突然だけどぼくは女じゃない。胸はあるし、月イチの生理だってあるけれど。

 でも、だからと言って男なわけでもない。いや、ちょっと違う。生活しているほとんどの時間、ぼくは自分のことを男だって思ってる。それに、男か女かって聞かれたら男だって答えるだろう。

 ぼくが男なわけでもないって言ったのは、男だって思ってるほとんどの時間以外の性別だ。ぼくには性別がない。

 小説とかドラマだったら家族で壁に立ち向かおうとするような問題だろう。だいたい最後には涙ちょちょぎれの感動の結末が待ってる典型的なやつ。

 でもぼくはこの自分の性別の話は墓場まで持ってこうと思ってる。理由は簡単。現実は小説とかドラマみたいにうまくはいかないからだ。

 もしかしたらうまくいくかもしれない。言ってみたら意外とスッと受け入れられるかもしれない。

 そうじゃないんだ。別に自分から波風を起こそうなんて考えない、だって今の状態が一番楽で平和だからね。何も壊すことはないだろう?

 

 だから、言うつもりなんてなかったんだ、誰にも。

 そのはず、だったんだけどなあ。