイズヴェルジェー二エに食らいつく黄金三頭龍の首達。
肉を骨を外殻を破壊し噛み砕きつつ食いちぎった。
その時だった。
モードが、体にまとった溶岩の殆どを、そしてジメナが蒸発しかけた自身の毒を操って黄金三頭龍に放った。
毒は可燃性のガスとなって黄金三頭龍に纏わりつくそこにモードの溶岩が・・・
大爆発が起きた。
『今!』とモードの声・・・女性の声だった
『わかってる!』とジメナ人の姿の時の声
ボロボロの二人は更にボロボロの人型になったイズヴェルジェー二エを抱えて逃げ出した。
近場の岩場に《飛翔》を使い逃げる。
未だ動かぬ黄金三頭竜を訝しんだモードには爆発の煙のはれていく向こうに絶望が見えた。
黄金三頭龍は無事だった。
その姿は大きさを増しており。
外殻の表面に赤い帯が浮かんでいる。
イズヴェルジェー二エを取り込んだためだろう。
三つの頭がブレスを吐いた。
それは稲妻の鞭に炎を纏う形になっていた。
何とか岩場の入り口にたどり着いた三人はその攻撃を受けた。
入り口を吹き飛ばし焼けた出らせた上に帯電させるほどの威力を見せたその一撃に吹き飛ばされ。
岩にぶつかりながら奥に吹き飛ばされる三人。
ジメナとモードはイズヴェルジェー二エを守るようにしっかりと抱えていた。
呻きながら意識が戻るモード。
自身の体を確かめる意識は戻ったが体が動かない。
イズヴェルジェー二エは?ジメナは??
『生きてる?モード??』
ジメナは起き上がっていた、いったんゲル状になって二人を包んで衝撃から守ってくれたらしい。
ダメージはあるのか顔以外はゲル状のままだ。
イズヴェルジェー二エは酷い状態だった右腕を失い、わき腹と両肩の肉の大部分が失われていた。
『ねぇ!イズヴェルジェー二エ、私らを食ってあんただけでも逃げておくれよ。』とモード
『そうだよ、もともとそういう目的で私らをあそこから引っ張り出したんだろ?子作りもそうだけどさ。』と、ジメナ
ぼんやりと目を開けたイズヴェルジェー二エは小さな震える声で『嫌だ。お前らこそ俺様を食って生き延びろ。』
『お断りだよ。』と、モード
『夢見が悪すぎるよ。なんでそんなこと言うの。弱気なんてあんたらしくないよ。』と、ジメナ
『弱気?違うぞ・・・惚れた弱みだ。』と、どうにもならないことを言うイズヴェルジェー二エ
『じぁあ仕方ない、三人でここで死のう。』と、ジメナ
『あんただけで死なせないからね。』と、モード
黄金三頭龍が外でブレスを吐こうとしていた。
ブレスが岩場に届く時、高温にあぶられ死を覚悟した三人は、突然の寒気を感じた。
周辺のが突然凍り付く。
岩場全体が分厚い氷の覆われたのだ。
そして『生きてますか?』と声がかかる『あの外にいるのと私との属性的な相性は最悪なので、貴方たちを守ってやるように夫から言われらの出来ました。』と、現れたのはブラムドだった。
『回復魔法は使えますか?』とブラムドが続ける。
首を振るモード。
ここは本当におかしい魔素が薄い。
魔界に会って魔力切れが起きることが珍しいのだから。
使用される魔法のレベルに高過ぎて合わないとか、魔力の吸収量より多く消費するほど大量に魔法をばらまくなどしない限りは・・・ブラムドは、それぞれに回復魔法をかける氷結防御に回す分も考えなければならないので無理はできない。
外では黄金三頭龍がいまだブレスや両手で引掻いたりと氷を傷つけている。
ブレスに至っては氷を火属性が溶かし残ったものは帯電して光り輝いていた。
その、岩場への攻撃は止む。
だが、何かが争う音が鳴り響いていた。
『あんたの旦那は強いのかい?』とジメナ
『いいえ。息子の中には私や夫を越えるものがいますし・・・強さとは何か?それは果てしない謎ですわ。』と、ブラムド
『子供いるの!!!』と、ジメナ
『そこ?!!!』とジメナとは違う驚きを示すモード
外では戦いが続いていた。
互いの攻撃互いに届いていた。
防御障壁も防殻も貫いていた。
クイロは巨大化しセブンペインも発動中だ。
それでも、クイロの攻撃で確実なのは額の角から発する《切断する光線》のみであった。
しかし、クイロはこじ開けた隙にクリスタルから発せられる多属性の魔法やセブンペインの力をのせたブレスを用いていた。
互いに傷つき再生力自体や回復魔法をかける状況が続いていた。
黄金三頭龍もクイロも互いに大穴や斬撃をうけつつ体の再生を繰り替えし、もしくは適当につなげ誤魔化し戦い続ける。
クイロは楽しんでいた。全力をもってしてもそうそう倒せない相手を見つけたからだ。
ベザレルのあの光球とは違い、相手は神気を使ってこない。
どちらかが倒れるか、魔力か生命力が切れるまで戦える。
物質界ではここまでの全力を使えば、島が世界が崩壊するかもしれないがここは魔界その心配はない。
3つの頭からブレスが飛ぶ、クイロの背に3つの大穴が開く。背に生えたクリスタルの何本かが砕けた。
相手はクイロの背にはえた骨の腕に掴まれ左右に引きちぎられかける。
骨が軋み、筋肉が寸断されながらも分断だけは免れる黄金三頭龍。
《切断する光線》によって右腕と左羽の寸断も気にせずに黄金三頭龍はクイロに向かってくる。
クイロは左側の頭がつぶれ前が見えなくなっていた。
背の穴は増えてはいたが順次回復させている。
それでも戦いは終わらない。
羽と腕の再生を急ぐ黄金三頭龍の胸が切れた、そこに大量の魔法がそして渾身のクイロのブレスが飛ぶ。
修復途中の腕と左の腕を振るい黄金三頭龍の一撃でクイロは吹き飛んだ。
それでもすぐに向かい合う怪物たち・・・・ドクン!!!クイロの中で音が響く突然苦しみの声を上げるクイロは口から緑色の液体を吹き出しつつ呻きながらも相手を睨みつける・・・7つの大罪が・・・苦し気に明滅していた・・・