佐竹さんの現在も後日談として書いておこう。会社経営は一時期の危機的状況から立ち直った。夜勤のアルバイトをする必要もなくなった。離婚をめぐる争いもおさまった。経済的にも精神的にも安定してきた。

 

女性関係はあいかわらず盛んだ。ぜんぜん教訓を活かしていない。「もう疲れた」とか「過ちは繰り返さない」などと思いながらもやめられないらしい。

 

実はインタビューの席にも若い女性を連れてきていた。六本木だったので、デートの最中だったのかもしれない。だからこれまでの話の大半は、女性の前で佐竹さんが語ったことなのである。佐竹さんは「この子は友達だよ」と紹介してくれたが、それはちょっと信じられなかつた。

 

肝心のEDについてであるが、これもすっかり治ったそうだ。もともと「最愛の子」に対する緊張感や、借金・離婚によるストレスが原因だったのだから、どれもなくなってしまえば治るのは自然なことである。心因性と言っても、佐竹さんの場合は、それほど根深いものではなかったのだろう。

 

逆に考えれば、この不況の時代、離婚急増の時代に、誰でもこの程度のEDには直面する可能性が高いということだ。

 

佐竹さんはその試練から解放されてから、ある境地に達したという。若い頃よりも、性的な探究心がぐんと強まった。

 

「最近、セックスは奥深いなと思うんだ。歳取らないとわからないと思うな。たとえば挿入にしてみても、新しい喜びを発見できるようになったのね。挿入によって女性の膣って変わっていくじゃない。一回や二回のセックスじゃ変わらないけど、どんどん膣の形そのものが変わってく。合ってくるわけ。それから内部の感覚も変わってくる。感じる場所も変わってく。特に若い子の変わり方は感動的だよ。そういうのを知るとさ、挿入のありがた味、挿入を大事にせにゃあかんというのがわかるから。つまり性感帯、膣の形や内部の感覚も含めてね、男性とどういうセックスをしたかで痕跡を残すんだ。女性の肉体は性の歴史だよ。それが女性の体には刻印されているんだよね」

 

笑ってはいけない。この発言に呆れる女性は多いかもしれないが、「男の浅はかな幻想・願望」として聞き流してくれれば幸いである。私自身は「へえ-、そんなもんですかねえ。やっぱりキャリアというのは馬鹿にならないんですねえ」と感心してしまった。私も女に呆れられる男のひとりであるから。

 

しかしこういう男性であっても、加齢による勃起力減退は避けられない。近年はそれに直面しているというが、さすがは性の狩人、佐竹さん、それ自体を苦にするのではなく、それなりの対処法を見いだしてもいる。

 

「まぁ、慣れてきたからね。フニャになっちゃったときはなっちゃったで、『ちょっと休もう』とかさ、そういうことを言えるようになったんだよ。相手に対して刺激を何らかの工夫で与え続けるようにしていればさ、中断、中断で、休んでもかまわないっていうふうに受け入れるようになってから、ずいぶん楽になったね」

 

「相手に伝えられるようになったのは大きいですね。男はそれができないから苦しいんですよね」と私。

 

「うん、歳取るとこうなるんだなって思うようになって、それを伝えられるようになったっていうのは、ひとつの克服の道だよね」

 

「いろいろな女性がいたと思いますけど、伝えたときの反応はどうでしたか?」

 

「フニャになっちゃった場合は、ふられることは多いよ。でも、それはその程度の女と思えばいいんだよ。要はこちらの内面の問題。自分で屈辱的だと思えば、そうなってしまうしね。でも、男の性について無知な女の子は多いから、こういうこともあると教えてあげられるのも年の功だと思っているんだよ。逆に勃起力だけではない快感に目覚めてくれて、すごく感謝されるときもあるしね」

 

勝手にしてくれよという気分だったが、参考になる話であるのは間違いない。佐竹さんのケースを考えると、男であるなら、いつどこでEDになるのかわからないのだから。私だってもう下り坂なのだ。こういう経験者の英知には耳を傾けなければ。

 

佐竹さんの隣に座っている「女友達」は、もともと無口なのか、恥ずかしいからなのか、じっと黙っているばかりだった。小柄で眼鏡をかけ、どこかしら陰のある女性だった。私は彼女の意見を無性に聞いてみたくなった。

 

思い切って感想を尋ねると、彼女は微笑んで、「非常に参考になります」とだけ答えた。佐竹さんは目を細めて、「わっはは」と高らかに笑った。

 

 

バイアグラはファイザー製薬が研究開発を行い、1998年に世界初のED薬としてアメリカで販売が開始されました。発売当初は夢の薬として世界中で騒がれ、日本においては個人輸入で購入する男性が増え、事故も起こったことで、厚生労働省は異例の速さでバイアグラを認可し、アメリカで発売された翌年1999年には日本の医療機関でも処方できるようになりました。

 

今なお、個人輸入で購入する男子が多いのは、日本の医療機関では保険が使えないため割安な個人輸入で国外から通信販売する利用者が減りません。むしろ増えているような状況です。バイアグラに限らず、全てのED治療薬は通信販売で購入することが可能です。