オンフロワ4世・ド・トロン | 過去世からのメッセージ

過去世からのメッセージ

前世療法で見た過去世の話しを中心に綴っていきます

オンフロワ4世・ド・トロンについて『アラゴン

王家の亡霊たちの呟き』で話題にしました。

 

 

日本ではほとんど知られていないこの人物、そ

の生涯もパッとしません。肖像画もイザベルと

の結婚の場面が残されているだけです。

 

オンフロワ4世は母エティエネットが悪名高い

ルノー・ド・シャティヨンと再婚して彼の義理

の息子になったため人生を振り回されます。政

略結婚でエルサレム王位を継ぐ可能性のあるイ

ザベル王女と結婚するのですが、なんとその結

婚式の時にケラク城をサラディンに襲撃されて

しまうのです。義父のルノーが隊商を襲って略

奪を繰り返し、サラディンを怒らせたのが原因

でした。この時エルサレム王ボードゥアン4世

は病気が進んで目が見えず体が不自由で馬にも

乗れない状態でしたが、それでも輿に乗って軍

隊の指揮を執りケラクを救いました。

 

ボードゥアン4世が亡くなった後、姉シビーユ

の子ボードゥアン5世が幼くしてエルサレム王

になるのですが、彼もまもなく亡くなります。

エルサレムの貴族たちはシビーユの夫ギー・ド

リュジニャンを嫌ってイザベルとオンフロワ4

世を王にしようと計画するのですが、彼はこっ

そり逃げ出して(王になるのが嫌だった?)

シビーユとギーに会いに行き臣従の礼をとりま

す。

 

その後、シビーユと彼女の娘たちが亡くなり、

イザベルがエルサレム女王となるのですが、

貴族たちは頼りないオンフロワ4世を王にする

のに反対し、無理やり離婚させて、英雄として

名高いモンフェラート侯コンラート1世とイザ

ベルを結婚させます。1年後コンラート1世は

暗殺され、エルサレムは混乱します。オンフ

ロワ4世はイングランド王リチャード1世に仕

えて、アラビア語の得意な彼はサラディンの

弟アル=アーディルと交渉します。リチャー

ド1世の妹ジョーンとアル=アーディルの結婚

という話も出ましたが実現せず、まもなくオン

フロワ4世は亡くなります。イザベルとの間に

子供はいませんでした。

 

オンフロワ4世のような人物は当時も全く評価

されていないし、その後の歴史家が評価する

こともまずないでしょう。ボードゥアン4世の

ような気高い王もいたけれど、その何倍もとん

でもない人間がたくさんいた当時のエルサレム

王国で、彼は現代人に近い普通の感覚を持って

いたように思います。サラディンに襲撃されて

怖かった、王になんかなりたくないという普通

の感覚、こういう人が歴史の中で評価されるこ

とはまずありません。でも普通の感覚の人がい

たからこそ交渉の余地が残され、全滅を免れて

います。

 

現代も極端な人の方が権力を持ってしまい、悲

惨な戦争が続いています。特別な存在になるの

はそんなに偉いことなのか、野心のためにはい

くら人を殺してもいいのか、根本的に間違った

方向にばかり進んでいます。どんな時代にも普

通の感覚を持っていて精一杯生きた人がいた、

そういったことを伝えていきたいと思います。