第一章 天地開闢
あまのがわ銀河にその時産声をあげたのは、後に地球と呼ばれる美しい星でした。
あまたの宇宙の星の中でもひときわ青く輝く、それはそれは美しい星でした。
まだ生まれたばかりで混沌としたその星に、最初に現れたのは天使達でした。
沢山の天使達が、神の祝福を携えて、その星に舞い降りたのです。
大天使は輝く純白の翼を優雅にはためかせ、小さな天使は鈴の音よりも軽やかに歌声を響かせて、愛と光で地球を包み込みました。
私はその頃の記憶を持つ者、真実を伝える役目を果たす者です。
陰陽の始まり、天地開闢が行われたその時のお話から、始めることといたしましょう。
「ねぇ、ミカエル!どうしてみんな泣いてるの?」
小さな天使だった私は、遊び相手のミカエルの片腕に抱かれながら聞きました。
私の周りには沢山の大天使や小さな天使がいましたが、その誰もがさめざめと泣いているのです。
私は事情を知りませんでした。
ミカエルは、はるか遠くを見ていた悲しげな眼差しを私に落として答えました。
「お前の大好きなルシファー様が闇を司るために天界をさることになったんだ。これから闇に降りて行かれるんだよ。そしてこれはルシファー様にしかできないすごい事なんだ。」
それを聞いた私は愛するルシファー様がすごいことをなさるんだ!とワクワクしました。
誰よりも大きくて、誰よりも美しい、そして誰よりも叡智に長けた私の最大の憧れの天使がルシファー様だったからです。いいえ、私だけではなく、天使という天使が全て、ルシファー様を崇敬し、憧れ、愛していました。
「でも、何故みんな泣いてるの?素晴らしいことをなさるんでしょう?お祝いではないの?」
私がそう言うと、いつも強気で、私をからかってばかりいるミカエルが涙を拭いながら答えました。
「長いお別れになるのだよ。…もしかしたらもう2度と、ルシファー様の姿を見ることはできないかもしれない。」
「会えない?ルシファー様に?な、何故?嘘!ミカエル、また私をからかってるんでしょう?」
叫んでもミカエルはうつむいたまま答えません。
「嘘だ!意地悪!ミカエルなんか大っ嫌い!」
私は泣きながらいつもの様に、隣に佇んでいたラファエルの胸に飛び込んで泣きじゃくりました。
ラファエルは優しく私を撫でながら、何も言わずに自身も泣いていました。
誠実で優しいラファエルが泣いているという事は、ミカエルの言った事が真実である事を示していました。
ひとしきり泣いて顔を上げると、混沌とした雲海のはるか向こうにみるみる翼が黒くなり、下へ下へと降りていくルシファー様のお姿が見えました。
そして志願してルシファー様についていくことが許された8人の天使が、ルシファー様の後を追って、降りていくのが見えました。それは私もよく見知っている天使達でした。
「サルエル!ナイル!ムファサ!ルージュ!ミケランジェロ!ソフィア!フェリックス!…ま、まさか、ミシェルも?いいの?ミカエル!ミシェルまで行っちゃうよ!」
ミシェルはミカエルの兄弟です。この8人の天使達はその力が大きく、まさに選ばれし者達でした。
ミカエルはまた涙を拭いながら言いました。
「ルシファー様についていきたいと名乗り出た天使は沢山いたんだ。だが、誰でもついていけるほど、甘いことではないんだよ。あの8人でなければとても務まらない。ミシェルはその1人に選ばれたのだから、引き止めるわけにはいかなかったんだよ。」
ミカエルにとってそれは半身を引き裂かれるような悲しみに違いない事は、すぐに理解できました。
この地球の闇を司るというのは、そんなにも過酷な事なのだと、幼く小さな私には想像すらできませんでした。
黒く暗い闇の底に彼らの姿が消えてゆき、後にはついて行けずに号泣する天使、別れを悼む天使、それぞれがただいつまでも、涙に暮れる姿が残されるばかりでした…。
「ねぇ、ミカエル!どうしてみんな泣いてるの?」
小さな天使だった私は、遊び相手のミカエルの片腕に抱かれながら聞きました。
私の周りには沢山の大天使や小さな天使がいましたが、その誰もがさめざめと泣いているのです。
私は事情を知りませんでした。
ミカエルは、はるか遠くを見ていた悲しげな眼差しを私に落として答えました。
「お前の大好きなルシファー様が闇を司るために天界をさることになったんだ。これから闇に降りて行かれるんだよ。そしてこれはルシファー様にしかできないすごい事なんだ。」
それを聞いた私は愛するルシファー様がすごいことをなさるんだ!とワクワクしました。
誰よりも大きくて、誰よりも美しい、そして誰よりも叡智に長けた私の最大の憧れの天使がルシファー様だったからです。いいえ、私だけではなく、天使という天使が全て、ルシファー様を崇敬し、憧れ、愛していました。
「でも、何故みんな泣いてるの?素晴らしいことをなさるんでしょう?お祝いではないの?」
私がそう言うと、いつも強気で、私をからかってばかりいるミカエルが涙を拭いながら答えました。
「長いお別れになるのだよ。…もしかしたらもう2度と、ルシファー様の姿を見ることはできないかもしれない。」
「会えない?ルシファー様に?な、何故?嘘!ミカエル、また私をからかってるんでしょう?」
叫んでもミカエルはうつむいたまま答えません。
「嘘だ!意地悪!ミカエルなんか大っ嫌い!」
私は泣きながらいつもの様に隣に佇んでいたラファエルの胸に飛び込んで泣きじゃくりました。
ラファエルは優しく私を撫でながら、何も言わずに自身も泣いていました。
誠実で優しいラファエルが泣いているという事は、ミカエルの言った事が真実である事を示していました。
ひとしきり泣いて顔を上げると、混沌とした雲海のはるか向こうにみるみる翼が黒くなり、下へ下へと降りていくルシファー様のお姿が見えました。そして志願してルシファー様についていくことが許された8人の天使が、ルシファー様の後を追って、降りていくのが見えました。それは私もよく見知っている天使達でした。
「サルエル!ナイル!ムファサ!ルージュ!ミケランジェロ!ソフィア!フェリックス!…ま、まさか、ミシェルも?いいの?ミカエル!ミシェルまで行っちゃうよ!」
ミシェルはミカエルの兄弟です。この8人の天使達はその力が大きく、まさに選ばれし者達でした。
ミカエルはまた涙を拭いながら言いました。
「ルシファー様についていきたいと名乗り出た天使は沢山いたんだ。だが、誰でもついていけるほど、甘いことではないんだよ。あの8人でなければとても務まらない。ミシェルはその1人に選ばれたのだから、引き止めるわけにはいかなかったんだよ。」
ミカエルにとってそれは半身を引き裂かれるような悲しみに違いない事は、すぐに理解できました。
この星の闇を司るというのは、そんなにも過酷な事なのだと、幼い私には想像すらできませんでした。
黒く暗い闇の底に彼らの姿が消えてゆき、後にはついて行けずに号泣する天使、別れを悼む天使、それぞれがただいつまでも、涙に暮れる姿が残されるばかりでした。