東京の街を走るタクシーで人生を振り返る――そんなテーマの映画 『TOKYOタクシー』 が2025年に公開されました。
実はこの映画、フランス映画 『パリタクシー(原題:Driving Madeleine)』 のリメイク作品。
パリと東京、それぞれの都市が物語に深みを与え、観る者に人生や街の魅力を感じさせてくれます。
この記事では、両作品を比べながら、映画としての面白さをサクッとまとめてみます。
1. あらすじをざっくり比較
パリタクシー
タクシー運転手シャルルが92歳のマドレーヌをナースホームまで送る依頼を受けます。
しかしマドレーヌは「思い出の場所を回りたい」と希望。
パリの街を巡る中で、彼女の過去や戦後の記憶がフラッシュバックで描かれます。
二人の間に心のつながりが生まれ、静かに感動するロードムービーです。
TOKYOタクシー
運転手・宇佐美浩二が85歳の高野すみれを乗せます。
すみれの希望で東京や葉山の思い出の場所を巡り、道中で彼女の人生が語られます。
浩二もまた、自分自身の人生や家族、将来について考えを深めることに。
山田洋次監督らしい温かみのある人間ドラマと都市描写が特徴です。
2. 都市描写の違い
パリでは街並みがマドレーヌの思い出と直結し、フラッシュバックと重なって街自体が“人生の舞台”になります。
黄金色に輝くパリの光景がノスタルジックで美しく、観客はまるで旅をしているかのような感覚に。
一方東京では、浅草・渋谷・横浜などの風景が登場人物の記憶とリンクします。
日常的なタクシーの車内が、非日常の人生ドラマを展開する舞台として生き、都市の変化や記憶の層を自然に感じられる演出になっています。
3. 登場人物とテーマ
パリタクシーでは、シャルルは経済的・精神的に疲弊していますが、マドレーヌとの出会いで再生のきっかけを得ます。
マドレーヌは92歳で、戦後の社会や家庭問題と密接に結びついた人生を歩んできました。
二人の交流を通して生まれる友情や絆が、映画全体に温かみと深みを与えます。
TOKYOタクシーでは、浩二もまた人生や人間関係を考え直す旅を経験します。
すみれは85歳で、個人的な思い出や人生の“見納め”をテーマに東京を巡ります。
二人の関係性は人生観の共有や心のつながりとして描かれ、日本的な温かさと都市の魅力が感じられます。
4. 映画としての魅力
- 都市がキャラクターになる
タクシーという日常の乗り物を通して、街そのものが物語の舞台として生きる。 - 人生と記憶の重み
老年の登場人物が過去を振り返る旅は、観る者に共感と余韻を与える。 - 異文化リメイクの面白さ
原作のテーマを日本文化・東京の都市性に置き換え、新しい感動として再構築。 - 温かい演出
倍賞千恵子・木村拓哉の演技で、人生ドラマに深みと温もりが加わる。
5. 観たあとに残るもの
『パリタクシー』も『TOKYOタクシー』も、タクシーという日常的な空間を通して人生の深さを描きます。
観たあとには、自分自身の人生の“ドライブ”を振り返りたくなる――そんな余韻が残る作品です。
都市と人、過去と現在、老いと若さが交錯するロードムービー。
週末の映画タイムにぜひ体験してみてください。
