台東区の神林音楽教室、
主宰・声楽講師の藤永和望です
昔、大流行した
キャスリーン・バトルのこのCD、
覚えてらっしゃいますか?
私は高校生の時に
このCDを初めて聴いて、
世の中には
なんっっって素敵な曲があるんだ
と、心震えたことを覚えています
このCDに入っている曲のすべてが
憧れの曲でしたが、
中でもラフマニノフのヴォカリーズは
私にとって高嶺の花的存在でした
というのも、
このヴォカリーズの最高音は
3点Cis、高いド♯と、
高校生の私には
とてもとても出せない
超高音が含まれていたからです
それでも憧れの気持ちはやまず、
大学生になってすぐに
当時あった渋谷のYAMAHAで
ヴォカリーズの楽譜を買って、
歌えるところだけ歌ったり、
伴奏を弾いて悦に入ったり
一人で楽しんでいました
大学生の頃の私は
アクートがまったく得意ではなく、
頑張って3点Cまでしか出せず、
なんなら緊張したりすると
Cすらも危うくなる感じでしたので、
人前でヴォカリーズを歌うなんて
夢のまた夢でした
それでもいつかは歌えるようになりたいなと
たまに思い出しては歌ってみて、
たまにはCisが出るけれど
安定して出すには程遠く、
私には無理な曲なんだと
ほぼ諦めていました
大学も卒業して、
二期会のマスターコースの頃、
同期の仲良しの友達と
コンサートをすることになり、
さて何を歌おうと考えた時に、
ふとヴォカリーズを歌ってみたい気持ちに。
でもやはりCisは
安定して出すことはできません
そこで、調を半音下げて演奏することに!
元々の調はcis moll(嬰ハ短調)ですが、
半音下げてc moll(ハ短調)にしました
歌曲なので転調してもよいのです
おかげで安心して歌うことができ、
私の憧れの気持ちも
半分満たされました
しかし、やはり
私の心の中で鳴り響くのは
cis mollのヴォカリーズ…
残り半分の満たされない気持ちが
ずーっと心のすみっこに
引っかかり続けていました
それから更に20年近く経って、
たくさんのオペラの役も歌わせてもらい、
Cisどころか3点Dのある役でも
歌うことができるようになった頃、
ある時生徒さんがレッスンに
ヴォカリーズを持っていらっしゃいました。
3点Dも本番で出せるようになったんだから
Cisなんて余裕でしょうと思いきや…
相変わらず調子に左右される
ヴォカリーズのCis…
Cisって書いてあるから
だめなんじゃない⁉️
Desって書いてくれたら
できるかも
という、謎の八つ当たりを
ラフマニノフにしたくなるぐらい
ヴォカリーズのCisが
私にとって鬼門だったのです
昨日の生徒さんも
只今ヴォカリーズをレッスン中
とても美しい声をお持ちですが、
まだCisは確実には出せません。
前回のレッスンでは
パッサッジョで喉頭が上がってしまい、
後半のパッサッジョ祭りが
苦しそうでしたが、
昨日のレッスンでは
発声から前回と違う感じが
パッサッジョで喉頭が上がらず、
支えもしっかりできるようになり、
息も声帯より上に
吐きすぎないようにほぼできていて、
これはCisもそのままいけるのでは⁉️
と思うほどでした
残念ながらCisのところになると
どうしても余計な力が入ってしまい、
息で押してしまって
あと少しのところで届かず
でも、これは本当にあと少しで
できるようになるなと
そして、私も
レッスン中何回もCisのところを
歌ってみせましたが、
何回やっても安定して出せ、
まったく喉も疲れることなく
低い音にも移行できました
(喉頭が上がってない証拠)
50歳を過ぎても
憧れの曲を憧れの調で
若い時よりも安定して歌えて、
やはり発声の大切さを
ひしひしと実感しました
私と同年代の生徒さんたちが
近頃軒並み声が立体化してきているので、
レッスンの度に驚かされています
GW中もレッスン三昧です
生徒さんたちみなさんが
どんどん上達なさるので、
教えるのが楽しすぎます