☆たぶん世界初☆☆

大阪ミナミ、カーマストラ恋愛占門館
サーシャ.T先生原作のストーリーに
大阪キタ、占い館ノルテ
条願がアレンジを加え、
南北占い館オーナー同士による共作物語が実現!☆☆☆






一カ月後...


帰り道。
辺りはすっかり夕暮れ時だった。

いつも通りの町への買出し、今日は特に近所の人から頼まれごとをされることもなく、いささかノルトの足どりも軽いようだ。

「腹減ったな.. 
でも今日はいつもに増して、いいぶどう酒も手に入った。
おふくろ、きっと喜ぶだろうな..!」

ノルトがそんなことを考えながら家路を歩いていると、ふとトーラ川のほとりに仲睦まじく腰かけて語らう、男女の姿に気がついた。

「あれは...‼︎
キースとカーマ...」

少し遠目ではあったが、二人の姿を見つけた瞬間...ノルトは悪魔に取り憑かれたかの様に、なんとも表現し難い激情の炎に焼かれていくかのような自分を感じていた。
メラメラと次々に押し寄せてくる様々な感情...

「ふざけやがって..!!」

この心をこんな風に突き動かす根源はいったい何なのか..?
嫉妬..? 執着...?
今は何もわからないまま、少し離れた木陰から二人を睨みつけるノルトの心は激しく揺さぶられていた。

二人の仲を引き裂いてしまいたい衝動をなんとか抑え、その場を立ち去ろうとしたその時、ノルトは自分のポケットの中に一枚のタロットカードが入っていることに気がついた。

一週間前に妖しげな魔術師からもらった剣を抱えてほくそ笑む男の絵が描かれたカード。
それと同時に、あの妖しげな魔術師の言葉もノルトの脳裏をよぎった。

「ソードの7...
そうか.. どんな手を使ってでも手に入れたいもの...
お兄さん... 持ってるねえ...」

魔術師はにやりと不気味な笑みを浮かべ、こう続けた。

「祈りを込めて、このカードをお兄さんの額に当ててごらんなさい。
すると、あら不思議..
鋭い剣のように、どんなものでも真っ二つに引き裂くことができる魔法のカードだよ..!」

魔術師はさらにオーバーな身ぶり手ぶりで、こう言った。

「どんなに硬い石も.. どんなに硬い鋼鉄も..
それどころか、永遠を誓いあった人と人の絆ですらも...
一刀両断。思いのままだ..‼︎
ただし、このカードを使えるのはたった一度だけだ。
使いどころを間違えるんじゃあないよ...」


人と人との絆ですらも.. 
本当にそんな魔法があるのなら...‼︎

ノルトは自分の中にある黒い感情に身を任せ、カードを額に当てた。
すると...

「隊長.. 隊長じゃないか‼︎」

カードは煙のように消えてなくなり、ノルトの背後からモヒカンにタトゥーのガラの悪そうな男が声をかけてきた。

「お前... ワンモハマドラディ‼︎」
「偶然だなあ、隊長‼︎」

彼の名はワンモハマドラディ。
隣町に住むノルトのいとこの友達だった男だ。
子供の頃、激しいいじめにあっていた彼を助けて以来、ノルトのことを兵隊ごっこをして遊んでいた頃の名残から隊長と呼び、兄のように慕うようになった。
一時期はゴロツキとして荒れた生活を送っていたようだが、現在は更生し大工として真面目に働いているらしい。

「もう大人なんだから隊長はやめろよ..」
「いいじゃないか隊長!」

...そうだ!
何かを閃めいたノルトは、そっとワンモハマドラディに耳打ちをした。

「お安いご用だぜ、隊長!」

威勢よく返事をすると、ワンモハマドラディは川のほとりで語らう二人の方へ向かい、そして強引にカーマの腕を掴んだ。

「どうも〜、楽しそうじゃなーいお二人さん!
お姉さ〜ん、僕と遊ぼうよ〜!」
「キャー‼︎ いきなり何すんのよ!」

ワンモハマドラディの手を振りほどこうとするカーマ。

「そ、その手を..
は、は、離せ!」

怖る怖るワンモハマドラディを制止しようとするキースの横腹に、ワンモハマドラディの激しい蹴りが飛んでくる。

「ぐふっ...‼︎」
「キース...‼︎」

「にいちゃんよう、まだ痛い目に合いたいか?あーん⁇」

容赦なく拳を振り上げるワンモハマドラディに、キースは土下座をしながらこう言った。

「か、勘弁してください...
お金なら、いくらでも差し上げます..!」
「だめだな!俺は女が大好きなんだ。
この女をよこせ。そうすりゃお前は助けてやる。」
「わ... わかりました‼︎
差し上げます!だから.. 助けて!
ひーっ‼︎」

キースはそう言い残すと、一目散にその場を逃げだした。

「キース‼︎ 嘘でしょ...」

唖然とするカーマのもとに、タイミングよくノルトが通りかかった。

「おい、そこの変なニワトリ頭!その手を放せよ!」
「ノルト...‼︎」
「なんだてめえ!ぶっ殺してやる‼︎」

..隊長、いくらなんでも変なニワトリ頭は言い過ぎだぜ...
そう思いながら向かってくるワンモハマドラディの攻撃を、ひらりとかわし投げとばそうとするノルト。
またワンモハマドラディもノルトの動きに合わせて派手に転び、そして一目散に逃げだした。

「ちくしょう! 覚えてやがれ..‼︎」
「ノルト‼︎
本当にありがとう...‼︎
ノルトが助けてくれなかったら... 私..!」



そして、二年後...


ノルトとカーマ、二人の子供ノルマが生まれてから、今日でちょうど半年が経とうとしていた。

「思えばこの二年間、いろんなことがあったよな...」

この二年間の出来事に思いを馳せながら、ノルトは今日も畑仕事に勤しんでいた。

「ちょっと、ノルト‼︎
こっちはノルマの世話で手いっぱいなんだから、
少しは家事くらい手伝ってよ‼︎」
「俺だって畑仕事に、近所からの頼まれごとに..いろいろと忙しいんだよ‼︎」
「はあ〜.. こんなに苦労するんだったら...
やっぱりキースと結婚した方がよかった..」

夫婦ゲンカに明け暮れる日々の中で、果たしてこれが他人の絆を引き裂いてまで手に入れたいものだったのか..?
自問自答を繰り返しながらも、一向に楽にならない生活に追われ畑を耕すノルト。

そして、その様子を遠くの木陰から見守るひとりの男がいた。

「持ってるねえ...
手段を選ばない.. 強い欲望.. 
いいねえ... 持ってるよ..!」

そう呟くと、男は一枚のカードをその場に残し、いつの間にか煙のように消えていた。

そう。
あの日ノルトの運命を変えることとなった一枚のカードを残して...
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