通り過ぎた影を振り返りながら
車のライトに怯え歩く
寒に咲いた山茶花は夜の雨に打たれても赤々と
真っ黒な傘を伝う雨が涙の様に落ちて
光に捉えられた先
錆びたガードレールが血の様に染まり
また、車は行き過ぎる
僕にはそう見える景色が不思議と怖くはなかった
僕にとっては不安を打ち消す光景だった
貴方の赤い血に触れている気がした
光溢れる喜びに似て
貴方と一緒に歩いている気がした

山茶花の続く街路樹は、
後の蕾を蓄え希望を記す
次に歩き立ち止まる誰かには
溢れるばかりの光と笑顔と幸せを願う

すれ違った少しばかり貴方によく似た
面影に不安を思う
貴方は近くて遠い世界にいる
あの人がそうなりません様に

夜道は光差した後が一層暗い
貴方がいるなら!と
振り返る安堵の安らぎを感じながら
慟哭の虚空の空にも雨が舞い
光溢れる明日を思う

貴方がくれた今
花の無い夜空に微笑み掛ける
いつも貴方は見守ってくれている