2000年当時の私は、粒状性を極限までなくしてハーフトーンを豊かに表現するプリント技法に挑んでいた。

そこで目を付けたのは、当時コダックから発売されたばかりだったT400CN(現在生産中止)と言うフィルムだった。C-41プロセス現像(要はカラーネガと同じ)で、銀塩でなくカラーカプラーでモノクロを表現するISO感度400のフィルム。

当時流行したセピア写真のために開発された単色のカラーネガ。よってベースの色は通常のカラーネガと同様オレンジ色(実はここが落とし穴だった)。

類似のスペックでイルフォード(中外製薬)のXP2があるが、こちらはあくまで同社のマルチグレードペーパーでのモノクロプリントを前提としていて、ベースはモノクロと同じ薄紫である。

つまりT400CNのフルパフォーマンスを引き出すなら、マルチグレードペーパーが最適なのだが、手持ちの引き伸ばし機は旧来の号数印画紙専用、フジとラッキー。

本来号数紙専用機では、T-MAXやトライパンなど通常のモノクロフィルムを使うのがセオリー。セピア用のフィルムは理論的でない。しかし私は強引にフジブロ2号~3号で引き伸ばすことに挑戦した。

幸いフィルム現像自体はラボ任せに出来たため手間は省けたが、印画紙・機械とのマッチングが未知数のため暗室作業は困難を極めた。

ストレートだとあまりにもネムい。一箱20枚のフジブロ3号(四切)から、一晩格闘して1枚しか上がらない日もあった。液の濃度や温度を微妙にアレンジしたり、画に応じて2号と3号を使い分けたりあの手この手。

Chaos and Creation in the Backyard-110725_1448~01.jpg
(当時作成した個展のポスター)

とにもかくにも60枚のプリントを作成、開催に漕ぎ着けた。単写真としてはまずまずでも、組んでライトを当てるとコントラストがバラバラで、先輩からかなりダメ出しをされた。

とはいえ個展自体は好評で、後にコントラストの合わないプリントを焼き直し、旧大谷分校でのカットを新たに加え、ハンガリーやルーマニアでも開催した。抜粋はペンタックスファミリーのグラビアを飾った(先の記事参照)。

ちなみにその後、フィルムをXP2にスイッチして混乱はようやく終息。T400CNをプリントする際は、ラボのセピアプリントを出来るだけ温黒調に注文することで解決した。

この時の無茶な実験が今の私の暗室技術を支えている。