最近、配達が中心市街地や官庁に変わった。

それまでは、自宅周辺と山間地の団地だった。

仕事が急に楽になった。朝起きる時間も遅くて良いし(新聞は私の家に直に卸されているのだ)、あまり着込まなくて良い。何より朝から体力を無くしてしまうこともない。

気持ちに余裕が出て来たのかな?

ふと、配達中に市役所の窓に映る自分をぼんやり見た。

「誰(だ)や、こいつ?」

中肉中背、やや腰の曲がった貧相な初老の男がそこにはいて…、一見自分じゃないみたいだった。

「俺(わ)って、こんなんだっけか?」

ああ、そういえば来月私も39歳になる。それにしては老け過ぎだよな。どう見ても50代だ。

10年前は確か、オレンジのマッシュルームカットと黒縁の眼鏡、カラーワイシャツにダブルのスーツの割とこざっぱりしたリーマンじゃなかったっけか?

「同一人物でねぇな…。何でこうなったんだべ?」

で、ふと我に帰る。

「お前(オメェ)も随分(ずんぶ)苦労したんだな」

と、自分の姿に声を掛け、自転車に乗り込む。

でもね、今の自分も嫌いじゃないんだよ。姿は醜くなっても、当時よりは人間的には成長しているから。