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ある日、白い息を吐きながら、学校から帰ってくると、

カーコ、おかえり~コタツの中見てん

きゃ~、きゃわいい~どうしたん?もらったん?

真っ白で青い目のシッポがちょんとした子猫がいた。

トムとジェリーのトムに似ていたから「トム」と命名。

トムは、賢いネコで、母が青い財布を持つと先回りして

八百屋で竹輪をもらって銜えて待っていた。

トム、自転車にいつか乗せて走ってやるからね!!

父の自転車は、バカでかく真っ黒な鉄製だった。

何度もこけて、傷をつけながら悪戦苦闘の末

ようやくそのバカでかい自転車に乗れるようになった。

乗り方はこう。顔の位置より高いまっすぐなハンドルを

しっかと握り、目を見開いてドドドドドーーーーッと走る。

助走した後右足を大きく後ろから回し飛び乗り、

直ぐに片足ずつ体重をかけながらペダルを踏む。

サドルに座ることなどできず、降りる時もこけるような格好だった。

前かごなどなく後ろの真四角の荷台に箱をセットし

トムはちょんと乗せられ黙って身を任せていた。

すれ違う人々の反応に自慢げな私は、

「トムーッ!!自転車って気持ちいいなぁ~」

運転手のハチャメチャに震えていたのも知らず。。。

どこへ行くにもトムと一緒だった。

山を走るトムと私。海で昼寝のトムと私。

数年後の冬、トムが風邪をひいた。

母がそう言ったからそう思っていた。

次回へ続く。