第8話


未知の世界に入り込もうとしている私。

咎める人は周りに誰もいない。・・・それはそれで何か悲しいな。

でも・・・咎めたって止まらない。いや・・・止められない。


「ねえ・・・。」

「ん?」


友達は何だか怯えたような顔で私に聞いた。


「野乃花は・・・気付かない?」

「え・・・何に?」

「この・・・誰かにずっと・・・見られている感覚。」


そう言った友達は、まくっていた袖口からむき出しの腕をさすった。


「感じないけど・・・?」

「うそ・・・絶対、見られてるって。」

「まさか・・・そんな訳・・・。」


私は教室を見渡し、どこかにカメラでも無いか探した。


「あ・・・。」


見つけた。

後ろの入り口付近の天井の角に、小さく取り付けられたカメラ。


「野乃花?どうしたの・・・?」

「見つけたよ。あんたの勘は、当たってた。」


っと、ここで、今まで私が喋ってきた友達の紹介。

この子は、駒井 明日香。

よろしくたのみます♪


「え?」

「ほら、後ろの天井。」

「あ・・・ほんとだ。」


ったく、誰がこんなこと。

ま、琴野だろう。・・・でも、何でこんな事をする訳?

卯月祭もそう、しかも、クラスを監視するなんて・・・。

何か、企んでる・・・?

黙り込んだ私の耳には、明日香が発する言葉なんか聞こえてやいなかった。


「野乃花、後ろ!」


第8話  end

第7話


「あんたは、何様のつもりなの?」


静かに言った私には、皆の視線が注がれている。憐れみ?軽蔑?私に対する気持ちが目線で表されて、イヤでも感じてしまう。


「自分のしたいような方向に事を動かして、皆を巻き込んで、それで、あんたは王女のように嗤って・・・、何が・・・したいの?」


視界が潤んで、崩れた。

いつの間にか泣いていたようだ。袖口で拭い、もう一度私が琴野に向きなおしたのを合図にしたかのように、先生が口を開いた。


「安崎、落ち着け。お前の気持ちは分かるが、もう決まった事だ。諦めろ。」

「すいません。カッとなってしまって・・・。」


口先では、そう言ってるけど、先生だって・・・。

それに、諦めろ?出来ない話だ・・・。私は諦めるつもりなんか無い。卯月祭が無理なら、バンドで。

そう、確率なら無限大。

私の気持ちは、落ち着くどころか、余計燃え上がって来た。


「本当に、すいませんでした。」


席に着くと、友達が話しかけてきた。


「野乃花、さっき、何があったの?」

「あのね・・・。」


その後の私の話を聞いて、友達は、ビックリしたような顔でこういった。


「あんた・・・やるね。」


その言葉が正しいのかどうかは分からなかったけど、なかなか励まされた。

このクラスのお金持ちは皆、琴野の味方だし、一般家庭の子達も何か洗脳?っぽい感じで、琴野に付いていく子もいるし・・・。


「でも何か、スッキリしたよ。」

「・・・野乃花はスッキリしたかもしんないけど・・・。」

「うん。」


言いたい事は分かってる。


「私たちは、どうすればいいの?」


そう。

それは、私も思っている事。

バンドで何とかするって言っても、まだ2人なんだし・・・。

琴野にとってはもう終わった事。

私たちにとっては、


まだ、未知の世界。


第7話   end



第6話


恐怖・・・これまでに味わった事の無い、限りない・・・怖さ。

皆が先生に詰問してる中、私は金縛りにあったように椅子から動けなかった。

横を向くと、2列先に座っている琴野は、嗤っていた。まるで、この事態を知っていたような、この皆が騒ぐのを、待っていたような・・・。

唇に微笑をたえて、にこやかに、琴野は・・・嗤っていた。

私は席を立ち、琴野の元へ向かった。


「琴野・・・。」

「何?野乃花・・・どしたの?」


いつになく優しい口調でこっちを向いた琴野。微笑をたえたまま。


「知ってた・・・でしょ?」

「何が?」

「卯月祭が・・・中止になること。」

「何言ってんの!私はただの生徒よ。知ってるわけ無いじゃない。」


そう言いながらも、少し戸惑ってるのが分かる。


「・・・本当のこと、言って。お願い。」


すると、琴野は私から目を離し、前を見据え、こう言った。


「ええ、知ってたわ。だって・・・こんなくだらない事、したくないんだもん。」


私は、琴野を見たまま、驚きを隠せなかった。足から、力が抜け、その場にしゃがみこんでしまった。


「野乃花、あなただってそうでしょ?こんな戯れ事、あなたもしたくないでしょ?」


この言葉を聞いた瞬間、戸惑いは消え、怒りが湧き上がってきた。

立ち上がり、何の迷いも無く、手を振り上げ、琴野の頬に平手打ちをした。

パンと音が鳴り、琴野は床に倒れた。

一斉に皆がこっちを向き、教室の時間が止まった。


「何するのよ!?」

「あんたは・・・何様のつもりなの?」


倒れた琴野を見下げて、自分でも驚くような低い声で私は言った。




第6話    end