私は以前、性犯罪について、“被害者”の立場からの意見を述べさせていただいた。

診察室の向こうで~明かされない猥褻事件~ | ケセラセラ~気負わない・頑張らない・無理しない~ (ameblo.jp)

 

今回は“加害者家族”の立場から、検証してみたい。

 

以下は、阿部恭子氏が記した実例である。

阿部氏は、全国の加害者家族1800件以上への支援経験を持つ、

NPO法人World Open Heart理事長である。

 

 

(事例1)夫が女子トイレを盗撮していた。

 

角田美恵子さん(60代)は、夫が経営する会社を時々手伝っているが、

外で働いた経験はなく、家事や子育てを中心とした生活を送ってきた。

 

長男はすでに結婚し、自分の家庭を持っている。

今年は次男も結婚が決まり、半年後に結婚式を控えている。

 

大きな会社ではないが、夫は起業してから会社の為に日々奮闘し、

まもなく次男に経営者の立場を譲る事になる。

 

二人の息子を大学まで出すのは経済的に楽ではなかったが、

それぞれ立派に成長し、ようやく親としての務めから解放されたような気がしていた。

 

夫も仕事ばかりで余裕がなく、旅行もロクにした事がなかった。

これからは夫婦でゆっくり旅行でも楽しもうかと、旅行会社の広告を眺めている、

そんな矢先の事件だった。

 

美恵子さんの携帯に珍しく会社から着信があった。

家のチャイムが鳴り、玄関を開けると、警察官が二人立っていた。

まさか、夫が交通事故でも起こしたのではないかと不安が脳裏をよぎったが、

警察官は令状を示し、自宅を調べたいと言う。

 

一体何が起きたのか、困惑しているところに、次男が戻ってきた。

警察によると、夫を窃盗の罪で逮捕したというのだ。

美恵子さんは何かの間違いだと思った。

 

警察官は家の中で何を探しているのか、声をかけようとすると、

次男が美恵子さんの腕を掴み、誰もいない台所に連れて行った。

 

「親父が会社の女子トイレを盗撮してた。

更衣室のロッカーを開けて、社員の服を盗んだり。

とにかく、ありえない事態だ。」

 

美恵子さんは悪夢を見ているようだった。

真面目で堅物の夫が、まさかそんな破廉恥な事を…。

 

しかし、自宅からは、盗撮映像や女性物の下着、ストッキング等が多数発見された。

次男が警察で事情聴取を受けている間、

社員への対応は美恵子さんに任される事になった。

 

夫の逮捕にうろたえる美恵子さんに対し、

会社の顧問弁護士は「刑事事件は他の弁護士に依頼して欲しい」と突き放すだけだった。

 

会社で美恵子さんを待っていた副社長も、これまでになく冷淡だった。

美恵子さんは、副社長に促され、社員が集まっている部屋に通された。

針のムシロである。

 

副社長は、呆然と立ち尽くす美恵子さんに、

「まず、謝罪でしょうが!」といきなり怒鳴った。

美恵子さんは20人ほどの社員を前にして、土下座をして夫の行為を詫びた。

 

被害者である女性社員からは、厳しい言葉が飛んできた。

「あんたが日頃満足させてないから、こんな事になるんじゃないの!」

美恵子さんは、返す言葉もなかった。

 

謝罪はこれだけでは終わらなかった。

次は、次男の婚約者の家族だ。

 

美恵子さんは次男の婚約者の両親に、再び土下座をして謝罪した。

婚約者の父親は、「変態の家族に娘をやるわけにはいかない!」

と物凄い剣幕で怒鳴り、婚約解消を求めた。

 

次男の婚約者は、過去に電車で盗撮の被害に遭った経験から、

美恵子さんの夫の犯行をどうしても許せず、

次男とも縁を切りたいと考えていたようだ。

 

結局、次男の結婚は破談となった。

生活を共にしていくことを考えていた二人だったが、

事件の発覚後、婚約者は次男に一度も会おうとしなかった。

式場のキャンセルなどの連絡はすべて、メールで事務的に済ませた。

 

すでに子どもが生まれている長男の家族は、

遠方で生活していたことから影響は少なかった。

嫁の両親は高齢だったことから、事件の事は隠し通すことにした。

 

美恵子さんは、これまでにない屈辱的な経験をしたが、

夫に直接会うまでは、事件は何かの間違いではないか

という微かな期待を捨てることができなかった。

 

性犯罪者の妻である美恵子さんに対する周囲の視線は、

驚くほど冷たかった。

美恵子さんに、同情してくれる人は一人もいなかった。

 

子ども達さえも、まるで事件の責任が美恵子さんにあるかのような態度だった。

この世の中で唯一、自分の味方である人物は夫だけだと思うと、

不思議と怒りは湧いてこなかった。

 

逮捕から数日後、ようやく美恵子さんは夫に面会することができた。

 

「迷惑をかけてすまない」

 

夫は、美恵子さんを見るなり、そう言って頭を下げたが、謝罪はこの一言だけだった。

 

「もっと早く君と別れて、彼女と一緒になっていれば、こんなことは起こさなかった……」

 

夫はそう言って泣き崩れた。

 

夫が盗撮行為を始めたのは5年程前で、

交際していた元社員の女性が他の男性と結婚してしまったショックから、

犯行に手を染めるようになったと言うのだ。

 

美恵子さんは、離婚して夫に多額の慰謝料を請求してやろうと思った。

 

しかし、会社の経営もうまくいってはいなかったところに

今回の事件が発覚し、夫の自己破産は確実だ。

次男も失業する事から、

何よりもまず、家族として生きていく道を探すことが先決だと思ったという。

 

 

(事例2)父が犯した性犯罪

 

大学生の石川あゆみさん(20歳)の父親は、

飲食店で女性従業員に抱きつき、強制わいせつ罪で逮捕された。

 

当時、父親は単身赴任中で、警察から電話を受けた母親が現地に向かった。

父の逮捕後、インターネットで父の氏名を検索すると、

逮捕記事が出てきて衝撃を受けた。

 

まもなく就職活動が始まるというのに、どうすればよいのだろうか。

結婚して姓を変える方法もあるだろう。

しかし、そもそも性犯罪者の娘が結婚できるのだろうか。

これまで普通に思い描いてきた未来が遠ざかっていくのを感じた。

 

インターネット上に残る父の記事を発見して以来、

石川さんは人前に出ることが怖ろしくなっていた。

 

石川さんは、通学途中の電車内で痴漢被害に遭った経験がある。

性犯罪被害で悩んでいる友人も多く、

父親が性犯罪者だということが公になったら、

友人から軽蔑されるのではないだろうか!

絶望感に苛なまれ、誰にも相談できずふさぎこむことが増えた。

 

石川さんは元々は活発なリーダータイプで、

音楽サークルでも中心的な役割を担っていたが、

体調が悪いという理由でサークルを退団することになった。

 

石川さんが最も傷ついたのは、他の家族の言動だった。

警察から戻ってきた母親は、父親の逮捕に怒りを隠せない反面、

酒場の出来事なのに被害女性が騒ぎすぎだ、と被害者を責めるのだった。

示談を済ませ、父親は週末には保釈される。

 

弁護人によれば、初犯であり執行猶予付き判決は確実で、

会社も父親をクビにはしないという。

母親は安心した様子で自宅に戻ってきたが、

石川さんは、女性をおとしめる行為をしたにもかかわらず、

この程度で許されてしまう世の中に納得がいかなかった。

 

それ以来、自分の中に性犯罪者の血が流れていると思うと自分が許せなくなり、

リストカットを繰り返すようになった。

 

 

(事例3)息子が犯した強姦事件

 

岡田雄一さん(40代)は、3件の強制性交等罪(=強姦罪)で逮捕された。

夜道を一人で歩いている女性を車内に連れ込み、

騒ぐと痛い目に遭わせると脅して強姦を繰り返していた。

 

警察から連絡を受けた両親は、

あまりの衝撃に事実を受け入れる事ができずにいた。

息子は有名大学を卒業して一流企業に入社し、

結婚して2児の父親でもあった。

 

順風満帆で誰よりも幸せに見えていた自慢の息子が、

何故こんな破廉恥でむごい罪を犯す事ができたのか、

すでに70歳を過ぎた岡田さんの両親は、

晩年にこれ程過酷な試練が待っているとは夢にも思わなかった。

 

息子の妻は、事件のショックで精神のバランスを崩し、既に離婚届を書いている。

一体息子に何が起きていたのか。

 

岡田さんは、教師の父と専業主婦の母の家庭に長男として生まれた。

弟と妹の三人きょうだいで、両親は長男の岡田さんに特に厳しかった。

 

岡田さんは学校の成績が悪かったり、親の言いつけを守らないと

裸で廊下に立たせるといったバツを受けていた。

屈辱的だったのは、見せしめとして、

わざときょうだいの目の前で罰を与えられる事だった。

 

父親は子供達が言う事を聞かないと、母親のしつけが悪いと言い、

母親にも日常的に暴力を振るっていた。

岡田さんにとって、暴力が支配する家庭は地獄であった。

 

その後岡田さんは、大学入学を機に実家を離れ、冠婚葬祭以外で帰省する事はなかった。

結婚を決意した時、何があろうとも妻子に暴力を振るう事だけはしないと誓った。

仕事も順調で、二人の娘に恵まれ、しばらくは幸せな家庭生活が続いていた。

 

かげりが見えてきたのは、

子育て手がかからなくなってきた妻が、仕事がしたいと言い出した頃だった。

子供の進学に関しても、妻と意見が対立する事が増えてきた。

 

いつの間にか、妻と娘との生活でストレスを感じる事が多くなった。

岡田さんはこの頃から、憎んでいた父親と自分の姿を重ねるようになっていた。

 

思えば岡田さんの育った家庭では、女が男に口答えをする事は許さなかった。

何か言おうものなら容赦なく暴力を受け、それが当たり前。

 

現在女性の上司と仕事をしていても全く問題ないのだが、

家庭では思い通りにいかない怒りが溜まってしまうのだった。

 

ある夜、どうしても怒りが収まらず、ドライブをしていた時、

夜道を一人で歩いている女性の姿が目に入った。

岡田さんは衝動が抑えられなくなり、

車を止めて女性を車内に引きずり込み強姦に及んだ。

 

女性を意のままにした後、体中を支配していた怒りが解消されていく気がした。

それ以来、犯行が止められなくなっていった。

 

面会した両親は、息子から、自分が犯罪者になったのは親のせいだと罵倒された。

情状鑑定(※1)を担当した臨床心理士も、

生育歴における親からの虐待が犯行の要因になっている事を指摘している。

 

しかし両親は、幼少期に岡田さんに対して行っていた暴力を

「虐待」とは認識していなかった。

 

事件後、息子から送られ続けてくる親への恨み辛みが綴られている手紙に、

家族はどうすればよいのか悩んでいた。

 

(※1:情状鑑定とは被告人が犯行に至った動機について、

面接や心理テストを通して、性格や知能、生育歴などから分析する事であり、

被告人の情状酌量を目的として行われるもの。)

 

 

以上が、阿部氏の事例である。

 

私はわいせつ行為を受けた当時、被害者としての屈辱感で一杯であったが、

阿部氏の話を聞いて、加害者家族もまた被害者であると知る事ができた。

加害者家族は憎むべき対象どころか、守るべき存在だと感じた。

 

パートナーが居て、職場での営業成績もトップ、

だけど強姦魔という事件を以前見たが、

何故性衝動を抑えられないのか、被告人の深層心理は分からないままだった。

事例3のように、過去の恨み辛みが、彼を変質者に変えたのだろうか?

 

私はこれまで犯行動機に生育歴云々という話はよく理解できないでいた。

未成年者ならいざ知らず、いい歳の大人が、親や環境のせいにするのは

責任感が欠如しているのではないかと思うからだ。

 

しかしこの考えは浅はかだったのかもしれない。

私が育った環境と、犯罪者のそれは異なるからである。

 

私は、親に対し、思い切り、自分の意見や感情をぶつけられる環境の中で育ったが、

当該犯罪者はそうではなかった。

常にいい子を求められ、偽りの自分を演じてきた。

 

「俺の苦しい気持ちを分かって!」

 

40代になり、ようやく本当の自分の出せるようになったのだろうか?

本来なら10代で経験すべき反抗期を、30年後になって経験する。

特殊な家庭環境ならそういう事もあるのかもしれないと思った。

 

ともあれ彼がご両親との間で、腹を割って意思疎通できるようになった点は

喜ばしい事だ。

彼が一日も早くトラウマから立ち直ってくれるよう願ってやまない。

 

長い間、理不尽な差別と嫌がらせに遭ってきた加害者家族。

その多くは、ごく普通に生活してきた平凡な家族だそうだ。

 

犯罪被害者とセットで、彼らを誹謗中傷から守りたいと思う。

 

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ここでほっと一息コーヒー

 

加害者家族の現状と向き合ってこられた

阿部 恭子さんの設立したWOHは、

日本で初めて加害者支援団体だそうです。

 

阿部さんのご本は、コチラでございます。

(本文の事例は上位2件から抜粋しました。)

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和歌山カレー事件林真須美死刑囚ご子息様が、ニコ

犯罪加害者家族として書かれたご本はコチラでございます。

養護施設でのイジメが酷かったり、縁談が破談になったり…、壮絶な人生を送られたようです。えーん

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こちらは、フィクションになりますが、加害者家族を舞台にした小説でございます。

映画化されました。流れ星(「手紙」と「悪人」)

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(お詫び)「悪人」は、別記事「初めまして」

 

 

にて、ご購入いただけるアイテムを貼付致しましたので、
皆様方にはお手数をお掛けし、誠に恐縮でございますが、
「初めまして」の下段をご覧下さいませ。

 

 

 

 

さぁ~て、気分を変えていきませう・・・チューリップピンクチューリップピンクチューリップピンク

 

私は松田聖子さんのデビューからのファンなのですが、ハート

白いパラソル」は色々な方に歌われていて、見比べてみると面白いです。ポーン

 

ここでは80年代アイドルの、中森明菜さん石川秀美さん堀ちえみさん

「白いパラソル」をご紹介しますね。傘傘傘

 

皆様は、どなたの「白いパラソル」がお好きでしょうかはてなマーク

 

松田聖子さん

伸びがありますね~。ベルベルベル

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中森明菜さん編

セクシーな聖子さんはてなマークさすが歌姫だわ~。ダイヤモンド

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石川秀美さん編

聖子さんも見守る中、ドキドキラブラブラブラブ

おや、野々村真夫人もいらっしゃいますね。ふんわり風船ハート

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堀ちえみさん編

な、なんと、ホリプロキャラバンでこの歌を選曲されたんですね~。神社

堀さんはこの頃から聖子さんファンなんですね。ドレス

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チューリップお知らせ:なお様へ→お手数をお掛けしますが、コメント欄11番目をご覧下さいませ。