『生きとるわ』(又吉直樹著、文藝春秋)
又吉さんとは以前対談をしたことがある。
子ども時代は、サッカーとお笑いが大好きだった。
一方で、読書も好きで、ずっと本を読み続ける。
そして、10年前に発表した『火花』で芥川賞受賞。
累計354万部という、とんでもないベストセラーになった。
そのあと『劇場』。
今年刊行された『生きとるわ』は6年ぶりの長編だが、実におもしろかった。

出だしの数行がすごい。
太宰治の本の冒頭を彷彿させる。
主人公がバーに入る光景をこんなふうに表している。
「悪夢に擬態した夜なんか素通りすればええはずやのに。
興奮していた僕らは、魔物を手懐けられると慢心した挙句、まんまと巻き込まれることになってしまった。気圧で重くなったドアを開けると、圧縮された空気と音楽が顔に当たり、流れるように散った。」
高校時代の4人組の青春小説。
スティーブン・キング原作の映画『スタンド・バイ・ミー』に出てくる音楽が聞こえてきそう。
映画では、最後に4人の中で作家になった男が「12歳のときのような友だちはもう2度とできない」と述懐する。
又吉の『生きとるわ』は、一人が怪物になっていく。
その怪物に引きずられるように、仲間たちが巻き込まれていく。
又吉の言葉を借りれば「勝手に人生の難易度を上げていく」そんな仲間たち。
それぞれ残酷な人生を歩んでいくのだけれど、
なぜか読後感はさわやかなのだ。
ドジだなあと思いながら、
「これが人生」と思わせてくれるような小説。
久しぶりに小説の世界に浸り込むことができた。
満腹です。


