鈴音ちゃんは昼はソープ、夜はキャバクラで働く、二束のわらじ嬢でした。
兼業のソープ嬢というのはけっこういるものですが、彼女のようにキャバ嬢と兼業っていう嬢は少なかったと思います。
その鈴音ちゃんには口癖のように言っていることがありました。
鈴音「ソープ街を歩いてる女って、なんで服の趣味が悪いんだろうね!」
これは確かにそうかもしれません。
一部の高級店では、出勤時の服装も『そのまま接客できるくらいの服装』なんて厳しく制限されていますが、普通はそんな決まりはありません。
近所のスーパーに行くような服装で出勤する嬢も多かったわけです。
実家に住んでいる嬢や、私のように結婚している嬢はべつです。
仕事に行くと言って家を出る以上、きちんとした服装で出勤しなければマズイわけですから。
普段着のままで出勤する嬢は大抵ソープ街の近くに一人暮らしをしている嬢でした。
お店側も出勤姿をお客さんに見られたら大変だと、何回か注意していたようです。
鈴音ちゃんが言う『趣味が悪い』にはもうひとつ理由がありました。
鈴音「ソープ嬢ってさ、今までオシャレしたことない子が急に大金持っちゃうから変なんだよね。」
ユキ「なんで?」
鈴音「ブランド物を身につければオシャレって勘違いしてるから、全身のバランスとか何も考えてないじゃん?ひとつひとつは良い物でも全部一緒に身につければいいってもんじゃないでしょ。」
ユキ「それはあるかもしれないね…。」
鈴音「だからソープ嬢はダサイんだよ!少しは周り見て自分が浮いてるのを感じたほうがいいよね。」
確かに鈴音ちゃんの言うように、急に大金を持った女の子が欲しくなる物って今まで持てなかったブランドのバッグだったりするわけです。
ブランドのバッグを買うと、ブランドの服を着たくなります。
高ければオシャレだと勘違いしてしまう嬢も多く、確かにビックリするような組み合わせの服を着ていたり、逆に自分のコーディネートに自信がなくて、全て同じブランドで揃える嬢もいました。
でもだんだんと自分に似合う物がわかってくると、自然に見えるようになってくるのかもしれません。
自分を磨かなければ稼げない世界ですから、誰もが綺麗になりたいと思うわけです。
女性なら誰でも綺麗になりたいと思いますよね?
綺麗になりたい気持ちから高い物を身につける、でも経験不足から失敗してしまうんです。
私にも同じようなことがありました。
私がキャバクラで働いていた頃は今と違ってスーツでしたから、毎日スーツを着ていたわけです。
毎日がスーツでしたから、普段休みの日に何を着ればいいのかわからなくなってしまったんです(汗)
スーツってコーディネートする必要がないですし、自分のセンスを磨くことができないんですよね。
同じことがスーツを着たサラリーマンにも言えるかもしれませんね。
スーツ姿はビシッと決まって格好いいのに、普段着はひどかったなんて話をよく聞きますし。
ソープ街を歩いてへんてこな服装の嬢を見かけても、『今はセンスを磨いている最中なんだなぁ』と思ってください。
きっと少しずつ服装の好みも決まって、コーディネートも上手になっていきますから。
今回こんな話を書いたのは、先日久々に鈴音ちゃんと会ったからなんですが、鈴音ちゃんが『あの子が一番センスない』と言っていた嬢が久々に会ったらオシャレになっていたそうです。
きっと彼女も試行錯誤を経て、自分に似合う服装がわかったんでしょうね。
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