以前、この番組でも紹介したこちら)、3月7日に岩手県釜石市のシープラザ遊で開催された

MOBSTYLES 15th Anniversary TOUR "FIGHT&MOSH"~えっ!GRAACAも15周年だったんだ!こりゃ奇遇だね!!!15周年祭~(長いので以下、釜石ライブで統一)。

 

出演バンドは10-FEET、BRAHMAN、the telephones。

もちろん釜石でのライブは初めて。ライブハウスやフェスでは大人気のバンドだが、地上波のテレビには滅多に出ないので知名度の部分でちょっと心配。釜石ライブに人は集まるのだろうか? 筆者はスタッフでもないのに勝手に心配していた。

が、その心配は稀有に終わった。

同ツアーのキックオフとなるライブには、市内はもちろん、岩手県内や全国から1000人近く集まり、激盛り上がりとなった。このブログでは3月7日の釜石ライブの様子をリポートする。4000字超の長文だが、時間のある人はじっくり読んでほしい。



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本編の前に、釜石ライブ会場のシープラザ遊について簡単な説明をしておこう。

JR釜石線の釜石駅から徒歩2分のところにあり、通常は味覚まつりなど市内の各種イベントに使われている。

4年前の東日本大震災の際は津波による被害を免れ、全国から寄せられた支援物資を置く場所としても使われていた。

同所ではこれまで、復興支援のコンサートやFMラジオの公開収録など行われていたがすべて無料。今回の釜石ライブのようにプロのロックバンドによる有料ライブが行われたのは、震災前後でもおそらく初めて(のはず)。



11:00~ 開場

会場の外には各バンドや東北ライブハウス大作戦のグッズを着用している人を多数見かける。ライブハウス界隈ではよく見かけるが、釜石ではなかなか見ることがない光景だ。テント外には、浜焼きホタテや激辛ホルモン、メカブとイクラの小丼など釜石のグルメを提供する屋台が出店。ライブ開始前にも多くの人が釜石の食を味わっていたようだ。会場内のSEは釜石虎舞。テントの外にいても聞こえてくる太鼓と笛と掛け声のリズムは釜石市民のDNAに刷り込まれている。筆者が会場入りした時は鵜住居青年会が虎舞を披露していた。



12:00~ あいさつ

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MOBSTYLES(モブスタイル)の田原104洋さんと、今回の釜石ライブ開催に尽力した釜石市の格闘技団体・GRAACA(グラアカ)釜石ベースの平野仁さんがステージに登場。田原さんに続き、平野さんが「こんなに人が集まって嬉しいです。今日は楽しんでいって下さい」とあいさつ。モブスタイルとグラアカの15周年記念とライブの成功を祈念して、平野さんによる15発ミットキックを披露。リズムをとれずグダグダになってしまう場面もあったが(笑)何とか成功。ステージ下手には出演者の名前が書かれた“めくり”が置かれており、グラアカの子供たちによる手書き。この後のライブ開始の際には随時、子供たちによるめくりが行われた。



12:05~ オープニングアクト・E.O.P

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大槌町出身の4MC&1DJによるヒップホップグループ。曲の合間にフリースタイルのMCを入れつつ、被災したこの地でヒップホップを続けることを綴ったリリックとともにストイックなステージで会場を盛り上げた。



12:35~ オープニングアクト・バリカンフィッシュファクトリー

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ボーカルにリズム隊とギター×2の5人組ロックバンド。ラウドなサウンドと絶叫ボーカルで激情を叩きつける。ちなみに、バンド名の由来は床屋や釣具店のメンバーがいるから。ライブ中盤ではE.O.PのMC2人とのコラボソングも披露。ヒップホップとラウドロックの化学反応が爆発、会場内の沸点をさらに上げた。



13:22~ the telephones

今年末で活動休止をすることを発表したテレフォンズ。実は筆者は2年前にテレフォンズにインタビューをしておりこちら、釜石でもぜひライブをやってほしいと伝えていたが、本当に実現するとは!

ノブこと岡本伸明(Syn&DANCE)は生まれが釜石で、親戚が激辛ホルモンでお馴染みの新来軒。松本誠治(Dr)の両親も釜石在住と、実は釜石市にゆかりのあるテレフォンズ。しかも彼らにとって今年初のライブ。そりゃ、気合いも入るでしょう。

ステージの下手にはミラーボールが設置され、オープニングSEの「happiness, happiness, happiness」が流れ、会場中ハンドクラップ。

石毛輝(Vo,Gt,Syn)の「釜石!DISCOしようぜ~」の金切り声と共に「Monkey Discooooooo」。歌詞に♪かまいしシティ~♪も入れ、歓声が広がる。間髪入れず「HABANERO」。3月18日発売のベスト盤に収録された新曲「Say DISCO」もいち早く披露され、ノブのダンスもキレキレ。長島涼平(Ba)も満面の笑みで演奏している。

MCで石毛は「ライブに呼んでくれてありがとうございます。FIGHT&MOSHですが、ダンスフロアーにしてやりますよ」と宣言し、「kiss me, love me, kiss me」「D.E.N.W.A」を演奏。「I Hate DISCOOOOOO!!!」では会場中DISCO連呼のカオス状態(笑)。二度目のMCでノブが「カマイシ」のコール&レスポンスで盛り上げ、ダンスタイム突入。からの「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」

ラストナンバーは彼らのアンセム「Love & DISCO」。四つ打ちのリズムが鳴り響き、会場中がピースフルな空間に包まれる。石毛は「釜石が好きです。ありがとうございました、テレフォンズでした」といってステージを降り、約40分のライブはあっという間に終了。



14:40~ BRAHMAN

オープニングSEのブルガリア民謡の「お母さん、お願い」が流れると、会場中で祈りのポーズが捧げられる。楽器隊のKOHKI(Gt)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)がセットすると「初期衝動」のシンバルから轟音のイントロに乗せてTOSHI-LOW(Vo)が登場。そこからは「The only way」「賽の河原」「SEE OFF」「BEYOND THE MOUNTAIN」を矢継ぎ早に演奏。沸点が高まったオーディエンスが次々とモッシュ&クラウドサーフを繰り広げる様は、快楽&混沌の空間。

オムニバスアルバム極東最前線3に収録された「汀に咲く」のほか、「BASIS」「GREAT HELP」「A WHITE DEEP MORNING」も披露。「鼎の問」では歌い終わった後に心臓に手を当てて観客への敬意を示す。ヘビーなギターリフから始まる「警醒」ではTOSHI-LOWがオーディエンスの頭上に突入し、更に会場の沸点を高める。

と、ここまで見ていて気づいた。TOSHI-LOWがMCしていない。「BRAHMAN始めます」も言っていない。実はTOSHI-LOWは、今回のツアー(Tour -Hands and Feet 7-)でMCをしないことにしていた。だが、ライブの前日に釜石入りした際、グラアカの平野さんに何かリクエストあるか?と尋ねたら「はい、MCお願いします」(笑)と頼まれ、結果MCをすることになったそうだ(笑)。釜石ライブ、貴重なMCです(笑)。

ホテルから約8キロ先のグラアカの道場まで走り、子供たちとともに練習をした時の様子を話したほか、テレフォンズと10-FEET・TAKUMAへの愛あるDIS(笑)とともに神妙に語り始めたのは、東日本大震災以降の心情について。「強さって何だ? 力って何だ? と考えていた時、力をもらったのが釜石の子供たち(通称・釜石の奇跡)だった。みんな強い。だからもっと強くなりたい。テレフォンズ、再開したら釜石で(ライブ)やれ!(筆者の前にいたテレフォンズのメンバーもガッツポーズで応えていた!!) 10-FEET、京都(大作戦)で勝負すっか! MOBSTYLES、今日はおめでとう」と激と感謝の気持ちを述べ、会場から大きな拍手が送られる。

「変わらない日常、変わらない世界、変わらない自分。本日晴天の・・・」と静寂の中始まったラストナンバー「霹靂」。後半にかけてのカタルシスに打ち震えながら、アウトローの残響音とともにメンバーがステージを去り、約50分のライブが終了。



16:07~ 10-FEET

取材のため一旦会場を出て、再度入るとステージ上にはテレフォンズのメンバーが。どうやら、10-FEETの呼び込みを行っていたようだ。

オープニングSEの「ドラゴンクエストⅢ~そして伝説へ」が高らかに鳴り響くと、待ちわびていたオーディエンスがタオルをステージに向けて掲げている。大きな歓声に迎えられたTAKUMA(Vo&Gt)、NAOKI(Ba&Vo)、KOUICHI(Dr&Cho)の3人。「釜石~!」とTAKUMAがシャウトしライブスタート!と思いきや、ちょっとしたミスがあり(笑)仕切りなおして「JUNGLES」からリスタート。オーディエンスもメンバーに負けないようOi!Oi!コール&モッシュ&クラウドサーフ、そしてシンガロングで応える。ライブの定番曲「VIBES BY VIBES」「STONE COLD BREAK」の投入でさらに会場の沸点は上昇。

MCで「釜石の人」(全体の1割)、「岩手の人」(全体の半分)、「それ以外の人」(同)と手を上げさせ、今回のライブの比率を確認できた。

「MOBSTYLESのテーマ曲やろうか」と言って演奏したのは、メジャーデビューシングル「nil?」のカップリングに収録されている「MOB ~45 BOMBSTYLES~」。今回のツアーでは各会場で演奏されているようだが、結構レアだったりする(かも)。

「1sec.」後のMCでTAKUMAが「(TOSHI-LOWが自分に対して)クチビルおばけとか言っているが、自分は筋肉バカのくせに(笑)」と愛あるDISを放ち、「俺は知っている。BRAHMANがツアー2本目で心が折れそうになったと話していたことを(笑)。俺は知っている。クチビルおばけとステージで言っていたけど、ステージから降りたら『本当は好きだよ』って話したことを(笑)。10-FEET、後半始めます(笑)」とTOSHI-LOWの激似MCで会場大爆笑。

そして後半の曲は「その向こうへ」。ライブで聞くと改めて力強いメッセージが込められていることを再確認する。TAKUMAがギターを鳴らしながら「10-FEETのライブがあっと言う間に終わったと感じたら、ライブが良かったという事です。これからも釜石、岩手、東北を盛り上げていこうぜ!」と叫び、「蜃気楼」「RIVER」を全力で演奏し本編終了。

しかし、これでは終わらずアンコール。「goes on」で会場中皆ジャンプし、約50分のライブで完全燃焼した。





10-FEET、BRAHMAN、the telephonesと各バンドのスタッフ。地元のE.O.Pとバリカンフィッシュファクトリー。ライブ開催に尽力したMOBSTYLESの田原さんとグラアカ釜石の平野さんとそれぞれのスタッフ、会場を提供してくれたシープラザ遊の管理者(釜石市)。その他多くの方々、そしてライブに参加したあなたのおかげで無事に釜石ライブは終了した。全国から訪れた人たちに、釜石の存在を知ってもらう貴重な機会になった。そして新たな繋がりができた。またいつか、この地でこんな素敵なライブが開催されることを期待したい。


TEXT&PHOTO 千葉東也(エフエム岩手釜石支局)