■男気を絵に書いたような男

私が知る限り、放送作家に男気やポリシーなんてものを持っている人はほとんどいません。仲間内で「あれは、つまんないね」「センスがないんだよな」と演出家の陰口を散々たたいていた作家が、いざ会議に出席すれば、その演出家のつまんない話に手を叩いて笑っていたりね。要するに、業界が違えど、社会という意味では、どこでも同じなんでしょうな。

 

ちなみに、このブログで何度も名前を出している、景山民夫サンも例外じゃありませんよ。あれだけ、有象無象が闊歩する業界で生き抜いた人物なんだから、当然、忖度もあり、強い者の陰に隠れるのだって平気だし、弱い者を袋たたきにする勇気だって持っている。そうじゃないと、直木賞は獲れませんよ、ほんとに。あ、これは嫉妬のなせるワザね。

 

その中で、唯一と言ってもいいほど、男気がある、放送作家らしくない人物がいます。関西ではその名を知らない者はいない、大御所放送作家の疋田哲夫さんです。おそらく、70歳はゆうに越えていると思うが、今も関西ではチーフ作家とかアドバイザー的な役割と頑張っていると聞いていたが……。

 

とある人の話にとると、あることでケガをされてしまい、いまは療養中だそう。いやー、実際にお見舞いもしていないし、何十年もお会いしていないから、なんとも現地味を感じられないが、また颯爽と運転手付きの車で登場して会議で男気たっぷりなトークや企画を展開してくれると信じてます。

 

そんなところで、疋田センセの武勇伝でも紹介しときましょう。

 

■あの売れっ子作家と大喧嘩したってね。

そもそも、ワタシと疋田センセの関係を言いますと、むかし関西のテレビ番組で何度がごいっしょしたのがきっかけです。あちらは、すでに関西の売れっ子ライターで、こっちは東京からノコノコ、先輩のお供のような形で参加している若手作家(とはいえ、年齢は2歳ぐらいしか違わない)。

 

ワタシの兄貴分は、軽佻浮薄な人物だから、よく会議を休んでいた。すると、ほかの関西の嫌味な作家(その人が書いた芸能人の論評集はあまりにもつまらない代物でしたな!こんなところでしか攻撃できないのがヤダねー)がですね、「ええなー。会議に参加してないクセにギャラもらるの」「なんで、わざわざ東京から呼ぶんかなー」なんて、ワタシがいるのに陰口を言い始める。

 

今にして思えば、勝手に会議を休むような作家を嫌うのは当然なんですが、疋田さんは違ったね。陰でごちゃごちゃ言うなと。子分がいる前でそんなことを言うモンじゃないって、キッパリと言ってのける方でした。当然、そんな男気がある人には後輩作家はもちろん、スタッフだってなびくから、あんなに大所帯を食わせる作家事務所を作ることができたんでしょう。

 

さて、疋田センセの武勇伝。

 

ダウンタウンの向こうを張って、山田雅人と森脇健児をスターにしたとか(当時ね)、費用を一切かけずにスタジオ中に松茸を準備したとか、テレビ局に傍若無人な言動を働くようになったとある売れっ子タレントとケンカになったとか、いろいろある。

 

その中で、いちばん好きなのが、いまや売れっ子になったとある作家A(今も売れっ子なの?)を守ったっていう話ね。なんの番組かは忘れたけどれど、その会議でAは若手の立場で、チーフをやっていたベテランに何かとイジられるというか、笑いものにされる場面が何度もあったと。普通なら、チーフがイジれば、「良い獲物がきた」っていう感じで、ほかの作家連中がディレクターも総攻撃をかけてイジメ抜くんだけど、ここでもえらく男気を発揮。「なにを言うとんねん、さっきから」「それのなにがおもろいねん」と一喝。自分より年齢もキャリアも上の先輩作家を黙らせたっていうんだからすごいよね。

 

まぁ、その番組はあえなく短命で終わっちゃったそうで、疋田センセもそれ以来、東京での番組構成は控えるようになったというけれど。

 

ちなみに、そのときケンカした作家も今も大御所ながらテレビ業界にしがみついているあの人。懲りずに、今もイジメてるのかなー。どうなんだろう。

 

とにかく、疋田センセの復帰を期待しましょう。