最近時私は土の事を考えています。今春の日文研セミナーで「稲」をテーマに日本文化を考えると根本にあるのが稲作であって、主食としての「米」だけでなく住居や生活用具としての「藁」も稲の一部分である事を指摘しました。稲の先にあるのが「土」で惑星の中で地球だけに生命が発達したのは水があったからで水のお陰で地球上に地質時代が出来たのでした。土は岩石が風化して砂になった上に生命(有機物)の死骸が堆積して出来たものです。有機物の死骸が堆積して出来た地層に稲は根を張って成長して米を結実します。稲が米を結実するのは人間の為ではなくて種族の成長戦略だったのです。稲は一年生作物で毎年種子が発芽して季節の巡りと共に成長して結実して翌年の成長戦略の準備をします。同じイネ科の植物のススキは種子が落ち易く秋風が吹くと種子が播き散って繁殖します。唯一種子が落下し難い戦略を取ったのが米で、人間の都合に良かったのでした。生命が循環しながら種族を発展させる現象を「輪廻」と呼び仏教では「輪廻転生」とよびました。釈迦が王城を出て社会を観察して輪廻は様々な場面で人間に苦しみを与えている事実を観察して輪廻からの脱出を求めて修行しまあした。そして開悟します 「開悟」とは悟りを得る事で禅宗では自分自身が釈迦の体験を繰り返す事で開悟しようとするものです。江戸時代中期の仙厓 義梵(せんがい ぎぼん​​​​​​臨済宗は美濃国で産まれます。美濃国には曹洞宗の僧「鈴木正三」も生まれていますから美濃・三河は自由闊達な禅僧を輩出したのでした。寛延3年(1750)に生れた仙厓は19才の時に相模国永田の東輝庵(久良岐)で得度します。更に39才で博多の「聖福寺」」で住職になります。88才で遷化する迄多くの酒脱で飄逸な禅画を残しました。出光美術館に多く収容されています。「白隠/はくいん」と共に臨済禅の禅画家として評価されています。最近は個性や自由が尊重されるので「仙厓展」や「白隠展」は人気になっています。

仙厓の図桟には「これ食うて茶飲め」と書かれています中央の円は「円相」と云って輪廻を表現しているのでしょう。

此れは仙厓の犬図「ワンワン」でなくて「キャンキャン」啼いています

此れは仙厓の布袋図。七福神の布袋は仙厓自身でしょうか?お腹が京都のふろふき大根の様に見えます

此れは白隠の達磨図円相の中央に達磨大師が描かれています

仙厓や白隠の禅機画を観ていると雪舟の達磨図(国宝)に思いつきます。屹度彼等は雪舟の大作を観て常に心を戒めていた事でしょう。特に白隠は強い意志を有した禅僧でしたから常時時代を切り開いた雪舟を想っていた事でしょう、下の達磨面壁図を理想としていたと思います。

雪舟の大作「達磨面壁図」達磨の弟子にして欲しかった慧海は自らの覚悟を示す為、腕を切って達磨に差出します。

此方は白隠の達磨面壁図慧海を模した白隠は腕を切って座禅に取り組んでいたのでしょう

室町時代雪舟に始まり江戸時代の仙厓白隠の禅画において宇宙が輪廻転生している事、輪廻に自らを委ねる事が開悟である事を描きました。昨今の科学特に天文学や地質学は禅僧の認識が正しい事を証明しています。138億年前の宇宙誕生(ビッグバン)から3分の2経過した今から46億年前に太陽系に地球が誕生しました。。この数十億年に渡る地球の過去を考察する場合、地球誕生から、月の形成、海洋誕生、大陸の形成分裂、造山運動・火山活動、巨大隕石の衝突、気候変動などの天文学的・地学的な絶対年代区分とは異なった、時代を発掘された化石や地層等から相対的に区分する手法が用いられており、これを地質時代と呼びます。

火星表面や月面探査写真は地球誕生時の姿を推測させます。

此れは火星表面の写真で岩石にサファイアが含まれること地殻の下に水(氷)が潜んでいる事を教えてくれました。

天体観測や火星探査の結果現代の地球は岩石と水、アンモニア、メタンなどの水素化合物が凝集した上に地球は大量の雨が降って岩石が固体岩石が風化砂になり更に植物が繁茂して動物が進出します。そうした生物の死骸が地表に積もって地層に堆積しました。地層は地質時代の証拠でありました。地球の過去は岩石や地層の中に封じ込められており重にも亘る地層は球の過去の事件やその時代の生物などが記録されている。これらの地層は、含まれる岩石や化石の放射年代測定により年齢を推定することが出来る。こうして地層の頁を紐解き、岩石という原子時計を測り、含まれる化石を見出すことにより地球の過去を知ることが可能となる。地質時代は地球の誕生から現在に至る迄であり、記録の残っている時代を有史時代(歴史時代)と呼びます。特に文字に記録されていない時代を先史時代と呼びます。人類の誕生は地質時代であり100万年昔でした。地質時代の基準年表は福井県三方五個の年縞(ねんこう)になって居ます。

三方五胡の湖底の地層が地質時代の基準物差しになっています

三方五胡の湖底には有機物の死骸が堆積しています。地質時代の地球の表面はこうした有機物が堆積して新しい生命の揺り籠の役割を果たして来ているのです。そのお陰で地球の過去(歴史)があって現在があって未来に進んで行くのです。偶々釈迦はインドの王族に生れて世間を観察して輪廻を確認して、修行を積んで悟りを得ました。禅僧が円相を思いついた様にインド人は数学の「零/ゼロ」を思いつきました。ゼロの反対は無限大です。ゼロを懸ければ総てはゼロになってしまいます。逆にゼロを続けて懸ければ無限大になります。ヒマヤラの高山から流れ出した水が大河ガンジス河になって穀物や人間の命を育む様に過去・現在・未来に永劫につづきます。でも無限大は無い様に私達の命はいつ死ぬか判りません。ゼロを懸ければ死んでしまいます。始皇帝は永遠の命を求めましたが適いませんでしたし、秦も短命でありました。

始皇帝は永遠の命を求め.「兵馬俑」をつくりましたが自分自身も秦も短命でした

                               【了】