バイキングよりも豪華な
★AM1242ニッポン放送★
☆The Voice of Farmers☆
★毎週日曜日夜8:30~★
スタッフYです。
冬野菜の実った緑の畑と土の香り。
ニワトリの鳴き声と、畑を訪れる人たちの明るい挨拶が行き交うそこは、
東京にいることを忘れさせるような、気持ちのいい風の吹く場所でした。
『畑の旅人』
今週は、東京都練馬区の白石好孝さんです。
白石農園があるのは、東京都内で有数の農地面積を守る土地、練馬区。
白石さんは、かつて江戸東京の名産だった練馬大根、その伝統の味を今に伝えています。
【白石さん】もともと、練馬大根はたくあん漬けとして発展してきました。
沢庵和尚さんと練馬大根が出会ったことで、
練馬大根は素晴らしい野菜に変わっていったんですね。
漬けものとして食べるには九月ころ種を撒いて、暮れに収穫をして天日干しをして、
干し上がったところで糠を使って、糠づけにするわけですよね。
糠づけにして一か月くらい漬けこんだところから食べ始めて、
冬の野菜が無い、江戸時代は冷蔵庫も無いし、保存技術も無いから、
漬けものとして貯蔵することによって、何も無かった冬の野菜を補う食品としてね。
糠も入っているのでビタミンなども補えるということで、冬の保存食として栄えてきたのね。
江戸時代以降、戦争中の保存食としても需要が高まり、
多くの農家で作られてきた練馬大根。
より育てやすく、作業効率のいい青首大根が
市場のほとんどを占めるようになった現在でも、
白石さんの畑では昔ながらの味を持った練馬大根が作られています。
【白石さん】もともと種っていうのは、農家が自分たちでとってたのね。
自分で作る野菜は、一部をそのまま放置しておくと、とうが立って花が咲く。
花が咲くとそこから種た採れるでしょ?
自分で種を採取して、農産物を作ってきたのが昔の農家さんだったのね。
練馬区内にも江戸時代からずーっと種を取り続けてきた農家さんがいて、
その農家さんから種を分けてもらって、
遺伝子を引き継いで繋いでいこうということで今やってるんですね。
300年前の遺伝子がそのまま今に生きている。
そういう、本来のものに帰っていくっていうことを最近は始めた人が多いですね。
一時は品種改良された種を買って育ててた農家さんが、
やっぱり捨てがたいものがある、と。
やっぱりたくあん漬けには練馬大根だよな、
青首大根ではあの味は出ないよね、ということでね。
種を大事に守っていくという動きもだいぶ出てきましたよね。
【白石さん】昔からあるトラディショナルなものっていうのは、文化を持ってるんですね。
江戸時代、参勤交代の時に、練馬大根のルーツとなる美濃大根という
名古屋から滋賀県にかけて作られてきたものが、江戸の大名屋敷で試しに作っられたと。
するととっても良くできる、こりゃいいぞっていうことで、
それでたまたま目をつけた練馬の農家が作ってみた。
そしたら良くできる、評判もいいっていうことで、
漬けものになったり、煮物に使われるようになってひとつの名物になった。
そういうような、歴史とか文化を持ったものを、
そのまま全滅させてしまうにはちょっとさみしいよね、と。
それで今、例えば京野菜とか、江戸東京野菜とか、そういう在来種というかね、
古くから作られれてきた、懐かしいその地域ならではの農産物っていうのが見直され初めてる。
効率のいい農産物から、むしろもっとそういう歴史や思いやいろんなものが入っているものを
評価し直してみようっていうのが今あちこちで盛んに行われてますよね。
新しい世代に伝統の食文化を繋げるひとつの活動として白石さんが行っているのが、
近隣の学校から子供たちを招いた練馬大根づくり。
子供たちは、自分たちの手で収穫した練馬大根を使って、たくあん漬けを作ります。
元気な子供たちの声が聞こえる白石さんの畑。週末になると、
白石農園で行っている農業体験教室「風のがっこう」の生徒さんたちが訪れ、
さらににぎやかになるそうです。
教室を開いて13年。近年食へ関心が高まるにつれ、利用者も増えたと言います。
【白石さん】やっぱり一つは食の安全、安心ですよね。
自分で種蒔いて育てればこんなに安心なことは無いですから。
それがまず一番ですし、そこから採れたものはやっぱり美味しいし、
それから同時に、そこで過ごす時間というのが、
利用者の皆さんのお話をうかがってるととっても癒されるとかね。
それから食べたときにすごく美味しかったんで感動したとか、
そういう楽しみっていうのが生まれてくるっていうふうに言いますね。
【白石さん】農園は学校ですんで、交流会とか収穫祭とか、コンサートとか。
ジャズコンサートなんか年にいっぺんやるんですけど、
そういう皆で集まれるイベントも用意してるので、
そういうところでビールを飲みながら、
皆さんに畑で採れたものを何か一品入れて一皿料理を持ってきましょうっていってね。
一品持ち寄りのパーティをするんですよ。
皆さん色々工夫して作って来てくれるから、
ホテルのバイキングよりも豪華なおかずが並んで、
皆さんで採れた野菜の料理と、野菜の話を肴にして皆さんでビールを飲んだりしていますね。
古くからの食文化を守りながら、新しい農業の発展に目を向けた活動を続ける白石さんに、
日本の農業のこれからについて聞いてみました。
【白石さん】やっぱり教育の場として、学びの場、自然体験の場として
農地・農業が役立てられていくこと。
それから、障害を持ったみなさん、例えば心の病をもったような皆さんにしてみれば、
畑の中に身を置いて、自然の中で汗を流すっていうのが
精神的ストレスのケアになっていくということにもなると思うんですね。
そういった意味で、農業が持っている多面性、いろんな機能を生かしていけば、
社会と農業、地域と農家が共に生きていける環境を作ることができますよね。
農業そのものっていうのは、生産性も低くて、
産業とだけ見たときには競争力が弱いわけですよね。
競争力は弱いんだけども、それがもってる色んな役割っていうのが生かされていけば、
それぞれが大事な役割を持った存在となっていくわけじゃないですか。
産業として自立していかなければいけなんだけど、
一方でそういう機能を持った多面的な産業として、
みんなで大事に残していかなくちゃいけないんじゃないかなと思いますね。
☆白石さんの野菜は、練馬JA直売所、板橋サティの生鮮食品売り場
などで購入することができます。
☆白石農園ブログはこちら
http://shiraishifarm.blog.so-net.ne.jp/