東野圭吾の新シリーズとして大きな期待を背負って公開された『ブラック・ショーマン』。公開3日目の日曜日、横浜の劇場は幅広い世代の観客で埋め尽くされていました。
まず印象的だったのは、冒頭を飾るテーマソングです。新シリーズにふさわしい力強さとミステリアスさを兼ね備え、作品全体を「ただの推理劇」ではなく「人生の物語」へと昇華させる余韻を与えていました。
謎解きの要素は東野作品らしく巧妙で、観客の推理心を刺激します。派手なトリックに頼らず、登場人物たちの心理や関係性の中に巧みに伏線を織り込む手法は健在で、ラストに向けて少しずつ解き明かされていく過程に引き込まれました。
しかしこの映画の真髄は、ミステリーの枠を超えた「父と娘」の物語にあると感じました。事件を通して描かれる親子の絆は静かに、そして確実に胸を打ち、気がつけば涙を誘います。
「人生のショータイムは思ったより短い」――映画が残すこの余韻は、エンターテインメントでありながら観客自身の生き方にも響いてきます。ミステリーを観に来たはずが、最後には人生のはかなさと温かさを考えさせられる、そんな作品でした。
シリーズの今後にも期待したくなる一作です。