くどい話の前に、収録曲「グッド・バイブレーションズ」(1966年全米1位)のライブ映像を見ていただこう。

当然だが療養中のブライアンはステージには居ないのだが。


さて、この曲がいかに素晴らしいか分かっていただいた上で本題である。


①元となる音源は、2004年度盤「スマイル」に近い各種ブート及び公式未発表音源集「GVボックス」のディスク2後半の収録バージョンを優先する。2004年度盤に取り上げていない曲は、当初の編集意図を汲んで一番後のバージョンを配置する。曲順も基本的には2004年度盤を優先する。


②一番問題となるのは「英雄と悪漢」の編集作業である。

前奏曲となる「アワ・プレイヤー」は「GVボックス」の「英雄と悪漢・セクションズ」の中から「ジー」とホーンセクションだけを取り出し、後に繋げる(これは2004年盤と同じ)。

「英雄と悪漢組曲」だが、私はまず基本バージョンを「GVボックス」の「イン・ザ・キャンティナ」とし、派生曲「ヒー・ギブス・スピーチス」「ウィズ・ミー・トゥナイト」「バーンヤード」「アイム・イン・グレイト・シェイプ」「ドゥー・ユー・ライク・ワームス」「オールド・マスター・ペインター」の順に繋げる。合い間を埋めるのは「英雄と悪漢・セクションズ」を「バイシクル・ライダーのテーマ」「HVコーダ」などに細分化したトラックである。この作業で完成したトラックは、締めの「キャビネッセンス」と合わせて「20分バージョン」を念頭に作成している。


③もう一つ大きな問題、「ジ・エレメンツ」だが、私は従来の解釈どおり、「地」=「ベガ・テ-ブルズ(ベジタブルズ)」、「風」=「ウインド・チャイムズ」、「火」=「ミセス・オリアリーズ・カウ」、「水」=「アイ・ラブ・トゥ・セイ・ダ・ダ」と認識している。これをそれぞれ独立した曲と捉え、リンクトラックとして「ホリデイズ」を地~風の間に配置している。

また、「火」の後の「再建」をイメージするとされている「フライデー・ナイト」(大工作業の音)だが、2004年の解釈どおり組曲の前奏曲の扱いとし、「火」の後には配置しない。


④アルバム最終曲が「サーフズ・アップ」か(こちらの意見が多いことは熟知している)、「グッド・バイブレーションズ」なのかは意見が分かれるが、私は2004年度盤の編集を重視する立場から最後に置き、「クロージング・ビット」(リプライズ)を続けている。ただし、「クロージング・ビット」自体は「グッド・バイブレーションズ」をB面の最初に持ってきた場合のリプライズなので、二曲繰り返すくどさは払拭し得ない。そもそも、「グッド・バイブレーションズ」は、「ペット・サウンズ」より後、「スマイル」セッションの前に製作、シングルとして発表されていて、新曲にヒット性を期待しなかったキャピトル側に無理やり収録を押し付けられたものである。


これを念頭に「キムキム版」を作成したわけだが、もちろんこれもファンの間ではひとつの案に過ぎない。

当のブライアン本人も曖昧なものが、どうしてファンによって確定できようか?

ブライアンが答えとして発表した2004年盤は一つのメルクマールとはいえ、ブートの影響を否定し得ない。

弟のデニスもカールも鬼籍に入った今となっては、非協力的だったマイクからの証言(ブライアンは2004年盤の「グッド・バイブレーション」で、決定稿であるマイクの歌詞をオミットしたのだ!)など、得られるわけもないので、メンバー筋からの情報は期待できない。

おそらく大まかな構想を知っているのは、詩を書いたヴァン・ダイク・パークスより居ないのだ。彼自身も2004年度盤を完成とみなしているので、当時についての証言は望めない。


もっとも、正確なことがわからないから、この作業は楽しいともいえるのだ。