♦︎File No.13♦︎

TOYOTA PROGRES



日本最良の車はこれか!?
トヨタが送り出した本物の高級車


昨今の高級車はブランド力に頼る傾向が著しく、不必要で気味の悪い現代アートのような装飾を「これが高級なんだ…!」と自分に言い聞かせるしかない。


けれど、"高級"というのはそんなものじゃない。

今日はトヨタが作った本物の高級車「プログレ」を通して、高級車とは何なのか、この問いにしっかりケリをつけたい。




プログレの概要(wiki) 



トヨタ・プログレは、1998年(平成10年)5月にデビューした日本専用の高級志向セダンである。「小さな高級車」をコンセプトに掲げ、上質な内装と静粛性、滑らかな走行フィールを重視して開発されたモデルで、主にトヨペット店で販売された。生産は2007年まで続けられ、約9年間にわたってラインナップされていた。

ボディは4ドアセダンで、全長約4,500mm、全幅1,700mmの扱いやすい5ナンバーサイズながら、ホイールベースは2,780mmと長く、後席の居住性にも配慮されている。駆動方式はFR(後輪駆動)が基本で、一部グレードには4WD(i-Four)も設定された。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式を採用し、乗り心地と安定性を重視した足まわりとなっている。

エンジンは直列6気筒のみが用意され、2.5Lの1JZ系と3.0Lの2JZ系が主力であった。2.5Lエンジンは最高出力およそ200馬力、3.0Lエンジンは215〜220馬力程度を発生し、いずれもVVT-iを備えた滑らかな特性が特徴である。後期型ではD-4(直噴)仕様も導入され、燃費性能の向上が図られた。トランスミッションは主にATが組み合わされ、上質で穏やかな走りを志向している。

(Wikipediaの要約)



プログレの企画 


プログレの概要は上にまとめた通りであるが、特筆すべき凄さとは何なのだろうか。



レイアウトは、5ナンバーサイズに2.5L/3Lの直6エンジンを組み合わせたFR方式で、往年のセダンらしいものである。上級車種は音の調律が不可欠な要素となるため、6気筒は最低限のライン。駆動はFFでもFRでも良いと思うが、そこはFRと決めたようで、当時のトヨタはFRと組み合わせるユニットはV型ではなく直列と決まっていた。


とどのつまり、当時のトヨタが上級ラインを企画する場合、ここまでは既定路線である。

この後の内外装をどうパッケージングするかで、車の味が変わってくると言えるだろう。



プログレの外装デザイン 


外装デザインは非常にシンプルで、先ほどのユニットをレイアウトした場合のミニマムパッケージである。



FRゆえにタイヤは前の方に取り付けられ、無駄なオーバーハングは付けていない。全高は無理に抑えることなく頭上高を十分に確保している。ホイールベースは取り回しを阻害しない範囲で長めに取り、リアドアもそこそこ大きい。

トランクも無駄に絞ることなく四角い。荷室としての機能を十分に確保していると思う。


とにかく、5ナンバーサイズという制約のもとでめいいっぱい空間を取ろうと思えばこうなるだろうというミニマムパッケージなのである。


ミニマムといえば、この名車シリーズの初回で紹介したプリメーラがある。



プリメーラは皆さんの直感の通り高級車ではないが、車に必要とされる機能の全てを欧州クラスに引き上げた伝説の一台である。


プログレもプリメーラ同様に機能的に十分なものをしっかりとパッケージした。その上で、パワーユニットはワンランク上の6気筒とし、操舵性とバランスで有利なFRとしている。



プログレの内装デザイン 


さて、車を高級にする要素の大半は外装ではなく内装にある。車内で過ごす時間は日常に含まれ、パーソナルな要素が強い。出来ることならゆとりがあり落ち着くものがいい。


日本的な価値観で言うなら、老舗の旅館の上から2番目の部屋くらいが良いだろう。

1番は非日常的だし、広すぎると落ち着かない。ゆとりあると言えど、持て余さないくらいが良い。


自分の家を想像した時、使い勝手はそのままで、一つ一つの質を上げたいと思うだろう。

例えば、カーテンは少し良い材質、椅子はレザー、ベッドはセミダブルの木枠など。


日本的な室内の価値観を車に持ち込めば、求めている高級車の姿が見えてくる。



こちらがプログレの内装。私はこれが日本一の内装デザインだと思っている。


当時求められていた機能は一つのパネルにまとめており使い勝手が良く、ナビを使わないときは綺麗にダッシュボードに収納。使うときは目線の高さが合う位置に出てくる。

エアコン送風口の間にアナログ時計も取り入れている。


手が触れる場所には、本革あるいはファブリックの素材を使用して、とにかくチープな要素がどこにもない。


木の使い方についても触れておくと、前の記事で英国車の研究を参考にすればすごく近い自然である。運転中の目線に沿って一周するように、配置されている。

ウインカーレバーとシフトレバーのウッドが、やや過剰に見えるが、まあ良いだろう。

プログレの内装について、セルシオに近いという人もいるが、どちらかというとセンチュリーの系譜である。


オーナーズカーのセンチュリーがプログレであり、トヨタにおけるベントレーみたいな立ち位置である。


乗ったことがないので遮音性やロードノイズ処理については定かではないが、新車情報のビデオを見る限り、セルシオあるいはクラウンと同等のものだろう。



まとめ 



長くなったが、プログレの内装は一般的な乗用車の機能を十分に搭載した上で、日本的な価値観のもと一つ一つの素材や配置をワンランク押し上げたものである。


本来のパーソナルな高級車はかくあるべきで、機能性を損なうことなく、シンプルな内装を高級な素材に変えていくべきなのだろう。


大事のは大きさではない。スポーティな外観も、やたらめったら大きいボディも要らない。


走行性能についても無闇なパワーを必要としない。十分な広さを確保した上でミニマムに作った車は100馬力もあれば普通に動き、200馬力あれば十分すぎるレベルだ。


エンジンに関して大事なのはパワーではなく、

気持ちの良い音を奏でるかが争点である。プログレは1jz/2jzという直列6気筒エンジンを採用した点においても気持ちの良い音質だろう。



現代にプログレを!課題は何なのか? 


上のまとめを元に、現代にプログレのような車が復活するとしたら、どのようなものになるだろうか。

まず、現代におけるミニマムパッケージはカローラである。3ナンバーだが致し方ない…



これをベースに静寂性に着目したユニットを選ぶ。

本来ならV6を載せたいところだが、アルファードのような巨体も直4で駆動する時代にV6は厳しい。


従って、直4HVを選ぶが、吸排気に燃費よりも静寂性を優先した手入れをする。トヨタ特有のエアインテークの乱気流を防ぎ、なるべく6気筒に近い音を再現したい。ES300hは出来ているのでやれるだろう。



もし自分がカローラをペースにプログレのような車を再現するなら、内装はかなり変更しなきゃいけない。満足感を得るには200万近い出費が必要かもしれない。


まず、シートはカローラの純正シートの外側をレザー、内側をモケットのコンビに変更する。この時点では50〜100万。

肘置きをモケット/スエードに変更し、室内を囲むラインに細く木目を通す。センターパネルは同様の木目。これで40万。


プログレの時代はレザーやモケットも安かったが、今は時代が進み本物の素材は希少で高くなった。

しかし、人間は本物を再現する技術を持っている。ナイロン線維やナイロンといった人工素材を高級に活かす道もあるはずだと思う。


スポーツパッケージみたいな誤魔化しに逃げずに、本物の高級仕様を作ろうとメーカーは努力を続けるべきだと思う。セダンは別名"Saloon"と呼ばれるが、サロンのようなくつろぎ空間にスポーツを持ち込むのは無意味であり、それがセダンの衰退を招いてきた。


高級に対する価値観を磨かなければ、コストカットと車の退化を招いてしまう。しばらくするとワンランク車格が落ち、気がついたらラインナップから落ちている。


時代の波に飲み込まれないような車を本来トヨタは作れるはずで、その証拠がプログレには良く現れていた。

高級品に対する研究をしていたはずだが、いつぞやからそれを捨て去り、デザイナーの遊び場として室内空間を提供するようになっているのが実に残念だ。