すいません。数日前に有馬記念を制したダイユウサクさんに関するインタビューを行っているのですが、もしよろしければご協力いただけませんか?
「・・・ダイユウサクさんですかぁ、良いですよぉ」
ありがとうございます。ちなみにダイユウサクさんとの面識などはありますか?
「ありますよぉ、あの方とは一度だけですがレースで走った事がありますからぁ」
本当ですか!?そのレースに関する話を詳しく聞かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
「大丈夫ですよぉ。ええっとぉ・・・確かぁ、阪神レース場で行われた1200mのレースでしたねぇ」
阪神レース場の1200m・・・もしかして、このレースでダイユウサクさんが阪神レース場の1200mのレコードを更新した時の
「はいっ!まさにそのレースですぅ。」
なるほど。もしよろしければ貴方のお名前も教えていただきたいのですが
「なんでですかぁ?」
あっ、いえ・・・失礼しました。では、ダイユウサクさんに関する印象をお伺いしてよろしいですか?
「そうですねぇ、一言で表すならぁ・・・『憎い』ですねぇ」
憎い、ですか?
「そうですよぉ。私だけじゃなくて皆がこのレースに勝利して準オープンクラスに行きたいと頑張っている中でぇ、一人だけレコードを出すほどの実力を持ったウマ娘が紛れ込んでいたんですよぉ?だったらさっさとOPクラスに行けばいいのに、って思いませんか?」
それは・・・でも、そうかもしれませんね。
「それにですねぇ、レース前にトレーナーさんから『ダイユウサクというウマ娘は今までのレース記録を見た感じぃ、ゲートが得意で脚質は逃げか先行で来る可能性が高いかもなぁ。2番人気だけど今回はこのウマ娘をマークしろぉ』と指示されたんですよぉ。
しかしこの方はゲートでわざと出遅れて、有力視されていたウマ娘の出遅れにより序盤から逃げウマ娘がペースをあげました。それにより元から短距離だったとはいえ、かなりハイペースなレース展開となりました。
でも、それだけなら良かったのですがあの方は出遅れから私たちの集団の後方。つまり差しの位置につけて、そこから後続に三バ身差をつけてのレコード勝ちですよ。改めて言いますけど、準オープンにすら達してないレースで。そんな相手に敬意や尊敬を持つと思いますか?」
・・・確かに難しい
「更に言えば、インタビューをされたことが今回が初めてなんです。別にたくさんの記者に囲まれてG1の勝利インタビューに答えるとかじゃなくて、記者が一人でも、一言でも良いから私の勝利インタビューに訪れてくれた記者に『最高の勝利です!』と話して、そのインタビューが載ったとても小さな記事を自室の壁に貼って、偶にその記事を読み返して過去を思い返す。そんな些細な夢を叶えるために中央に来たのに、よりにもよってあの・・・ダイユウサクに関するインタビューを聞かれる屈辱をあなたは分かりますか?」
・・・申し訳
「だからですねぇ、今の私は地方のレース場で勝てるように頑張っているんですよぉ」
・・・地方ですか?
「そうですぅ。この時の敗北中央では私の夢を叶えるのが難しいと思ったのでぇ、地方のトレセンでコツコツ頑張っていくことにしたんですぅ。ちなみに来月に地方重賞レースに出走することが決まったんですよぉ」
そうだったのですね。おめでとうございます!
「ありがとうございますぅ。それにあの方が有馬記念で優勝できたのですからぁ、私も地方重賞優勝ウマ娘くらいにはなれますよね?」
私からは答えかねますが、なれるように祈っています。それと改めて、お名前をお伺いしてもいいですか?
「それは秘密ですぅ。ふふっ、偶には都会に戻ってくるのも良いものですね」
※このインタビューも上司の判断で採用されることはなかったが、翌月の地方重賞勝利ウマ娘のインタビュー記事は小さくではあったが採用された。ちなみに彼女のコメントは『最高のトレーナーさんと最高のファンのおかげで優勝出来ました!』だった。