今回はオセロにおける、地味だけど大事な小技の数々をお送りするぞ!

 以前にも書いたが、これまで書いてきたような理論は、強い人ならみんな知っている。
 
 今回伝授する小技の数々にしても、きっと知っているであろう。

 いかに実戦で小技をかますか、いかなるタイミングで小技を発動させるか、そのような意識を持ちながら学んでもらいたい。

 小さく差をつけて、それを積み重ね、勝利という大きな結果に至るのだ。




 余裕手。

 こちらだけが打てる手のことだ。一般にはすぐ打たずに、残しておいて決め手に使う。

 先に相手も打てる所から打ち、それによって相手の手数を減らしていくという発想が大事だ。


囲い厨のブログ-余裕
図1 黒番

 B8、E1、が黒の余裕手。
 
 H2が白の余裕手である。

 見ての通り、黒は余裕手以外にいい手がない。こんな時にも余裕手を使うことで、生き延びることが可能になる。

 ここでは黒はB8と打つのがいい手である。

 次にH8がとれるため、白のH2の余裕手を打ちにくくしているのもポイントだ。もし白がH2に打つとゆくゆくはH1もとられてしまうのだ。


囲い厨のブログ-余裕手1
図2 黒番

 図2では、白は打ちたいところがない。

 打てるのはA7かB7、いずれも打ちたくない手である。

 こんな時に、余裕手を打つことで相手を詰めることができる。

 いくつかあるので、黒の余裕手を数えてみて欲しい。






 発見できただろうか?

 正解は、A2、F8、G1、H2、H6が黒の余裕手である。

 いずれも白からは打つことができない。

 ここでH7も黒の余裕手では?と思ったあなた!

 なかなか目ざといがよくよく見て欲しい。

 確かにH7も黒からしか打てない。

 だが次に白はH6と打ってくる。

 放っておくとH8をとられてしまうが、かといってH2ととりかえしても、H1に白石があるため、H8をとられてしまう。

 よってH7は余裕どころか、悪手だったのだ。

 他にも黒からしか打てない手はあるが、そこは黒から打ちたくない手である。

 このように相手が打てないというのが大前提ではあるが、こちらも打てない手は余裕手ではない。

 こちらは打てて、相手が打てない手が余裕手である。


囲い厨のブログ-余裕手2
図3 黒F8と打った場面

 黒「ククク、余裕手のF8を使わせてもらったよ」
 白「ぐぬぬ……」


囲い厨のブログ-余裕手3
図4 白B7と打った場面

 白「新たに黒の余裕手となったB8を消す手だ!!」
 黒「おやおや、左下は奇数空きですよ?」
 白「なんだと!?」

 黒「私が打ち、あなたが打ち、手どまりは私がもらう」
 白「!?」
 黒「すなわちあなたが次に打つ手は、潜り込んだのが無意味になる手!」
 白「ブヒーーーーもうダメやーー」
 
 この後、黒は容易くA8と隅を取る。
 白の打てる手は、A7かB8。
 仮にA7に打つと、黒はB8に打つ。

 その時点で白の打てる手はA2の一手だけ、そこに打つと、A1の隅をとられてしまう。
 白がB8ととっても同じ展開になる。

 このように上手に余裕手を活用して、相手を詰めてしまおう。


 隙間は埋めろ 

 隙間といってもこちらの余裕手はとっておいていい。残り物には福があるのだ。

 相手も打てる隙間(すなわち余裕手でない隙間)は、一見苦しく見えても打ったほうが得になる場合が多い。

 隙間を打たないということは、ほかに打たなければならないということ。ほかに打っている間に、相手が隙間に打ってくる。するとまた自分はほかに打たなければならない。
 
 手数で損することになるのである。


囲い厨のブログ
図5 黒番

 図5は、白A1と隅をとられた場面である。
 A2は黒も白もどっちも打てる。

 このように隅をとられた後の隙間は、どう見ても黒からは打ちたくない。

 自然に見える黒H3などと打ちたくなるのが人情だが、この場合A2と打つほうが得なのである。

 これが手数を稼ぐ手だった。


囲い厨のブログ-隙間打たず1
図6 黒H3と打った場面

 先に失敗例から見てみよう。
 黒はH3と打った。
 白は順当にA2と隙間を埋める。


囲い厨のブログ-隙間打たず2
図7 白A2と打った場面

 黒はG3に打つ。


囲い厨のブログ-隙間打たず3
図8 黒G3と打った場面

 白はここでは最善ではないが、自然にA7ととることにする。



囲い厨のブログ
図9 白A7ととった場面

 この図をよく見て欲しい。
 黒から打ちたい手がまったくない。
 
 どこに打っても隅をとられてそこからごっそりと返されてしまいそうである。 

囲い厨のブログ
図10 黒G1

 やむなくG1。
 最善だが、いかにも苦しいボロ負け確定の手である。

 では、もしも、図5の時点で、黒が隙間を埋めていたらどうなったか。


囲い厨のブログ-隙間打つ1
図11 黒A2

 黒は隙間を埋めるA2と打った。

囲い厨のブログ-隙間打つ2
図12 白A7

 白は自然とA7ととった。
 黒はH3ととる。


囲い厨のブログ-隙間打つ3
図13 黒H3

 黒H3と打ったこの場面をよく見て欲しい。
 白はG3に打てない。
 勝勢ではあるが、自然な手がないのである。

囲い厨のブログ-隙間打つ4
図14 白H7

 そこで白H7ととった。

 これはG8に潜り込めて悪くないように見えるが、黒H8の後、すぐG8に潜りこむと、なんと白が負けるというゼブラの判定がでた。

 細かいところははぶくが、黒H8には、白G3と奇数空きに打つ手が最善で+18とでた。そちらを打てていれば白は余裕の勝ちだ。

 だが、A1をとられた後の隙間を埋めるか否かで、あわや白が負けかというところまで形勢が変わる可能性があったということである。

 いったい何が違ったのか。

 簡単に言えば、黒は隙間に打つことで一手稼いだのである。

 隙間に打たなければ他に打たなければならない。

 他に打つと白が隙間に打ち、黒はまた他に打たなければならない。

 ここで手損が発生していたのである。

 一手の差は非常に大きい。特に終盤では勝敗を決するほどに一手の差が重要になる。

 ちなみに隙間を埋める手はー20、隙間以外はー28であった。

 今回の場合では、実に石の数8個分も差があったということである。

 一手の得で8個の差である。

 33個とれば勝てるゲームであるオセロにとって、これがなかなか大きな数であることはいうまでもないだろう。

 長くなってきたので、次回へ続く。