「♪ハッタン コロコロ

  ハッタン ズリズリ

  じゃぶじゃぶ じゃぶじゃぶ

  シューシュー シューシュー」

 

今日も田んぼに、おじさんの低い声が響き渡る。

 

 

梅雨の晴れ間に、「ハッタン」を転がす。

「ハッタン」

またの名を、八反転がし、八反ずり、八反取り、田車、中耕除草機…

昔ながらの人力除草機だ。

 

 

田植えから3週間。

ご覧のとおり、コナギ一族が跳梁跋扈。

こうなると、力づくで一族の排除の排除に乗り出すしかない。

ハッタンを押したり、引いたりしながら、田んぼを行ったり、来たり。

羽根車にからめとって、土の中に塗りこむか、根こそぎ浮かせるか。

 

あえなく討ち死にしたコナギ一族

 

実はこれ、私の本意ではない。

願いは、コナギ一族との共生。

種のまま眠ってもらうか、つつましく暮らしてもらえれば…

 

そう思って、いろいろと手は打ってきたのだ。

昨年の秋には、田起こしをして生ヌカをまき、

田植え前に、深水で2、3回と、代をかき、

田植え後には、冬から発酵させておいたヌカをまいた。

ああ、それなのに、このありさま…

 

それにしても暑い。

7月の太陽が容赦なく照りつける。

本日、当地の予想最高気温は36℃。

1時間もハッタンを転がしていると、暑さと疲れで意識が朦朧としてくる。

危ない。

このまま倒れても、誰にも発見されない。

 

そこで思い出したのが、「掛け念仏」

山伏は、山中を駆け巡る修行の折、きつい急登に差し掛かると、

「さーんげさんげ、ろっこんしょうじょー」

(懴悔懴悔、六根清浄)

と大声で唱える。

みんなで声を合わせると、不思議と力が湧いてくる。

 

よし、田んぼ掛け念仏をやってみよう。

まずは、立ち止まって周りを見回す。

こんな田舎の田んぼ道でも、部活帰りの女子中学生がフラフラと迷い込んできたりすることがある。

何より、隣の田んぼの気まじめなオカミサンに見られたら、恥ずかしい。

幸い、人間は一人もいない。

おーっと、待った。

電車が来たぞ。

 

 

「♪ハッタン コロコロ

  ハッタン ズリズリ

  じゃぶじゃぶ じゃぶじゃぶ

  シューシュー シューシュー」

 

なかなかよい。

ハッタンを押し、引き、進む間合いにピッタリ。

ちなみに、

「じゃぶじゃぶ」は、ハッタンがかき分ける水の音。

「シューシュー」は、ファンウエアーの風の音。

 

これに、ダルマガエルくんが合唱してくれたら楽しいだろうなぁ。

 

♪クゥェケケ クゥェケケ