刃物の講習会で皆様方からよく 「砥石を買って包丁を砥いだのに、思うように良く切れない!!何処が悪いのでしょうか」と尋ねられます。


その方のお話を聞くと、砥石に包丁を当て砥いではおられるのです。でも切れないとおっしゃる。よくよく聞くと、包丁を砥石に当てて研いでいるだけ!!なのです。


実は 刃先を最後まで研磨されていないのです。又研磨されたか確認の仕方をご存じなかったのです。


最後まで研ぐ?・・確認する?・・・

 

では 本題に入ります。

刃物(今回は包丁について)を知らないと良い研ぎが出来ませんので、基本をお話しましょう。



①包丁が両刃か片刃か、刃付けの形を確認する。(あなたの包丁は、どちらかお分かりですか?)





両刃とは・・・包丁を手に持って包丁の背から見下ろした時、左右の両面から刃面が付いている形

      (家庭用の万能包丁、三徳包丁、文化包丁、菜切り包丁、ペティナイフ、牛刀などがそうです)


片刃とは・・・包丁の片面が平面(裏と言う凹みが有るものが多い)で、もう片面の鎬面(斜めに見える面)に刃    面が付いている形

      (出刃包丁、刺身包丁(柳刃包丁とも言う)、薄刃包丁などがそうです)

違いは形だけでなく、砥ぎ方が違ってきます。


②両刃と片刃の研ぎ方の違い


両刃は 刃の背を浮かせて(10円玉3~4枚厚さ位)刃先を砥ぎます(写真の部分)、

また、砥石に当てる割合が両面(裏も表も)とも同じ割合で砥ぎます、


片刃は刃面も裏面も砥石面に密着させて砥ぎます。

また、片刃は刃面が7割、裏の平面を3割位の割合で、刃面を主に砥ぎます。
  

④刃研ぎ方法  最後まで研ぐとは?

包丁の持ち方

両刃、片刃とも自分の持ちやすい形で包丁を持ち、もう一方の手の指で包丁が砥石に当たる部分を抑えます。

研ぎ方

押す時に力を入れ、引く時は軽く!刃の元から先までまんべんなく砥石に当てていきます。

特に 刃先は丁寧に確実に刃が当たっていることを確認!してください。


どんどん 砥いで行くと必ず【刃返り】と言う物が刃先に出てきます。

この 【刃返り】が出て初めて、研ぎが出来たと言う事なのです。

実は 

講習会の時の方々の【研いだのに、切れない】と言うのは、この【刃返り】を確認しておられなかったからなのです。

最後まで刃を砥いで出る、刃返りが無かったのです。【刃返りの確認が重要】


【刃返りとは】

荒砥又は中砥を使って刃を砥ぎ上げて行きますと、必ず【反対側の刃先】に【刃返り】と言うバリ(ささくれ)が出ます、指先で撫ぞるとザラザラしています、これが刃返りです。

刃返りが出ず、何も無くつるっとしている場合は、まだ刃が砥げていません。
刃先の光っている部分が刃返りです。最後まで砥げていないと出ません、指先でそろっとなぞってみるとザラザラしているので分かると思います。


※写真は荒砥石で研いだ刃返りです、見やすいように多めに出しています、中砥石の刃返りは出ても少なく、目では確認しづらく、指でザラザラを確認します。

⑤刃研ぎ方法 その2

この刃返りが出ましたら、片刃は仕上砥石で刃裏を砥石にピッタリ付けて裏を研ぎます、刃表6~7に対し刃裏を3~4の割合で、交互に砥石に当て繰り返し砥ぎ上げます。刃返りが取れたら完了です。


両刃は同じ割合で両方から砥いで、刃先全体に刃返りが出揃ったら、最後は仕上砥石で同じ様に刃を研ぎます。

刃返りが取れましたら完了です。


片刃に出た刃返りの取り方。この後、刃表、刃裏と刃返りが取れるまで砥ぎ上げます。

刃研ぎ完了です。


⑤刃が砥げたか確認
砥ぎ上がった刃先面をある程度寝かせて、指の爪に当ててみてください、刃が滑らず爪に止まるようでしたら良い刃が付いているでしょう。

滑るようでしたら、まだ刃が付いていませんので、もう一度④から刃研ぎを、やり直して再度確認してください。
刃先全体を確認してください。


先ほどの方にこの話をして、実際に砥いで頂きました。

包丁を持って帰られ、翌日「料理が楽しくなりました」と喜んでおられました。

まずトマトを切られたそうです・・TVのCMの様に良く切れたそうです。



【砥石の選び方、使い方】


砥石には[人造砥石]:人工的に研磨剤を入れ造った砥石と砥石山から取れる天然砥石とが有ります。

一般的には、人造砥石が多く使われております。


又  刃研ぎには 荒砥石、中砥石、仕上砥石とあり、

刃が欠けていた場合は荒砥石から、刃が欠けていなければ中砥石から砥ぎます、最後に仕上砥石で刃付けをします。  

(写真は荒砥石、中砥石、仕上げ砥石で研いだ刃先の800倍の写真です )                             

写真 左からダイヤモンド砥石、人造荒砥石、中砥石2種、人造仕上げ砥石、天然仕上げ砥石です。


使用する前に!!

人造砥石は使用前5分位水に付け置きしてから私用します。(研ぎやすくなります)

天然砥石は使用直前に水を掛けて使用します。(付けて置きますと割れやすくなります)


使用中!!

荒砥石、中砥石は水を掛け研磨汁を流しながら研ぎます。(中砥石は若干水を少な目に)

仕上砥石は研ぎ汁を流さないでねっとりした砥汁でゆっくり砥ぎ上げます。


お勧め!!

荒砥石は人造よりダイヤモンド(#180[粗い]又は#400番[やや粗い]のいずれか)をお勧めします、

なぜなら人造砥石は砥いで行く内に形が崩れ、特に片刃の場合は刃先が丸くなってしまうからです。

しかし、ダイヤモンド砥石は形が崩れず刃を平らに砥ぎ上げられます。しかも砥石面をを修正しなくて済みます。


中砥石は人造砥石の#1000又は#1200でOK


仕上砥石は人造の#3000又は#8000を(数字が多いほど刃先が繊細に仕上がり、切れ味が増します)

また  刃先に刃紋を出したり、板前さんの包丁の様に、鋭い切れ味をお望みなら高価ですが天然仕上げ砥石を!

私は家庭用では#3000の人造仕上砥石で良いと思います。

追伸 

100円ショップの包丁でも研ぎますと良く切れる様になります。

砥石を揃えるのが高く付きますかね?