私がソープをあがると決めたときの話です。




決めたは良いけれど、なんせ初めての経験なので(笑)


どうしていいかわからなかったわけです。



あがった嬢は何人も知っていますが、そのほとんどがある日突然あがると決めてお店に来なくなってしまった嬢ばかりなんです。


何月何日にあがると決めてあがって行った嬢のほうが、私の周りでは少ないんです。




帰りに店長に話してみることにしました。


58話に出てきた店長です


あがると決めてから実際にあがる日までには2ヶ月ありました。




ユキ「店長、ちょっとお話したいんですけど、今いいですか?」



店長「なんだ、なにかあったのか?」



ユキ「私、来月いっぱいであがろうと思っているんです。」



店長「………中途半端であがると戻って来ることになるぞ、大丈夫なのか?」



ユキ「大丈夫です。もう私も○年やってるし、それなりに貯金できてますよ(笑)」



店長「今晩、ちょっと飲みに行くか?」




というわけで、初めて店長と二人で飲みに行きました。


とは言っても、店長はお酒は飲まないので、二人で軽く食事したくらいですけど。




店長「あがるって言っても1本や2本貯めたくらいじゃダメなんだぞ、最低でも3本は貯めてないとな。」



ユキ「金銭感覚が狂ってるからですか?」



店長「感覚が戻るのが先か、金を使い切るのが先か…適当に働いてあがった奴は簡単に使い切って戻ってくる。」



ユキ「………」



店長「自分の身を削って稼いだ金だろ、簡単に使い切って戻るようなみっともない真似だけはするなよ。」



ユキ「はい、気をつけます。」



店長「俺のよく知ってる女で、金銭感覚が戻るのに3年かかった奴がいるよ。今は普通にスーパーであれ安い、これ安いなんてやってるけどな(笑)」




私にとってこの店長は、本当に親身になって相談に乗ってくれた大好きな店長です。


口の悪い店長ですが、言葉の端々に心から心配してくれていることがにじみ出ていました。




そしてあがった嬢たちがお金を使い切って戻ってくるという話に思い当たることが多すぎて怖くなりました。



『私は金銭感覚がおかしくないだろうか?』


『もしかしたらまた戻ってしまうんじゃないだろうか?』


『普通の仕事が勤まるだろうか?』


『そういえば何人も戻ってきた嬢を知ってる』




戻ってきてしまった嬢というのは片身の狭い思いをしていることが多いようです。



私が一番最初に働いたお店の人気嬢は、彼氏と結婚して少ししてからあがっていきました。


幸せそうに結婚式の写真を見せてくれましたが、数年後またソープ街で彼女とバッタリ出会ってしまったんです。




私は何も考えず普通に挨拶をしたんですが、彼女のほうは気まずそうに挨拶もそこそこに去っていきました。


きっととても気まずい思いをさせてしまったんだと思います。




店長「お世話になったお客さんにしっかり連絡しておけよ、お礼を言ってきちんと辞めるのが良いソープ嬢だぞ。」



ユキ「はい、連絡のつくお客さんには連絡しておきます。」



店長「黙って辞めるとお客さんは心配するんだよ。身体壊したんじゃないか、とかな。」



ユキ「そうですよね、お世話になったお客さんにはしっかりお礼を言いたいです。」



店長「そうだな、お前のことを気に入って通ってくれてたんだから、『きちんとあがって幸せになります』って安心させてやれよ。」



ユキ「はい!」



店長「…お前がいなくなると静かになるなぁ…、もし戻ってきたら怒るぞ、せっかく静かになるんだからな!」




この日から私がお店を辞めるまでの間、店長からは呪文のように『戻ってくるなよ~』と言われ続けました(笑)





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