【今週の裏解説とは・・・】


釜石支局のチバさん(大滝詠一を知ったのは今から23年前。一番好きな曲は「呆阿津怒哀声音頭」)が、「釜石やっぺしFM」で流した曲の基本情報、解説を書きまくる治外法権コラム。注目すべき新譜が発売されると勝手にライナーノーツを書く時もある。



と、いう訳で。


12月3日の放送で流した曲は


シリア・ポール「Whispering」、


竹内まりや Duet with大滝詠一「恋のひとこと~SOMETHING STUPID~」、


大滝詠一「ブルー・ヴァレンタイン・デイ」(Single Version)でした。


いずれもゲストの佐々木諭さん(現在66歳、高校時代の大滝さんと同級生)からのリクエスト曲です。



今回は12月3日に発売された大滝詠一のオールタイムベスト盤「Best Always」の勝手にライナーノーツです。


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通常ベスト盤というのは、アーティスト自身のキャリアをまとめたもの(再レコーディングする場合もあり)、契約の都合によるレコード会社の意向(実はアーティストが関わっていないベスト盤もかなりあるのよ)といった要素がありますが、何といってもそのアーティストに興味を持った人が最初に買いやすい入門編的要素が大きい。


そういう意味では、今回のベスト盤「Best Always」は、大滝の71年のソロデビューシングル「恋の汽車ポッポ」から2003年に竹内まりやとデュエットした「恋のひとこと~SOMETHING STUPID~」までの32年間のキャリアをまとめており、大滝初心者にもお薦めの1枚である。


97年のドラマ「ラブ・ジェネレーション」の主題歌「幸せな結末」、81年発売のアルバム「A LONG VACATION」に収録され、CMでも起用されている「君は天然色」、「さらばシベリア鉄道」なども収録した2枚組35曲(初回盤は10曲のカラオケ付き)。


このベスト盤はシングル曲を中心に収録されているが、「青空のように」「A面で恋をして」「バチュラー・ガール」など13曲がシングルバージョンで収録されている。



個人的に気になった曲と簡単な解説を。



DISC1 2曲目「12月の雨の日」(Single Version)


大滝が在籍していたロックバンド・はっぴいえんどの71年発売のデビューシングル。


私はアルバムバージョンしか聞いたことがなかったのだが、大滝のヴォーカルがちょっと違っている(2番の♪風がふいにおこる♪ と ♪ぼくは視ている♪の部分)。間奏とアウトローのギターも左右にうねりまくっている。



DISC1 15曲目「ブルー・ヴァレンタイン・デイ」(Single Version)


77年発売のアルバム「NIAGARA CALENDAR」に収録。翌年にシングル・カットされ、山下達郎もストリングス・アレンジに関わった隠れた名曲。タイトル通り、ヴァレンタインデーに好きなあの子からチョコレートをもらえなかった男の子の切なさをエルビス・プレスリーばりに甘く歌い上げた隠れた名曲。



DISC1 18曲目「夢で逢えたら」


77年にシリア・ポールに提供した楽曲。吉田美奈子やラッツ&スター、キンモクセイなど多くのミュージシャンがカバーしており、同曲は大滝による未発表のセルフカバーバージョン。今年1月に行われた大滝の葬儀の出棺時に流されており、待望の初CD化。ドラムのイントロが流れた後に入ってくる甘い大滝の声に、何とも言えない甘酸っぱい青春の記憶がよみがえる。



DISC2 13曲目「夏のリビエラ~Summer Night in Riviera~」


82年に森進一へ提供した「冬のリヴィエラ」を英語詩でセルフカバー。英語詩にしたことでサウンドがまず耳に入り、大滝の爽やかな英語詩の歌声と合わさると、森進一とはまた別の音像を感じる。個人的には小林旭に提供した「熱き心に」の英語詩のセルフカバーがもしあったら聞いてみたいな。



DISC2 17曲目「恋のひとこと~SOMETHING STUPID~」


竹内まりやが2003年に発売したカバーアルバム「Longtime Favorites」に収録。原曲はフランク・シナトラ&ナンシー・シナトラ親子によるデュエット。今回流したシリア・ポール「Whispering」(ベスト盤未収録)でも大滝はデュエットしているが、実は女性との声にもマッチしていることが再認識できる。もちろん竹内との声の相性もバッチリだが、結果的に同曲が大滝にとって最後の公式レコーディングになった。



なお、ベスト盤のブックレットにはNIAGARATRIANGLEで共演した山下達郎、伊藤銀次、佐野元春、杉真理と竹内まりやのコメントも掲載されている。どんな内容かは買ってからのお楽しみ。


 


発売20周年や30周年記念の再発盤(ボーナストラック入り)が発売されて聞いて昔はよくわからなかった曲の隠されたメッセージや元ネタを発見できるようになったが、このベスト盤を聞いてもやっぱり大滝の本質は掴みきれない。まるで映画「ダヴィンチ・コード」のように我々がまだ発見できない“秘密”がありそうで。それが大滝ポップスの“狂気”なのかもしれない。はたまた「幸せな結末」が待っているかも。


 


とはいえ、まずは予備知識なく聞いてみてくださいな。聞いたあなたにとっての発見は必ずあるはず。2015年3月21日には80年代の大滝の活動をまとめた12枚組の「NIAGARA CD BOOKⅡ」が発売されます。





エフエム岩手釜石支局 千葉東也




【おまけ・今週の貴重なサイン】


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2011年3月21日発売、大滝詠一「NIAGARA CD BOOKⅠ」。


震災後、被災した高校の同級生吉田幾子さんに贈った12枚組のCDで、大滝さんのサイン入り。


今回のゲストの佐々木さんが吉田さんから借りてきたもので、とても貴重なものです。


それにしても、「NIAGARA CD BOOKⅠ」全部聴きましたが、70年代の大滝さんの若さと熱量とユーモア感が半端ない!