「老師はどなたじゃな、わしには見覚えがありません。」
「貧道(ひんどう)はあの山から来た。お孫さんに贈り物がござる。」
と、その老人が遠い山を杖で指した。

村長が、
その杖の先を沿い、
窓から眺め、
月の光に照らされ、
星の下にある山の影は、
高く、険しく見える。

すると、
村長の顔が不思議な表情になった。
「まさか、
老師は太山(たいざん)の
「雲上行(うんじょうこう)」酔月道人(すいげつどうにん)なのかね。
わしは目が利かぬのじゃ。」
(莫非道長可是居於太山上的「雲上行」醉月道人,老夫可真是有眼無珠。)
「貧道のことでござる。虚栄心から名乗るに及びませぬ。」
(正是貧道,虛名不足掛齒。)

酔月道人と言えば、
まずは、
太山から説す。
太山という山は、
宇宙万物が混沌してる状態で、
初めて現れた巨人のハンコの、
死骸の頭で形成されたものである。
千万年の月日を経て、
太山は天地の霊気を吸う。
従い、
修道する人は、
徐々に太山に集まっておる。

酔月道人は二十歳のころ、
この塵俗に飽き、
両親の葬式をきちんと果たすと、
一人で太山にて修道を始めていた。

「この子はシユウの生まれ変わり、
この世に痛みを与えようとし、
再び、
この世に転生した。
ゆえに、
貧道は全身全霊を尽くしても、
惨劇を防ぐべきでござる。」
と、酔月道人は目を顰め、額に皺ができた。

すると、
酔月道人は袖の中から、
一つのものを出した。
「これは貧道が十数年の月日を経て、
太山の精気を注いでいたものでござる。
いざとなれば、
この子の運命を変えるかもしれん。」
と、酔月道人は不安な口調で話した。

いったいこれはどんなものですか。

壱章につづく

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Judaさん、
ありがとうございました。
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