その中で「何で武術なんですか」と聞かれました。
そういえばあまり話したことがなかったなあ。
ということで、僕と武術と覚技の関係について数回に分けて書きたいと思います。
(おっ、ほったらかしのブログだったのに急にどうした。なんだかやる気が見えるぞ)
僕と武術との出会い、それはなんと自動車事故がきっかけでした。
渋谷区の広尾交差点で、夜中、信号待ちをしているときに後ろから突然、追突されてしまったのです。
追突に突然というのも変な話ですが、相手がノーブレーキで音が聞こえなかったため、本当に突然だったのです。
ドシャーン!という衝突の衝撃にひとしきり耐えて何とか車から自力で出てみると、背中は座席の形のまま動かせないほどダメージを受けていました。首から腰までがひとかたまりになったみたいでした。全身がジーンとしびれています。鼻の奥はツーンとして何も感じない。
翌日行った病院の先生曰く、「部屋に入ってきた新海さんのシルエットをみて老人かと思いましたよ」ですと。

というのも僕の考え方は、「体に不都合が起こったときは、外から体に何かをすることは最小限とする。何か働きかけるとしても、当人の中で回復に向かうきっかけをつくる程度の関わり方が最善と考える」というものだったからです。
[Big Sur]Photo by Shinkai
この考え方については18歳頃から今に至るまで変わっていません。
体に起こったことはできる限り自分で何とかする、という方針でやってきています。
ということで、最初に思いついたのが野口整体でした。
野口整体は、ご存知の方も多いと思いますが野口晴哉という方が創始者で、自分の力で自分の症状を治癒するための明快な指導をしています。野口整体のすばらしさは以前から体験していて、東京の本部にも通ったことがあり、本も随分読んでいました。
そこで神奈川支部が小田原にあったので、予約しやすかったこともあり、小田原へ行きました。
2度ほど通ったのですが、すばらしいと思っていた野口整体の操法は、その時の自分の体には、なぜかピンと来るものがありませんでした。(ごめんなさい)
そこで2度目の帰り道、「やっぱり自分で何とかするほうがいい」と意を決めて、坂を老人のような足取りで下って駅へ向かいました。
そしてようやく駅にたどり着いたものの、電車は出発したばかり。しかも次発まで時間がかなりあります。
ふと目に入った、駅前の商店街入口の本屋さんへ時間つぶしに入りました。雑誌とわずかな単行本が置いてあるだけの、間口一間半ほどの小さな本屋さんです。
わずかに並ぶ本棚を眺めていると、ある1冊の武術の本が目に入りました。
その本は、以前やけに熱心に勧める人がいたので記憶の隅にあったものです。
しかしそれはとてもマイナーな本でしたので、なぜまたそんな本が、こんなところの小さな本屋にあるんだろう?という感じでした。
すっと手にとってページをパラパラめくってみると、書かれていることに目がひきつけられました。
チカラを用いない。カタは不用。意識を使う。脱力した芯のあるカラダの動き。などなど。とても興味深いことがたくさん書いてあります。
「この武術をやりたい!」
即座にそう考えました。
学びながら自分なりに体を整えていこうと思ったのです。
これが、その後長く学ぶことになる、ある武術との出会いでした。
本を購入してすぐに中に書いてあった連絡先へ電話。
しかしその武術は、当時まだ発足したばかりで、初心者の参加は月に一度の稽古のみ。
しかもそれが既に3日前に終わってしまっていて、次回は1ヶ月半後です。
「うわーっ、随分先だ。待てない!」
そこでしつこく食い下がって聞いてみると、電話の向こうから「大阪なら、明後日にありますが」との答え。
這ってでも行く!
と、2日後には新幹線によぼよぼと飛び乗っていました(笑)。
僕と武術は、このようにして出会ったのでした。
しかし出会いって不思議ですね。
交通事故がもとで体を壊して、治しに行った先の小さい本屋で本と出合ったのですから。
でもだからこそこういう偶然(流れ)って面白い。
僕はそんな偶然(流れ)をいつも大切にしています。
さて、その後の話は、次へ続けます。
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