お袋がまだ健在だった頃、私はうつとアルコール依存、それに伴う胃潰瘍の吐血で入退院を繰り返す最悪の状態だった。正直、命の危機も何度かあった。

お袋はビートルズやビーチボーイズのファンで(そういう年代だ)、頼まれて良く聴かせていたものだった。

ブライアンの話をすると、「お兄ちゃんも、いつかブライアンみたいに復活できる日が来るよ」と勇気づけてくれたものだった。

何とか社会に復帰できた時には、もうお袋も親父も亡くなってしまっていた。

最早両親には報告のしようもないが、ブライアンの再起には、どれほど勇気づけられたかわからない。

人間何度でも再起できる、リセットではなく、挫折を糧に生きること。ブライアンはそれを体現する稀有なアーティストである。

ファンならずとも聴いて欲しい、そう思う一枚。ヒューマニズム溢れる短編小説(実際38分あまりのアルバムだ)を読むような清涼感に満たされること、請け合いである。