空には旅人がいる
誰にも縛られることなく自由な旅をしている

下を見下ろすと、生命に満ちた大地が出迎えをする
青々とした草木は囁き声で挨拶を交わし
旅人は若草が健やかに育つよう願いを込めて、さらさらと水やりをする
新たな命の成長に思いを馳せながら、流れに身を任せしばしうつろう

空と大地の色が一層濃くなった頃、地上からの熱気を受け旅人は祭りを開く
暗転した空で光の衣を纏い太鼓を手に舞い踊ると
通りすがりの旅人たちが雨滴で地面を打ち調子を取る
満場の拍手に包まれ、南の天を見ながら目を閉じ旅人は漂い続ける

まどろみから目覚め再び下を見下ろすと
黄金色の野原と紅葉色の山々が一面に広がっている
その幽玄な彩りのたたずまいに魅せられ旅人は大地に恋をする
茜色に頬を染め地上との語らいを満喫するも
野山は次々と旅人に別れを告げしばしの眠りに就く

愁いたまま足を進め旅人は街に辿り着く
近くから閃光と共に轟と身を引き裂くような声が聞こえる
人々があてもなく走り回り、ぶつかっては真朱をまとい錆色の澱みに沈んでいく
静寂が訪れた後旅人はその場に立ち竦み、はらはらと凍った涙を流す
純白の布で地面を覆い安らかな眠りを祈りながら、ゆっくりとその場を後にする

空を仰ぎ旅人は虚空に語りかける
白昼の日輪も暗闇の辰星も、光を放つのみで言葉は返らない


旅人は眼下を見下ろし続けることを心に決め
今日からまた旅に出る