地元新聞「北羽新報社 」コラムより


居るのは鬼畜にも劣る人

(5月20日)

 藤里小学校のグラウンドには大小30匹のこいのぼりが泳いでいた。元気で育つようにとの保護者や教師の願いが込められているのだろう。
 学校から北を望むと駒ケ岳がそびえている。ぼんやりと春の雪渓が馬の姿形に見える。白神山地の自然は、若駒のようにたくましく成長して欲しいと造形したと思う。
 けれど、藤里小の1年生の米山豪憲(ごうけん)君(7)は18日、自宅から10キロ離れた能代市二ツ井町の米代川沿いの草むらで、遺体で発見された。絞殺された跡があるという。1カ月前の4月10日には同じ藤里小の4年生の畠山彩香(あやか)さん(9)が藤琴川で水死体となって見つかった。
 家族や学校、地域の誰もが願った「子どもの健やかな成長」は、もろくも崩れた。家族の苦しみはどれほどだろう。「痛ましい」と語る地域の無念もどれほどだろう。報道陣であふれて、タクシーや中継車が長期駐車し、上空をヘリコプターがバタバタと飛んでいるが、地域は悲しみをこらえ、ひっそりと静まり返っていた。
 現場に行った。豪憲君と彩香さんが住んでいた朝日ケ丘団地は役場や太良峡(だいらきょう)に向かう県道沿いで、同町では通行量が多いところだ。不審者・車両がいれば目に付きやすい。
 それなのに、豪憲君は下校時間帯の15分ぐらいの空白時間になぜ忽然(こつぜん)と不明になったのか。なぜ、首を締められなければならなかったのか。そして、土地勘がなければ道に迷いそうな二ツ井町にまで運ばれ、草むらに遺棄されたのか。
 彩香さんは、藤琴川に転落したとされるが、自宅から約500メートル離れた川に、1人行ったのだろうか。川は水量も多く急であり、「危険です!!」の看板もある。大人でも川岸に行くのがためらわれるのに、普段母親に注意を呼び掛けられ行かない彩香さんが、なぜ転落しなければならないのか。発見時に、身体に損傷が少なく、着衣にも乱れがなかったのはどうしてなのか。
 底知れぬ恐ろしさが漂ってくる。ある町民は2人目の行方不明を知って「また神隠しか」と言ったが、神は子どもを守るはずだ。居るのは鬼畜にも劣る人である。事件の早期解決を願う。


藤里の事件、メディアを問う
集団的過熱報道の現場

(5月29日)

 小1男児殺害事件の起きた藤里町の教育委員会は26日、教育長・藤里小校長の合同会見を開いた。その趣旨を伝える「お知らせ」には次のように書かれていた。
 「この会見は、現在の学校内外での児童の様子といま学校が取り組んでいる状況などについてインタビューに応える形でお伝えするものです。このことによって、児童を学校から家庭にお返しする土曜日、日曜日、各戸に臨宅して当該校の児童及び児童の保護者周辺住民への取材は厳に慎まれるようお願いします」
 「連日の報道取材によって、児童、保護者とも心身ともに疲弊しきっています。どうか、土、日だけでも静謐(せいひつ)な中で、心休まるようにさせていただきたいと強く念じています」
 殺害された男児の近所で、4月に水死体で発見された小4女児の母親は24日、取材陣に過剰取材の自粛を求める文書を配布した。身を寄せる実家周辺に取材陣が殺到していることを受けた文書で、「家族、親せき等、心身疲れ果てています。もう少し節度ある行動をお願いします」と。27日にも報道陣に同様の要請をした。
 男児が遺体で発見された18日夜、自宅玄関前に遺族の思いを記した紙が張られた。「家族は思いがけない出来事で大変心を痛めております。豪憲を静かに迎え入れ、そして見送りたいと思っています」とつづるとともに、報道機関の取材に対しては近所の迷惑にならない節度ある対応を要望している。翌19日も遺族親族の代表による重ねての取材自粛要請の文書が配布された。
 北羽新報社も加盟する秋田報道懇話会は19日、男児の自宅周辺での節度ある取材を申し合わせた。さらに、関連する場所で一部行き過ぎた取材活動があったとして、24日再度申し合わせ、取材態勢の構築を求めた。
 (1)関係個所への取材に対し、近隣の路上への駐車を厳禁とする(2)関係個所への門前での待機は禁止する(3)関係個所でも一般的なプライベートの映像の撮影を禁止する(4)各社待機人数と車両を絞る。腕章を着用する―など。
 25日には「放送と人権等に関する委員会」もテレビ・ラジオ13局に、「節度」を要望した。
 その後、能代署前の市道での長期駐車は消えた。関係個所周辺での近隣路上への駐車も見られなくなった。
 メディア・スクラム。事件や事故の際に起きる集中豪雨型の集団的過熱取材に対し、批判が高まっている。日本新聞協会はこの集団的過熱取材に対し見解をまとめ、取材者に最低限守るルールを示し、不幸にも混乱が発生した場合には地元の報道組織で調整、現場でその役割を担うこととしている。
 もちろん真実に迫る取材は報道の第一義である。「きれいごとでは済まない」との声もある。が、新聞・放送・雑誌など全国から多数のメデイアが集ることで、競争心とスクープを抜かれる不安感から逸脱した取材、節度のない対応が生まれ、周辺に不安や苦痛を与えている。
 のどかな藤里町で全国に衝撃を与える子どもの事件が発生、集団的過熱取材が起きたのである。今後、捜査が進展していけば、再び混乱が生じる可能性がある。藤里で起きた悲しい事件は、報道の内容も含めてメディアのありようも問うている。



事件から2週間、地域は…

(5月31日)

 毎日毎日が暗鬱(あんうつ)で、深い嘆息が出る。「藤里町の男児殺害、女児水死」。
 報道する側として―。
 新聞、テレビラジオ、通信社、週刊誌、写真誌などの取材陣が入れ替わり立ち替わり繰り出す現場と関係個所、その総勢は100人以上、テレビのスタッフ、ドライバーまで入れると藤里町と能代市に200人にもなるのか。
 一つの動きがあると、血走って騒然とする。無差別的かつ反復する取材。自制と節度が求められたのに、詭弁(きべん)を弄(ろう)して関係者宅に取材しようとする記者。「絵が欲しい」とカメラを回すクルー。
 集団的過熱取材と限られた情報の中での報道合戦に加えて、人権に触れてもなお先行する週刊誌の好奇的な過剰報道で、住民のメディアに対する批判が次第に高まってきている。この報道態勢がいつまで続くのか。
 「この地で生きる」地元紙の報道のあり方はどうであるべきなのか、記者・編集者の自問もまた続く。
 能代山本に住むものとして―。
 「子どもを守れなかった」という悲しい事実に、小学生の登下校には家族や地域住民が連日付き添っている。藤里では屋外で子どもの歓声が聞かれなくなった。知らない人ばかりでなく知っている人でも注意しなければならないと、子や親が暗黙の警戒を始めている。のんびりと穏やかな地方の田舎であったはずが。
 何年か前の重傷ひき逃げ事故、パチンコ強盗の未解決に4月の八峰町のコンビニ強盗。そして藤里町の事件の間隙(かんげき)を縫ったかのような能代市での24日の再びのコンビニ強盗。藤里の男児殺害前に発生した女児水死では、被害者遺族が捜査に不信感を抱き、訴えている。それらが混じって、この地域の治安を守る警察に対しても、住民批判がもたげている。「しっかりしろ」と。
 藤里の事件は、報道も絡めて噂が増幅している。誇張的言辞を吐くフツーの人の一方で、地元住民は疲労の色が濃く、口を閉ざし沈んでいる。良好なコミュニティであったはずが、人間不信を生みかねない状態にある。
 男児を殺(あや)めたモンスターはまだ捕まっていない。事件から2週間。




全国ニュースから消え 地元の報道番組でも扱い時間は短くなってきた

そんな中でも 能代警察署の前の報道車両が消える事も無く 表口・裏口と報道陣がカメラ片手に陣取っている

事実かなんだかもわからない えげつない記事の週刊誌はバカ売れで タクシー会社や宿泊施設はウハウハだとか・・・なんだかなぁ~


一方で地元周辺から 眠れない・不安な気持ちになるとPTSDの症状を訴える人も出てきたらしい

願いは逮捕だけ・・・


さきがけonTheWeb - 秋田魁新報社

http://www.sakigake.co.jp/

[特集]藤里・男児殺害事件 - 秋田魁新報

http://www.sakigake.jp/kikaku/fujisato/index.html


能代警察署

http://www.akita-kenkei.net/nosiro/

過去記事

彩香ちゃん、遺体で発見=川に転落

≪秋田小1男児不明≫事件?事故?

≪秋田小1男児不明≫首に絞められた跡/捜査本部設置

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≪秋田小1男児殺害≫首に2本の絞めあと、強い殺意の表れか

≪秋田小1男児殺害≫地元に詳しい人物に絞り込み捜査

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≪秋田小1男児殺害≫ウワサの真相、マスコミの力
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