会社の社用車を整備・修理してくれていた修理工場がある。
自家用車もそこで整備してもらってたし、俺は車種とか全くこだわりがないし「乗れれば良い」っていうスタンスなんだけど、そこそこ古くなってくると「おい、今こんなのがあるけど、どうだ?」ってって必ず声をかけてくれた。
だからもう何台そこから買わせてもらっただろう。それこそ破格の値段で。
仙台で買ったブルーバードがいよいよヤバくなったとき(結構気に入っていたんだけどね)
「おい、yukki。そろそろこれ部品もなくなってきてるぞ。今サニーがあるけど、どうする?」
「いや、俺あまりお金ないですよ?」
「ウチに車検とか整備任してくれるなら、10万でいいよ」
「いやいや、それ破格でしょ?」
「お前が買わないなら、潰すだけだから」
そんなこんなで、その後サニーが危なくなると、ティーノを。
で、またそれも随分乗った後、今度は今乗ってるプリウス。
なんか、俺のこの20数年間の車はその社長にいつも気にかけてもらってた。
その社長は、まあお酒が好きでね。
「大丈夫大丈夫」って言いながら、まともに歩けなくなるくらい呑むから、息子さんが必ず最後まで付き添ってた。
蕎麦も好き。
そば粉を取り寄せて、「そばがき作ったから呑みに来い」って夕方電話が来る。
普通、食べにこい、だと思うんだけどね。
会社帰りに18時頃ちょっと寄ったつもりが終電近くになってた時も珍しくなかった。
あと、長いそうめん。どこかは分からないけど取り寄せたのをいつも土産に渡してくれた。
それと、くさやが食べられるようになったのも社長のおかげ。
あんなモノ絶対食えないよって思ってたけど、ガレージで焼いてくれたくさやは本当に美味しかった。(後で周りの人達に文句言われたと思う。下手したら異臭騒ぎww)
その社長は弓が得意で。
ガレージに木と藁で作った的を置いてて。
「おお、yukki来たか。ちょっと待ってろ。あと少し」
って言いながら射って。
その凜とした立ち姿は、とても格好よかった。
ちゃんと袴姿で射るんだ。
呑みながら俺の二の腕を触って「お前、いい腕してんな。弓、やってみないか?」
なんて言われたけど、ごまかして結局やらなかった。
8月6日、社長は亡くなられた。
聞いたのは先週。葬儀は家族だけで行われたそうだ。
今日、挨拶に行ってきた。
91歳。
肺炎を繰り返して食事も摂れなくなっていたそうだ。
体調がすぐれないというのは聞いていたから伺うのも遠慮していた。
後悔というのは、やはり先には立たないね。
やっておけばよかったかな。弓。
まあ、今の俺の二の腕じゃあ、引けもしないだろうけど。
ありがとうございました。
貴方には感謝しかない。
どうか心安らかでありますように。
そう遠くないうちにそちらに行くので、またそばがきご馳走してください。