土田三兄弟の農家レストラン奮闘記 第四話「新たまねぎの巻」

★AM1242ニッポン放送★
☆The Voice of Farmers☆
★次回は6/6（日）夜9：00★

新たまねぎを

収穫している三兄弟…

水夏「今収穫してるタマネギだけどさ、食べてるのどの部分だか知ってる？」
苗太「どこって、実だろ？」
太陽「実？ドやレならともかく…もとい、茎や根ならともかく実ですか？」
苗太「うっさいな、実でもなく、茎でも根でもなきゃ何なんだよ？」
水夏「葉鞘（ようしょう）って言って、葉っぱの部分なんだ」
苗太「葉っぱ？タマネギって葉っぱだったの？」
太陽「タマネギおばさんやりまーす！皆様こんにちは、黒柳徹子です」
水夏「タマネギはぬるぬるして滑りやすいから、鎌の刃で怪我しないようにね」

苗太の鎌が

ザクッと手を切り裂く。

苗太「痛っ！切った!手ぇ切った!」
水夏「だから気をつけてって、今言ったばっかりじゃん」
太陽「たくしょーがねーな。水夏、たまねぎ一個使うぞ」
水夏「え？使うって、何すんの太陽ニィ」

たまねぎを割ると、

その汁を傷口に塗る太陽。

太陽「ちっと沁みるけど、我慢しろよ」
苗太「ちょっ!何すんだよ!」
太陽「応急処置。タマネギの汁には殺菌効果があるから、傷口に塗っとくと雑菌が入るのを防いでくれるんだよ」
水夏「太陽ニィ、いいとこあるじゃん」
苗太「沁みるーっ!」

調理場でタマネギを

切っている苗太。

苗太「…痛テ」

だが、手の傷が痛くて

包丁を落としてしまう。

太陽「何やってんだよ」
苗太「何ってランチの仕込み」
水夏「そんな手で料理なんかできるはずないだろ」
苗太「でも俺がやんなきゃ」
太陽「料理なんて俺らだってできるんだよ」
苗太「だと!」
太陽「…味見だけは任せたけどな」
苗太「…え」

包丁を奪い、

タマネギを切り始める太陽。

水夏「太陽ニィが今日は俺たちで苗ニィのことフォローしようって」
苗太「…アニキ」
太陽「アレ？ひょっとして苗太ちゃん泣いてる？」
苗太「ち、違うよ、これはさっきタマネギ切ってて」
水夏「泣いてる」
苗太「だから泣いてねーって」
水夏「違うよ外」
苗太「え？」

表のタマネギ畑に

柿沢さんの姿がある。

太陽「かき揚げ丼じゃん」
水夏「柿沢どん…じゃなくて柿沢さんだよ」
苗太「ホントだ、泣いているよ。電話しながら」
水夏「誰と話してんだろう」
太陽「男に決まってんだろ、別れ話だよ」

この日、

土田農園を訪れた

パティシエの柿沢安耶さん。

収穫の最盛期を迎えていた

新タマネギを剥きながら、

小田原オーガニック

眞壁ファームの

眞壁哲夫さんに、

タマネギの話を

訊いていました。

玉ねぎを切っている太陽。

太陽「(泣きながら)分かったか、お前ら？」
水夏「(泣きながら)うん、分かった。分かったよ、タマネギのこと」
苗太「二人して何泣いてんの？」
太陽「泣いてねーし！」
水夏「タマネギ切ってるだけだし！」
苗太「換気扇回しゃいいのに」
太陽「換気扇？」
苗太「涙の原因はタマネギ切った時に飛び散る催涙性物質、すなわち硫化アリルなんだろ。だったらそいつを換気扇で吸い込めば涙なんか出ないのに」
水夏「そ、そうなの？」
苗太「それに水中メガネやスキーゴーグルすりゃもっと防げるのに」
太陽「お前、知ってンならもっと早く！」
水夏「そうだよ、オフクロもしてたじゃん、水中眼鏡」
苗太「え？」
太陽「そうだ、してたわ。で、決まってその日の献立、オニオングラタンスープだった」
水夏「うまかったなぁ、オフクロのオニオングラタンスープ」
苗太「…オニオングラタンスープか、うまかったなぁ」
水夏「…知ってる？」
苗太「何が？」
水夏「そのオフクロが水中眼鏡なしでオニオングラタンスープ作った日があったこと」
太陽「え？」
水夏「太陽ニィと苗ニィが出てった日だよ」
苗太「…泣いてたのか、オフクロ」
水夏「…笑ってた。タマネギが目に沁みただけよって」
太陽「(悲しく)うううううう」
水夏「泣くなよ、太陽ニィ」
苗太「お前が泣かせるような話すっからだろ」
太陽「うるせー！タマネギってのは泣きながら切るモンなんだよ」

タマネギを

切り始める太陽。

と、指を切った。

太陽「あ痛—っ！」
水夏「だ、大丈夫かよ？」
太陽「ダメだ！指先から血がドクドク！」
苗太「大げさだな、ちょっと切れてるだけじゃん」
水夏「とにかく応急処置だ」
苗太「そうだ、タマネギで」
太陽「嫌！それだけは絶対嫌！」
苗太「あれえ？タマネギに殺菌効果あるっつったの」
水夏「お兄さんですよね？」
太陽「やめろって!沁みるの嫌なんだって!………嫌ぁーーーーーー!」