平安時代好きブロガー なぎ です。
ただいま、ゆっくり「源氏物語の姫君と花」について書いているところです。
どうぞお付き合いくださいませ。
源氏物語の姫君と花ー⑤玉鬘とナデシコー
今回お話しするのは玉鬘と呼ばれる姫君です。
玉鬘はナデシコに重ねて歌に詠まれたり、ヤマブキにたとえられたりしているのでふたつに分けてお話します。
この姫君は頭中将(のちの内大臣)と夕顔との娘です。
都で生まれますが、母の死を知らないまま夕顔の乳母たちとともに筑紫に下り肥前で美しく育ちます。
肥後の豪族・大夫監による求婚を避けて帰京。
帰京後の玉鬘は石清水八幡宮や長谷寺へ詣でた後、光源氏の六条院夏の町に迎えられます。
都でも多くの求婚者を惹きつける中、光源氏や夕霧からも思われ戸惑います。
最初に、ナデシコに重ねて歌に詠まれた玉鬘についてお話いたします。
【写真:ナデシコの花/写真提供:写真AC】
『源氏物語』第26帖 「常夏」において、光源氏が玉鬘へ詠んだ歌です。
「なでしこの とこなつかしき 色を見ば もとの垣根を 人やたづねむ」
[訳:撫子―いつまでも心ひかれるあなたの美しいお姿を父君がごらんになったら、もとの垣根―亡き母君のことをお尋ねになることでしょう]
この歌により『源氏物語』第26帖のタイトルは「常夏」となったそうです。常夏は撫子の別名でもあります。
この歌での「なでしこ」とは玉鬘のこと。「もとの垣根」とは夕顔のことを指します。
この歌は、『源氏物語』第2帖「帚木」において玉鬘の両親(夕顔とかつての頭中将)が交わした歌で玉鬘のことを「撫子」、夕顔のことを「常夏」に重ねて詠んでいたことを踏まえて、光源氏によって詠まれています。
かつて頭中将だった玉鬘の父親はこの時、昇進して内大臣になっていました。
光源氏は玉鬘を手もとに引き取ったものの、まだ父親である内大臣に玉鬘のことは知らせていません。この時、光源氏と内大臣は不仲でした。
もし内大臣から夕顔の行方を詮索されたら、光源氏自身と夕顔との関係も内大臣に知られてしまう…それが厄介だと思っているのです。
夕顔との恋と喪失は、光源氏にとってつらい思い出でもありました。
一方、玉鬘は父の内大臣に会いたいと願っていますが、光源氏のとりなし次第なので、内大臣に自分のことを知ってもらえるのがいつになるのか不安を抱いているという状況です。
※ナデシコ[撫子]は、ナデシコ科ナデシコ属。多年草。
春から秋まで長く咲くことから「常夏(とこなつ)」ともよばれます。
「撫子(ナデシコ)」は「撫でし子」という響きから「撫でてしまいたくなるような可愛さ」ということで子どもを連想させる花です。「撫子」の異名である「常夏」は「床(とこ)」という響きから寝床をともにする妻・愛人を連想させます。
光源氏の邸宅・六条院夏の町において玉鬘が住む西の対には、中国由来の唐撫子[石竹(セキチク)]や日本古来の大和撫子[河原撫子(カワラナデシコ)]が垣根のなかで咲いていました。
ちょこっと『枕草子』を見てみますと、第65段「草の花は」では複数の草花が挙げられていますが、一番最初に名前が挙げられているのが「撫子」です。
「唐(から)の撫子はいうまでもなく、大和撫子も本当にすばらしい」とあります。
清少納言は唐撫子も大和撫子もともに評価しているのですね。
【写真:カラナデシコ(セキチク)の花/写真提供:写真AC】
『源氏物語』第24帖「胡蝶」では、玉鬘が「撫子の細長」を着て描かれていました。「撫子(撫でし子)」で父・内大臣との血縁を象徴しているという説もあるようです。
かさねの色目で、「撫子」は、表が紅梅、裏が青だそうです。(諸説あり)
紅梅色は、紅梅の花に似て、かすかに紫味を含んだ淡い紅の色をいいます。
青はおおよそ現在の緑色を想像してよいようです。表が紅梅、裏が青で、可憐に咲く撫子の花を表したかさねです。
「撫子の細長」といいましたが、「細長」は上流貴族の幼児から成人女性までが着用した装束のひとつでした。
晴れ着といいますか、おしゃれ着のようです。
平安時代の「細長」は当時のものが残っておらずどのような形状であったのかわかっていません。
下の写真は、かさね色目は違いますが、京都にある井筒という会社が再現した「細長」を着た様子です。
(顔は隠していますが写真に映っているのは私です)
この細長は、裾がわかれていて長く引いています。その名の通り、裾が細長いことが特徴です。
【写真:細長を着て動いた様子①】
【写真:同じく細長を後ろから見た様子】
一方、写真のタイプの「細長」とは異なるという説もあります。
『平安朝の文学と装束』(畠山大二郎 著/新典社/2016年) によると細長の形態について
❝通常の袿の衽(おくみ)がない形状のものであった。恐らく袿の上の重ねたと思われ、衽のない分、裾の両端から下に来た袿や単衣が見えることになる。❞
と書かれています。
次回は、山吹の花の細長が似合い、ヤエヤマブキやヤマブキにたとえられる玉鬘についてお話したいと思います
⇒ 玉鬘とヤマブキ















