昨年は明治に「東京遷都」150年でした。令和元年でもあり、秋には「大嘗祭」も行われて「江戸城再建」機運も盛り上がっていました。建築費は350億円経済効果は年間入場料収入150億円に加えてイン・バウンド効果も加算すれば絶対実施すべき‥‥、云った主張で日経では様々に取り上げていました。唯一水をかけたのは宮内庁で「総て経済効果で判断すべきではない」指摘していました。現状維持が宮内庁の役人の発想ですから、致し方ないにしても経済優先の安倍内閣で江戸城再建は現実味を増していました。今日「新型コロナ封じ込め」を最優先課題にしている状況では江戸城再建は「夢のまた夢」です。

                     再建江戸城の推測図出典:https://readyfor.jp/projects/edojo-ar江戸城再建Pj

昨年11月大嘗祭の宮を見学して東丸公園に向いて歩きました。天守閣の石積みの脇を通って東京駅に歩きました。年末に安倍首相が「大阪城にエレベーターを付けたのは間違いだった!外国人記者に向けてジョークを言いました。でも外国人記者はジョークとは思わず「身障者に対して思いやりが無い!」批難の集中砲火を浴びました。安倍首相には江戸城再建Pjがあって、再建の歴史的意義に沿って「木造で再建」を考えていたのでしょう。大阪城が民間ベースで「通天閣」と同じ発想で建築されたのに対し、江戸城を若し建てるなら「国家Pj」で学者に文句を言わせない建物にする積もりだったのでしょう。

これが「振袖火事」で焼失した江戸城天守閣の石積です。

此れが再建江戸城の骨格図です。木造在来工法である事エレベーター等の設備は用意されていません:出典https://readyfor.jp/projects/edojo-ar

歴史のある都市は何処でもランドマークになる建物が在ります。ロンドンにわテームズ川河畔にある「ロンドン塔」や「シティータワー」が市民議会を創設した英国の誇りになるランドマークでしょうし、パリではセーヌ川の河畔にあるノートルダム寺院や凱旋門やエッフェル塔等でしょう。そのノートルダム寺院が昨年焼失してしまったので。「マクロン大統領」には是非を考える時間は在りません、喫緊に課題を克服しなければ大統領の椅子を失うでしょう。

昨年パリのランドマークノートルダム寺院が焼失しました。再建はフランスの国威をかけた事業です。

写真はロイターhttps://jp.reuters.com/article/france-notredame-idJPKCN1RR24E

日本に旅して来た外国人旅行客は東京駅に降り立って皇居前広場があってその奥の緑に驚くでしょう。バッキンガム宮殿のような荘厳な宮殿はなく、天皇は平屋建物にお住まいです。「日本の国王は緑に包まれて木と同じ高さの住居に住んで庭先で田植えをして蔵で蚕を飼育されている」最近の用語で云えば「木造平屋の住居でエコ生活を営んで居られる・・・・・

ソモソモ江戸城焼失は振袖火事の延焼によるものでした。振袖火事は明暦6年「1657年3月2日」に始まりました17歳で夭逝した「お菊」を憐れみ葬儀を営みます。納棺を終えると両親は娘の為に用意した振袖をかけてあげます。振袖をかけた棺箱を燃え盛る火に乗せようとすると振袖が空に舞ってしまい、大火が起きてしまったのでした。焼死者は10万人と云いますから関東大震災を超える大惨事でした。

時の将軍は徳川家綱でしたが実権は老中「保科正之」が握っていました。保科正之は天守閣再建よりも江戸市中の防災都市造りに邁進します。道幅を広げ広小路を設け耐火屋根にします。既に着工していた「玉川上水」に続いて「大江戸大改造」に着手したのでした。

振袖火事(明暦大火)の図。出典は予備校http://jitsuryoku.jp/news/blog/20282

保科正之像(狩野探幽筆出典ウキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/保科正之

我国は明暦の大火の後も天災や人災が続きます。氷川清談(勝海舟)では維新政府の治水工事を厳しく批判しています。「維新政府の堤防工事は基礎工事を軽視しているので堤防は簡単に決壊してしまう。その上に地租(税金)欲しさに二重堤防の内側にも地租をかけてしまったので溢れた水は行き場を失って田畑市街を潰している・・・・・・」

維新政府同様に今次の災害は「想定外であった・・・・・」言い訳は上手でした。昨年千曲川が決壊して飯山辺りは被害甚大でした。従来なら信濃川の下流の長岡や新潟が洪水になったのですが、上流で決壊したので新潟も長岡も被害は軽微でした。と云っても長岡も新潟も洪水対策は充分で分水路が用意されているのでした。分水は江戸城建築に際して家康が荒川の本流を利根川に回して中川荒川隅田川に分水したのが始まりです。家康は洪水対策よりも江戸周辺の湿地を乾燥地にするのが目的だったのですが、結果的に洪水対策になったのでした。

日本列島は天災の吹き溜まりです。台風に火山爆発に地震に津波に・・・・世界中の天災は日本列島は避けられません。でも天災は福の裏表です。火山は温泉をくれますし。洪水は豊穣の異常時の現象です。「何時でも天災・人災の用意を怠るな!」教えを尊ぶならば再建したい「江戸城天守閣」ですが保科正之の教訓を身近に置く意味で再建しないでおきたいモノです。さすれば「東電nのの原発事故」も起こらなかったでしょう。                                           【了】